各社からさまざまなSUV向けタイヤが発売
いま発売されている一般車両向けタイヤのラインアップは、セダンやコンパクトカーよりもじつはSUV用のほうがバリエーション豊富で、いろいろなタイプから選ぶことができる。
SUV用のタイヤはスポーツカーのように舗装路やサーキットでの限界性能を求めないので、よほど過激なタイヤ以外は、サイズさえマッチすればどんなタイヤでも案外履きこなせてしまうからだ。
各自動車メーカーの現行SUVに純正装着されているタイヤのほとんどは、舗装路での操縦性や快適性を重視したタイヤになっている。なぜかというとSUVのファッション性に魅力を感じてSUVを購入する人が増えており、自動車メーカーがそのようなニーズに合うタイヤを設定しているからだ。
冒頭で「バリエーション豊富でいろんなタイプのタイヤを選ぶことができる」と書いたが、SUV用のタイヤには一体どんな種類のタイヤがあるのか確認したい。
使用環境ごとに細かく分類されているSUV用タイヤ
まず昔からある分類だと「マッドテレーン(M/T)」、「オールテレーン(A/T)」、「ハイウェイテレーン(H/T)」、「スポーツテレーン(S/T)」といったものがある。「テレーン」とは文字どおり地形のことを示す単語で、これに路面状況やシチュエーションが組み合わされ呼称となっている。
【マッドテレーン】
泥濘地(でいねいち=ぬかるみ)やロックセクションなどで、トラクションを発揮するヘビーデューティなキャラクターがマッドテレーン。乗用車用タイヤでいうと、セミレーシングとかレーシングタイヤ的な位置付けだ。だから競技指向の人でないとオススメできない。
【オールテレーン】
もっとも守備範囲の広いタイヤでオフロードから舗装路までカバーするのがオールテレーンの魅力。オールテレーンの中でも、オフロード寄りとかオンロード寄りといった具合にキャラクターに幅があるので、性格の見極めは必要だ。ただ、パターン(接地面のデザイン)の見た目がゴツくても、以外とノイズが少なく乗り心地もマイルドなものが多いので、快適性を大きく損ねることなく、ヘビーデューティ風なドレスアップにも最適だ。
【ハイウェイテレーン】
その名のとおり、ハイウェイテレーンはオンロードや高速道路を得意とするタイヤ。とはいえオフロードとダート走行にも対応できる資質も備えているので、実用性が高く選びやすいカテゴリーといえる。性格的には一般の乗用車用タイヤに近く、静粛性が高いのも魅力の一つです。ただ、デザイン的にはドレスップ向きではなくちょっと地味め。実用性能重視のタイヤといえる。
「スポーツテレーン」や「ラギットテレーン」など派生モデルも登場
軽快な味付けにしたスポーティなものから、ストリート向けの静粛性も意識したものまである「スポーツテレーン」。
トーヨータイヤではマッドテレーンとオールテレーンの間に設定した「ラギッドテレーン(R/T)」や、快適性重視の街乗り用として「アーバンテレーン(U/T)」を設定するなど、より細かくタイヤのキャラクターを色分けしている。
街乗り系タイヤはますます充実
最近では「CUV」と呼ばれるライトなSUVの登場で、トーヨータイヤのU/Tに相当するような静粛性や乗り心地を重視して作られたタイヤも発売されるようになっている。今年2月に発売になった横浜ゴムの「ジオランダーCV」もそのひとつ。
横浜ゴムからは低燃費タイヤブランドのブルーアースの名前をかざしたブルーアースXTというSUV用エコタイヤも登場しています。SUV用タイヤはタイヤグレーディング(等級表示)しなくてもいいことになっているが、これからはSUV用のエコタイヤを謳うためにタイヤグレーディングを取得するタイヤが増えてくるかもしれない。
雪道も行ける「オールシーズンタイヤ」に注目
そして昨年あたりからSUV用タイヤの新しい選択肢として浮上してきたのが、新世代のオールシーズンタイヤだ。ほとんどのオフロードタイヤには「M+S」の刻印があり、ある程度雪道でも走れることになっているが、各メーカー性能に温度差はあるものの、性能はあくまでもエマージェンシーといったところ。
オールシーズンタイヤなら、スタッドレスタイヤほどではないにしても、アイスバーンをのぞく積雪路なら走り切ることができる。最近のSUVはCUVも含め進化した電子制御ディバイスが搭載されているので、雪道でもかなりの走破性を発揮してくれるだろう。
各メーカーの商品としてはミシュランの「クロスクライメイト」、横浜ゴムの「ブルーアース4S」、トーヨータイヤの「セルシアス」、グッドイヤーの「ウェザーレディ」などがある。
このように充実したタイヤラインナップとなっている現在のSUV用タイヤ。乗用車の場合、タイヤのドレスアップといえばインチアップが主流だが、SUVの場合はタイヤをゴツいデザインのものにするだけでも、クルマの印象が大きく変わったりする。
“ちょっと攻めたタイヤ選び”をしても大きく失敗しないのも、SUVというクルマのカテゴリーならではといえる。