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会社は統合したのになぜ? 同じ車種でも「TRD」と「モデリスタ」の両方を展開するワケ

技術と走りのTRD デザインのモデリスタ

 今年の東京オートサロンと大阪オートメッセで、TRDとMODELLISTAのダブルネームとなる合同ブースが出展され、両ブランドが共同開発したプリウスPHVのコンセプトカーが話題を呼んだ。そのTRDとMODELLISTA(モデリスタ)。

 両社ともトヨタの用品ブランドとして共通項はあるものの、「もとは別々のブランドなのに、なぜコラボ?」とお思いになった人も多いのでは? ここではTRDとモデリスタがコラボした経緯や狙いについて解説していこう。

2018年4月にTRDとモデリスタは統合してひとつの会社に

 まず、現在“TRD”と“モデリスタ”はどうなっているのかというと「トヨタテクノクラフト株式会社」「株式会社トヨタモデリスタインターナショナル」「株式会社ジェータックス」という3つの会社が統合して、2018年4月に設立された「株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(以下TCDと略)」という新会社のなかにある。

 TRDとモデリスタともに同社を象徴する用品事業ブランドとして、我々が知るとおり以前と変わらず展開中だ。TRDはその用品事業以外にもTCDのモータースポーツ部門を担い、レーシングカーの開発やモータースポーツ活動もサポートしている。

 もとの3つの会社の話に戻るとトヨタテクノクラフトは“TRD”、トヨタモデリスタインターナショナルが“MODELLISTA”であることはご存知かと思うが、あと1社ジェータックスは何かというと、海外のトヨタディーラー向けに特別仕様車や特装車などを企画開発していた会社。

 TCDは、まさにこの3社がひとつとなったことによるシナジーをフルに活かし、用品事業、モータースポーツ事業、特装事業の3事業をグローバルに展開し、これからのモビリティ社会における際立つ個性を新しい価値観とともにつくり出して行くのが狙いだ。

 その実際のシナジー効果について、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント用品事業部の関係者に話を聞いてみた。

「3社統合によるシナジー効果はしっかりと表れています。デザインやブランド、方向性、お客様のニーズをしっかりとすみ分けて考えることができ、結果、装着率の増加などの数字でも表れ、お客様に求められている商品を作り出していると感じています。また、東京オートサロンや大阪オートメッセのコンセプトカーのようにTCDの強みを再認識し、それぞれを活かすことで、商品開発や今後の可能性の幅が広がったと感じています」。

TRD/MODELLISTAのコンセプトカーに見るTCDの将来

 ユーザーの方からは「これじゃ、TCDって最強じゃん?」なんて声が聞こえて来そうだが、確かにレーシングカーのシャシーやモノコック、エンジンもつくれて、すぐれたデザイン力を活かしたカスタマイジングも強みで、さらには特装車まで……、ひとつの会社ですべてできるのだから、3事業からの視点ではまさに“最強”といえるかもしれない。

 このような流れを汲めば、東京オートサロン、大阪オートメッセのTRD/MODELLISTAブースの出展も目的が見えてくるし、両ブランドが共同でつくったプリウスPHVのコンセプトカーも超納得。ちなみにモデリスタとTRDによるそのコンセプトカーは「Ambivalent“RD”Prius PHV CONCEPT(アンビバレント“RD”プリウスPHVコンセプト)」とネーミング。

 Ambivalentには“2つの価値”という意味が込められ、それは、モデリスタのデザインと、TRDの技術力の融合そのものと言えよう。ドレッシーなボディワークとイルミネーションの装飾はモデリスタが。空気の流れを流体力学を用いて緻密に解析し、空力を機能的に高めたのがTRDの技術。こういう切り口からすれば、パッと見の斬新さだけではなく先進技術がいたるところに導入されていて、あらためて隅々まで見どころが満載であることに気付かされる。もっと言うなれば、TCDが目指す将来が見えてくるはずだ。

 コンセプトカーに対する社内/外からの評価について、TCDいわく「社内からは、『改めて両ブランドの強みが分かった』、『制作にあたり社内のいろんな部署が協力して作り上げたので勉強になった』という意見がありました。そして社外からの意見では、『(良い意味で)何のクルマ? カッコいい!』などの声がたくさん聞かれ『両ブランドの良いところが出てていい車だ』『そのまま商品化してほしい』などの評価をいただいています」とのこと。

モデリスタとTRD それぞれの違いは?

 もともとはトヨタのグループ会社としてそれぞれが独立していたモデリスタとTRD。断片的に捉え、かつ単に用品ブランドとしてなら、TCDに統合したタイミングでブランドもひつとつに集約する選択肢はあったかもしれない。しかし、車両のみならず、カスタマイズも含めてユーザーニーズの多様化に対応するためには、両ブランドが存在し続ける意味はとてつもなく大きい。

 そこで、TCDにズバリ「モデリスタとTRD それぞれの違いとは何か?」を聞いてみた。

「TRDとモデリスタは、似た商品はありますが、ターゲット、目標、お客様が得られるものは違うと思っています。それぞれのファンがそれぞれのブランドに求めるものがあるので、2つが融合した新しいブランドの商品は現時点では考えていません。ただし先述のコンセプトカーのように共同制作することで、両ブランドの可能性が広がったなどの発見はありました」。

 また、TRDとモデリスタのパーツの多くはディーラーで手軽に注文や取り付けが可能だ。その際、両ブランドのパーツを選ぶときのポイントとしては、TRDは「モータースポーツから得た技術を、街乗りのクルマにも落とし込んだパーツを開発するブランド」、モデリスタは「デザイン性と先進性を駆使し、クルマをエモーショナルに変化させるパーツを開発するブランドです」。

 別の言い方をするならば、TRDは「レースやラリーのイメージを付与したスポーティーなパーツ」、モデリスタは「デザインと先進性でさらにカッコよく上質に仕上げるパーツでしょうか」とも付け加えてくれた。

 TCDの社名には“カスタマイジング”と“ディベロップメント”という2つのワードが入っている。両方がどちらともに良い影響を与え(相乗効果で)、新たな価値や技術をユーザーに届けるのが理想。あえてどちらかに当てはめるとするならば、前者がモデリスタブランドで、後者がTRDブランドということになるだろう。

 カスタマイジングは、エモーショナルなデザインで個性溢れる用品界をリードし、ディベロップメントは、モータースポーツや研究開発を基盤としてスポーツパーツや機能パーツ界をリードしていくこと。

 だが、重要なのはその融合。プリウスPHVを超える“モデリスタ”と“TRD”による新たなコンセプトカーの登場が楽しみでならない。

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