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F1は激速なのにタイヤが分厚い! タイヤを薄くするほど高性能ではない理由

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TEXT: 斎藤 聡  PHOTO: Auto Messe Web編集部

ホイールに合わせた最先端技術の集積がF1タイヤ

 F1のタイヤは超最先端の技術を駆使して作られており、しかも運転するのは人間ですから、おのずと反応速度に限界があるわけです。

 タイヤを低偏平にしていくと市販車レベルではシャープになるのですが、これが限界を極めたレースの世界になると、神経質になってしまうわけです。もちろんチューニングやセッティング次第なのでしょうが、タイヤはただトレッド面のグリップ性能で走っているわけではなく、タイヤが前後方向に変形したり横につぶれたり、ねじれたりと、様々な方向に変形する力を受けています。

 偏平率が低くなるとタイヤの変形量が少なくなるので、ドライビングの方向としては神経質な方向に向かうのです。

 これは市販タイヤも同様で、19、20、21インチとホイールが大径になるにつれてタイヤの偏平率が40,35、30と薄くなっていくと、タイヤの限界特性は神経質(ピーキー)になっていきます。

 具体的には、予兆なく突然ズルッと滑るような動きが出やすくなります。市販車で初めから18インチが装着されているクルマは、クルマの開発段階でそうしたネガティブな特性が出ないようにチューニングされているわけですが、さらにインチアップして大径ホイールを履こうとすると、隠れていたピーキーな特性が顔を出しやすくなります。

 もっとも、クルマが大径タイヤを履くのに合わせてタイヤの性能もどんどん進化しています。大径サイズのホイールにマッチしたタイヤ特性、サスペンションセッティングになっているわけです。

 ただ、いま20インチや21インチを純正で履いているスーパースポーツカーについて言いうと、やっぱり特性はピーキーな気がします。スポーツカーの場合はサスペンションの動きを抑えて(キャンバー変化を抑えて)、トレッド面をビタッと路面に接地させるようなセッティングになっていますが、重量級のハイパフォーマンスサルーンになると、比較的ロールが大きいためロール量とタイヤの接地面の変形(フットプリント)のバランスが取れているとは思えないクルマも少なくありません。

F1がインチアップすれば市販車にも性能アップの恩恵が

 じつはピレリやミシュランは、F1用タイヤに18インチの導入を以前から希望していたのです。それは13インチホイールでは現在の自動車のホイールサイズとかけ離れているからです。低偏平タイヤの特性を究極のレースシーンで磨きたいということもあるのだと思います。

 18インチが導入されれば、大径ホイール用低偏平タイヤもさらに進化するに違いありません。

 市販車のタイヤサイズが大きいのは、単純にカッコいいからというのが一番の理由だと思います。そもそもクルマのデザイナーは、開発車両のデザインスケッチでホイールを目いっぱい大きく描きます。かっこよく見えるからです。

 実際に大径タイヤを純正装着して市販化する場合は、自動車メーカーおよびタイヤメーカーのテストドライバーの血のにじむような努力によって、扱いやすくチューニングされているということなのです。ちなみに、現行のタイヤの性能だけを考えると、前輪は50~55偏平くらい、FRのリヤタイヤは40~45偏平くらいがシャープさとコントロール性のバランスがいいような気がします。

 

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