660ccになっても“自主”規制はなくならなかった
こうした背景を知れば64馬力規制が生まれたことも納得できるだろう。排気量はそのままに(この時代の軽自動車規格は550cc以下だった)SOHCターボから一気に33%増しの16馬力もパワーアップしたのだから、やりすぎ感はあったし、しばらくはこのパワーが上限になってもおかしくないと思われたのだ。
しかし、その後軽自動車の規格が変わり、エンジン排気量の上限が660ccとなり、またボディが拡大されても、この64馬力“自主”規制はなくなることはなかった。そもそも排気量が1.2倍になって最高出力が変わらないというのは違和感しかない。
1990年代には、ABCトリオの一角であるホンダ・ビートはNAながら3連スロットルを得たことで64馬力の規制値に達したし、三菱自動車の5バルブ3気筒DOHCターボ、ダイハツの4気筒ツインカムターボ、SUBARUの4気筒DOHCスーパーチャージャーエンジンなど明らかにパワーが狙えるユニットも数多く登場した。その上でスズキの3気筒ツインカムターボも着々と熟成を進めていった。
実馬力では90馬力オーバーもあった?
こうしたスポーツユニットが64馬力に収まっていたはずもない。カタログ値は表向きの数値であって、実際に測定すると70馬力オーバーは当たり前、各社の競争が激しかったときには、実測90馬力に達することもあったと、まことしやかに伝えられている。なお、64馬力規制を堂々とクリアした軽自動車も存在していた。
それがスズキ製「K6A」ターボエンジンを搭載したケータハム・セヴン160で、カタログスペックは80馬力を誇る。660ccの軽自動車用エンジンは、大幅なチューニングをせずとも、そのくらいのパワーを出せるポテンシャルを持っているというわけだ。