シビックでもアコードでもないハッチバック
1970年代後半、ホンダの乗用車は「シビック」と「初代アコード」、そしてスペシャリティカーの元祖「プレリュード」が販売されていた。そのシビックとアコードの間を埋める車種として1980年に登場したのが「クイント」である。
シビックに似た外観だが、外装部品は一切共通化していない。クイントは当時の国産車では珍しく5ドアハッチバックを採用しており、ホンダ初の分割可倒式リアシートによって高い実用性を得ていた。しかし、シビックでもアコードでもない「どっちつかず」の印象がぬぐいきれなかったのか、クイントの販売は芳しくなかった。
1978年にオープンした販売店網、「ベルノ店」専売車種で用意された側面もあったクイント。エンジンはアコードと共通の1.6リッター CVCCのみ。デビュー直後から台数が伸びず、登場翌年の1981年にはマイナーチェンジして後期型に。2代目アコード似のマスクになった。写真は前期型で、最上級グレードの「TER」。ヘッドレストの形状が面白い。
クイントは1985年にフルモデルチェンジを行なったが、その際に同社のバイクに与えられていた名前「インテグラ」を追加。コンセプトを一新し、実用ハッチバックからスポーティなキャラクターに変身した。デザインもシンプルで、2代目プレリュードのような低いボンネットやリトラクタブルヘッドライトも斬新な印象を与えた。
それでいて居住性や積載性の高さもキープしていた。このイメージチェンジは大成功し、1989年のフルモデルチェンジでは「クイント」の名前が外れて「インテグラ」として独立。さらに2度のフルモデルチェンジを行いつつ、2007年まで販売された人気車種となった。
見るからにスポーティな雰囲気を匂わせるクイント・インテグラ。1985年の発売当初は3ドアハッチバックのみ先行して登場。9ヶ月遅れて5ドア、翌1986年には4ドアセダンを追加している。写真は前期型の「GS-i」で、ZC型1.6リッターDOHC+電子制御燃料噴射(PGM―F1)エンジンを搭載。