MT車のクラッチ操作を手動でおこなうアクティブクラッチ
では、オサムファクトリーの手動運転装置アクティブクラッチとはいったいどんな装置なのか? また、オートマチック車ではなく、マニュアルミッション車というところにどんな意味があるのか、さらに掘り下げて行こう。
通常マニュアルミッション車は足でクラッチを踏み込み、シフトレバーを手で動かしてギアチェンジする。対してアクティブクラッチとは、クラッチワークを手で操作する装置のこと。とはいえ、足でクラッチペダルを踏み込むように手でペダルを押すイメージとは違い、実際のシステムではモーターや油圧によってクラッチを切ったり、つないだりする役割を担っている。ワイヤー式クラッチ/油圧式クラッチを問わず、どんなマニュアルミッション車にも装着が可能だという。実績として、装着できなかった車両はゼロ。
ドライバー側の操作は、シフトノブに取り付けられたスイッチ押せばクラッチは切れ、スイッチを離せばクラッチがつながるようになっている。そのボタンを押したときの速度やエンジン回転数などの車両運転情報をコンピューターユニットが判断し、絶妙なクラッチ操作を自動的に行う優れたシステムを搭載。走行時はシフトノブスイッチを押しながらシフトレバーでシフトアップ&ダウンができ、速度が落ちて停車直前になると自動的にクラッチが切れる。安全面では踏み間違いに考慮されていたりと万全。
また、実際に試乗させてもらって分かったことだが、クラッチを切るだけじゃなく、つながり方についてもスマートフォンのアプリでカスタムできることもよく考えられている注目点。※最新式は、静電容量センサースイッチにより、ボタンを押さずともシフトレバーを握るだけでON/OFFができるように進化
アクティブクラッチ装着車両に試乗してみた
オサムファクトリーが用意しているプジョーの試乗車は、クラッチワークが通常のストリートモードに設定されていて、シフトレバーにアクティブクラッチのスイッチ(センサー)、アクセル、ブレーキがすべて集約。操作手順は、アクティブクラッチのスイッチを押す(押したまま)→クラッチが切れる→シフトレバーを1速に入れる→アクティブクラッチのスイッチをオフにする(ボタンから離す)→アクセルレバーを握ってエンジンの回転を上げる→アクティブクラッチが自動的にクラッチをつないでくれる→発進→アクティブクラッチのスイッチを押す→ギアを2速に入れる……という流れだ。
はじめて操作するときは不安が拭えなかったが、クラッチワーク自体はアクティブクラッチにまかせることができるので、(もちろん、慣れは必要かと思うが)アクセルもブレーキも感覚をつかんでしまえば、操作自体はさほど難しいワケではない。すべてが集約されているとは言え、同時に操作する必要はないので、ひとつずつ順番に丁寧に行えば良い。
アクティブクラッチによってクラッチがつながる感じもごく自然で、急につながったりガクガクすることもない。また、車速を落とすときは、シフトレバー下にを押し込めばブレーキがかかるように改造されていて、停止寸前でクラッチを自動で切ってくれるのでエンストしないようになっていた。
街乗りとサーキットや競技ではクラッチのつなげ方も違ってくるのだが、ドライバー各々で、運転の仕方や走るステージに合わせてチューニングまでできるようになっているとは驚き。絶妙な半クラやクラッチ蹴りを再現することも可能で、ロケットスタートもできるし、ドリフトだってできてしまうのだという。
マニュアルミッション車でやるメリットはほかにもたくさんあって、任意のギアを選択できること、重量の軽さ、LSDの装着が可能になるなど、ラリードライバーの福永氏が開発に携わることで、基本的な機能以外にもモータースポーツにおいても、十分な効果が発揮されるようにつくられているのはさすがだ。すなわち、ラリードライバーの福永選手とも同等に戦えることを意味する。
アクティブクラッチの取り付けや価格など
オサムファクトリーでは、アクティブクラッチの販売をスタートさせてから約7年。開発期間を含めれば、100台近いアクティブクラッチ装着車両をつくってきたという。多いか少ないかは別として、これまでもこれからも商売や儲けのことは一切考えていないという。過去にはアクティブクラッチを取り扱っていたメーカーがほかにあったそうだが、いまは、日本国内ではオサムファクトリー1社のみ。
「以前にバイクに乗られていたり、マニュアルミッション車の経験がある方は、やはり、もう一度クラッチ操作をしてMT車に乗ってモータースポーツを楽しみたいという夢を持たれる方が多いです。それからクラシックカーなど、オートマの設定がない車両もありますが、弊社ではさまざまなクルマにアクティブクラッチを装着してきました。ある日突然、思いもよらない事故が原因で足が不自由になり、自分の愛車が目の前にあるのに乗れないなんて、ボクには放っておけません。好きなクルマ、楽しいスポーツは、一生涯をかけて愉しむ価値があります。これが本当の生涯(障がい)スポーツだと僕は思います」とはオサムファクトリーの福永代表の想い。
現在のところ、アクティブクラッチ本体+取付工賃+セッティング費用込みで価格は税別で60万円~。スマートフォンでの通信装置はオプションになっていて別途1万5000円が必要。手動運転装置アクティブクラッチは、国や自治体による運転補助装置助成金の適用になることも補足しておきたい。もちろん、車検も問題なく、JAFのモータースポーツ競技への出場も認められている。他車への付替えも可能で、半永久的に使える。
最後に、アクティブクラッチに関する様々な相談や実際の取り付けもオサムファクトリーに任せれば安心。アクセルやブレーキといったほかの運転補助装置の取り付けも含めてトータルでサポートしてくれる。現在はショップのある京都の京田辺市が本拠地になっているが、全国へネットワークを広げていくことも視野に入れているという。アクティブクラッチについては、試乗車も用意されているので、予約は必要だが気軽に問い合わせてほしいとは福永代表。
【鈴鹿国際コースでテストした模様はこちら】
(前編)
https://www.youtube.com/watch?v=O5WtEVeRaEw&t=85s
(後編)
https://www.youtube.com/watch?v=qamhfEjND4s&t=85s
【詳しくはこちら】
オサムファクトリー
tel.0774-34-1800
http://osamu-factory.jp