モータースポーツでの輝かしき記録
メルセデスAMGのモータースポーツ活動はすでに周知のとおりで、説明の多くは要さない。DTM(ドイツツーリング選手権)、ITC(国際ツーング選手権)、F1における活躍は目覚しい。DTMでは1980年代末~1990年代初めに「190E2.5-16エボリューションⅡ」が圧勝したこの50勝は今でも金字塔である。
特にメルセデスAMGはF1の最前線に立ち、1996年以降、世界最高峰のモータースポーツを「セーフティカー」でリードしてきた。そして2010年、メルセデスAMGは54年振りにF1に参戦した。2012年には「MERCEDES AMG PETRONAS」チームとエンジンメーカー「MERCEDES AMG High Performance Powertrains」が代表となる新体制がスタート。
2014年にはF1のパワーユニットレギュレーションが変更され、1.6L V6ターボエンジンにハイブリッドを組み合わせたパワーユニットを搭載し圧倒的な耐久性とパワーを発揮し、ドイツチームとして史上初となるコンストラクターズチャンピオンシップを獲得した。またこの年には「ルイス・ハミルトン」がドライバーズタイトルも獲得。以後2019年シーズンに至るまで6年連続でWタイトル(コンストラクターズ/ドライバーズ)を獲得している。
次に近年のモータースポーツにおけるメルセデスAMG市販車両の活躍を見てみよう。2010年にメルセデスAMG初の独自開発モデル「SLS AMG GT3」を発表。定評の6.3L V8エンジンを搭載したこのモデルは2011年のモータースポーツシーズンで全26回の優勝を果たすなど、もっとも成功したモデルとなった。
2015年登場の「メルセデスAMG GT」は、SLS AMG GT3に続くメルセデスAMGによる独自開発スポーツカーの第2弾だ。専用に新開発されたAMG 4.0L V8直噴ツインターボエンジンは、エンジンの軽量化、ドライサンプ潤滑システムによる低重心化、ターボチャジャーへの吸気経路の最適化により優れたレスポンスを実現。
2017年9月11日のフランクフルト・モーターショーでメルセデスAMG創立50周年記念に発表したメルセデス「AMG Project ONE」は、レーストラックで培われた最新鋭でもっとも効率的なF1ハイブリッド技術が投入され、公道でもそのパフォーマンスを最大限に発揮できるようにチューニング。ハイブリッド走行時には350km/hを超える最高速度と1000馬力以上のパワーを実現している。
そして最新モデルが2019年に発表された「AMG GT 4ドアクーペ」。メルセデスAMG独自開発による初の4ドアモデルだ。このように今やメルセデスAMGの車種も多様化が進み、メルセデス・ベンツ新型の販売と同時に、その最上級モデルとしてAMGが選択できる。現在、日本で購入できるモデルラインナップは50モデル以上。車種は「ドライビング・パフォーマンス」をキーワードにセダン、クーペ、ステーションワゴン、カブリオレ、ロードスター、Gクラス、SUVやメルセデスAMG独自に開発したメルセデスAMG GTなどがあり、搭載されるエンジンに応じて35、43、45、53、63、65、GTというネーミングが与えられる。
近年、サーキットでAMGモデルを使用しプロドライバーがドライビングテクニックを丁寧に教えてくれる「AMGドライビングアカデミー」を開催。車両もメルセデスAMGが用意してくれるので、AMGの本質に触れられ、ドライビングスキルも学べる価値あるプログラムとなっている。
創業から現在までの“シンデレラ物語”
マニアの間では、2014年からメルセデス・ベンツファミリーに迎え入れら最上級の地位を得たメルセデスAMGは、すっかり正装化し紳士になってしまった感があると言われている。もちろん、その性能は一層磨きがかかりメルセデス・ベンツモデルらしく、すべてが完熟域に達して貫禄も備えた。それはまるで“自動車のシンデレラ物語”だ。しかしその反面、マニアの間で「ひと昔前の“野獣のAMG”が懐かしくなる」と囁かれているというのは、なんとも皮肉な話だ。