もっとも過激なクルマ酔いシチュエーションにいるラリー選手に直撃!
クルマに同乗する人に多い悩みが「クルマ酔い」。自ら運転する時は平気でも、人の運転だと……という人も多いことだろう。ではそれでもクルマ酔いしない人はどんなコツがあるのだろうか。昨年「TRDラリーカップ等」にコ・ドライバーとして参戦したCARトップ編集部員・中村に聞いてみた。あちこちから「G」がかかるラリー。さぞかし酔うのでは…と思うが……。
普段ひとりで運転している分には気にならないことだと思いますが、誰かの運転するクルマに乗るときは困る人もいるクルマ酔い。具体的な症状としては胸部のムカムカ感、吐き気、頭痛など人によってさまざまですが、乗車している間は不快で仕方ないことでしょう。
ラリーは運転席と助手席にふたりで乗車して一時的に閉鎖された一般道で戦うモータースポーツ競技。加減速やコーナリングで選手たちが揺さぶられる状況になります。そんな状況、クルマ酔いしやすい人にとっては聞くだけでもとんでもないと思われるでしょう。では選手たちはどういった状況なのでしょう。クルマ酔い対策として何か得られるもの、あるのでしょうか。
プロはあらゆる重力加速度にどう向き合うのか
例えば入門ラリーでは、コースにもよりますが大体2〜5㎞くらいの一般道にあるワインディングを、軽量化されたヴィッツや86でアクセル全開を頻繁に駆使して攻めます。横Gどころか3D軸どこからでもGがかかるだけでなく、新たなコーナーに差し掛かるたびにG変化が変わります。
全日本ラリーや世界ラリー選手権では、スピードを争うスペシャルステージの距離が長いものだと30〜50㎞に及ぶこともあります。クルマ酔いをするドライバーやコ・ドライバーが感じる負荷は尋常ではないと想像できます。
クルマ酔いをする人はラリードライバーとしての適正がない、と思われる人もいるかもしれませんが、そんな事もありません。クルマ酔いをするものの実績を出しながらラリーを続けているドライバーやコ・ドライバーも存在します。なかにはセクション毎に気分が悪そうにされているかたもいるとか。
まさに車酔い確実という境地で対応している方からの、普段の運転でも効果が感じられそうな対策法の声を聞くことができましたので、そのいくつかをご紹介します。
まずは睡眠不足のない体調管理
ひとつめは、乗る前から体調管理をすること。とくに睡眠不足はクルマ酔いの敵。そもそもハンドルを握るのであれば、眠気を感じた時点でもってのほか。危険な状態です。ドライブする日が決まっているのであれば、食べるものにも注意することができます。胸焼けがするような刺激物や油物は控えるようにすると症状が和らぐかもしれません。また空腹&満腹状態、食後すぐの乗車もあまりおすすめできません。
こうは言ってますが実は私、全く酔わないタイプです(笑)。ただ全日本ラリーになると2日間で50キロずつ走ったりします。初日が終わって疲れているところ食事を取ってその後翌日のミーティングをして、睡眠時間が少なくなることも。そういう時は「ヤバいな」と思うこともあります。つまり睡眠を含めた体調管理が大事なんです。
ふたつめはガムを噛むこと。数人から対策としておこなっていると聞きました。クルマ酔い対策だけでなく、気分転換としてガムを車内に置く人もいるでしょう。ただ製菓メーカーでも調査しているようですが、じつはそのメカニズムは判明していないようです。
3つめは運転者に言えることですが、上手い運転を心がけること。クルマ酔いは「視覚情報と三半規管の情報ミスマッチによって起きる」とされ、予測せぬ動きやあらぬ方向からのGによって、気持ち悪く感じてしまう=酔ってしまうことも。運転者による緩やかな加速&減速の徹底、急ハンドルがなくなれば、同乗者を酔わせることもなくなる可能性が高くなります。
同乗者は首を丸めた状態で長時間のスマートフォン操作を行なわない、進行方向の景色を眺めるなどして、視覚的にクルマからかかるGに予測できるように心がけるといいでしょう。
ほかにも「車内での会話に集中する」「車内の芳香剤に気を遣う」「こまめに窓を開けて新鮮な空気を吸う」「酔い止め薬を飲む」などがあげられます。市販の酔い止め薬は睡眠作用も含まれることがあるので、服用する際は十分に注意してください。
症状が人によってさまざまなように、克服の仕方も人それぞれ。クルマ酔いは慣れることで収まることもあるようです。対策したい人は、いくつか試してみてください。