究極の疑問を現役エンジニアに聞く
誰もが一度は思ったことがある「バイクとクルマ、どっちが速いのか?」という究極の疑問について、有識者に確認し、その答えを探し求めたい。前回、2輪最高峰のWGP GP500クラスへ参戦の後、車いすレーサーとして4輪に転向し、4輪レースフィールドで活躍する青木拓磨選手にその答えを聞いたが、続いては開発者に話を聞く。
「ゼロヨンならバイクが勝ちますが…」
現在もメーカーに勤務しているため残念ながら名前は出せないものの、2輪メーカーに勤務しF1エンジンの開発にも従事していた方に話を聞いた。個人が特定されてしまうので詳細は省くが、いわゆるレースマシンからF1まで、そのエンジン設計に関わっている。
2輪メーカーの方であるからバイクとクルマ、そのどちらにも精通しているともいえるエンジニアは、どちらが速いと考えるか?
その答えは「同じ条件での比較は出来ないので、各々の得意な土俵で戦えば勝てると言うのが答えですね」とまず微妙な答えが返ってきた。
「普通のサーキットを走ったらMotoGPはF1には勝てません。圧倒的にコーナーリングスピードが違いますからね。逆にMotoGPは軽さを活かした短距離ダッシュしか勝ち目は無いですね」ということで、「4輪」の圧倒的優位という答えであった。
では2輪が勝てるシチュエーションはどこか?
「普通にゼロヨン(0-400m加速)をしたら2輪の勝ちです。F1もギヤレシオの変更までやってお互いにゼロヨン専用セッティングしてガチンコで勝負したら面白いですよね? 市販車でもゼロヨンなら2輪が勝ちだと思いますよ」。
やはりコーナリングでダウンフォースが効き、ブレーキング時の制動距離もタイヤが4輪あるほうが短くなったりと、サーキットでのラップタイムなど総合的に考えるとクルマのほうが速いということだ。それ以外にもさまざまな要因があるが、青木拓磨選手とエンジン開発者の答えはどちらも「速いのは4輪」だった。
とはいえクルマにはクルマの、バイクにはバイクの技術や操縦する楽しみ、所有する喜びなど、それぞれでしか味わうことのできない部分がある。単純に速さだけでは比較できない双方の魅力を、存分に堪能してほしい。