NAもパワーアップして不自然な状況に
ところで、660ccの軽自動車用エンジンは実用的なNA仕様であっても64馬力規制に届かんというイキオイで進化している。たとえばホンダN-BOXに搭載されるi-VTECエンジンの最高出力は43kW(58PS)、ターボが47kW(64PS)だから、その数字だけ見ると走りの差も少ないように思える。
ただし、実際に乗ればわかるようにNAとターボではパワー感は大きく異なる。スペックでそうした違いを示すのが最大トルクで、N-BOXの場合NAエンジンは65Nm、ターボエンジンは104Nmと、まさしく桁違いなのだ。
これほどのトルクを出しているのであれば、64馬力規制を撤廃してもよさそうなものだが、馬力規制があるおかげで、軽自動車に実用性や省燃費性が求められる市場ニーズと合致しているのも否めない。馬力競争をせずに済んでいるので、扱いやすいトルク特性とすることができ、結果としてスーパーハイトワゴン系にマッチする省燃費性能に優れたダウンサイジングターボ的なキャラクターを手に入れることができた。
経緯を考えれば、軽自動車の64馬力規制というのはナンセンスだが、そのおかげで実用的で乗りやすいターボエンジンが増えたと考えれば、ユーザーメリットは大きいといえるのかもしれない。