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メルセデス・ベンツが「欲しがった」AMG! 世界一成功したチューニング屋の歴史とは

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: メルセデスAMG GmbH、メルセデスマガジン&AMGカタログ、妻谷裕二

One man-One engine!(1人のマイスターがひとつのエンジンを)

 AMGに搭載されるエンジンは「One man-One engine(1人のマイスターがひとつのエンジンを)」という主義に従い、手作業で丹念に組み上げられている。エンジンの上に輝くマイスターのサインが刻まれたプレートは正にクラフトマンシップの証しだ。オートメーションが当り前のこの時代、AMGは頑固にマイスター達による手作業を守り続けている。エンジンを造るマイスターは限られ、選ばれたマイスターだけがエンジンの組み付けを許される。

 各マイスター達には、エンジンと工具類を載せる為のキャスター付きキャビネットが与えられ、彼等はそれと共に工場内をコース順に従って進んでいく。クランクシャフトを組み付けたら、次の場所に移動してピストンを組む。また移動して、今度はシリンダーヘッド、次はカムシャフトといった具合だ。

 ハンドメイドとはいえ、各ポイントには最新鋭の工作機械が用意されている。つまり、通常のオートメーションでは製品だけがラインに載せられて移動するが、AMGの場合は製品と共に職人も移動する。

 こうして1人の職人が一基のエンジンを最初から最後まで責任を持って組み上げられたエンジンのヘッドカバーには、最後に担当のマイスターの名前が彫り込まれたプレートが貼り付けられる。これがOne man-One engine(ワン・マン、ワン・エンジン)、ドイツ語ではEin man-Ein motor(アイン・マン、アイン・モトール)と言われる所以だ。

 尚、現メルセデス・ベンツのAMGモデルに搭載されるライン製造のM256直6ターボエンジン(53系モデル)、M276 V6ツインターボエンジン(43系モデル)、M260直4ターボエンジン(35系モデル)には、このマイスターのサインプレートは貼付されていない事を追記しておこう。

AMG独自開発のM156 6.3L V8エンジン

 1967年に3人で創業したAMGは現在、約1410人のスタッフを抱える大企業に成長している。しかし、AMGはあくまでメルセデス・ベンツのエンジン、シャーシをベースに独特のチューニングを施すという姿勢は崩したことがなかった。

 ところが、2005年当時の新社長「フォルカー・モルヒンヴェグ」は2006年に初めてAMGの手によってゼロから企画・開発したM156(6.3L V8)エンジンを発表した。この独自開発のエンジンは「フリードリッヒ・アイヒラー博士」の傑作として有名だ。

M156(6.3L V8)エンジン

 特にC63 AMGはコンパクトボディから発する最高出力457psと刺激的なドライビングを誇り、今も大切に乗っている筆者の知人(winlook氏)をはじめ多数のメルセデスAMG党オーナーがいる。

Mercedes-Benz C63 AMG

 また2006年オープンしたスペシャルカスタマーのためにアトリエ「パーフォマンス・スタジオ」が送り出した限定仕様のブラックシリーズ(最初はCLK 63 AMGモデル)、シグネチャーシリーズ(時計メーカーIWCとコラボしたCLS IWCインジニアモデル)、エディションズ(CL 65 AMG 40周年記念モデル)の3シリーズは有名だ。

Mercedes-Benz CLS55 AMG IWC

 最近では新型車の開発が共同で行なわれ、メルセデス・ベンツのニューモデルが登場すると、すぐにAMGモデルも発売される。メルセデス・ベンツは新型の販売と同時に、その最上級モデルとしてAMGも選択できる事を目標としているのだ。クオリティの高さ、アフターケアの充実等も含め、もはやAMGはチューニング・ブランドではなくメーカーである。

 特に日本では2008年からメルセデスAMGパーフォーマンスセンターを展開しAMG専用コーナーを設けるほか、2017年には世界初のメルセデスAMG専売拠点としてAMG TOKYO Setagayaをオープンした。

 最近のメルセデスAMGは、メーカーとして独自のスペシャル仕様の限定車を各モデルに連発しているが、それでもまだ満足できない長年のメルセデスAMGファンもいる。今回、筆者の取材に快く応じてくれたGLC 63 S 4MATIC+ クーペ・エディション1(全国限定15台)のオーナー(松中芳和氏)は、車両購入後に自ら手を加え自分だけのAMGオーダーメイドに昨年仕上げた。かつてのAMGモデルがどれほどファンの心をガッチリと掴んだのかがわかるひとつの事象だろう。

Mercedes-AMG GLC 63 S 4MATIC+4 Edition1

 ちなみに上記オーナー(松中芳和氏)の車両は、上記エディション1のイエローを基調に、外観はパナメリカーナフロントグリルの左端をドイツ国旗の3カラーに採色し、フロントスポイラー&リアスポイラーのリップ、アルミホイールグリルやサイドミラーに至るまで1本のオリジナルイエローラインを入れ、独自のステッカーまで作成貼付し独特なスタイルに仕立てている。

 室内はコマンドコントロール、ハンドルセンターやスタートボタン等各パーツにオリジナルAMGロゴマークを数多く採用し、AMGロゴ入りオリジナルシート隙間カバーや小物入れまで取り付けAMG一色だ。ほかにもAMGモデルを所有するなど、熱烈なメルセデスAMG党のひとりだ。

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