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クルマのオイルは「メーカー純正」か「社外品」のどちらが良い? オイルメーカーと整備ショップの答えとは?

この難題に答えはあるのか? プロに聞いてみた

 クルマの整備にこだわる人にとって感心の度合いが高い項目としてエンジンオイル選びがある。交換後のエンジン音や加速フィーリングなどに意識をグッと集中して、自分の選んだオイルの評価をしているのではないだろうか。

 そんなエンジンオイルにおいて、いつの時代もユーザーが疑問に思っていることがいくつかあると思う。そのひとつが「オイルは純正と社外品のどちらが良いのか?」ということだ。 このおなじみのテーマにひとつの答えを見つけるため、今回は自社でベースオイルの精製からパッケージに詰めるまで一貫して行なっている大手のオイルメーカーと、モータースポーツ系のユーザーを相手にする自動車整備ショップに話を聞いてみた。

「純正」オイルと「純正指定」オイル

 どのクルマのエンジンにも自動車メーカー指定オイルが設定されているが、この指定オイルとはなにも純正品として売られているオイル限定というわけではない。つまり純正品でなくても認められているオイルがあるということ。その理由は交換をするタイミングや作業をする地域(海外を含む)によっては純正オイルの入手が困難なことがあるからだ。

 そこで純正オイル以外でも使える(選べる)ようにオイルの規格(API,ILSAC)や粘度(SAE粘度表示)が指定されていて、それに合致するオイルなら代替え品でも使用OKとなっている。

 つまりこの時点で純正オイルと規定が合致するオイルメーカー製のオイルは同列に扱われているということなので、一般論としての「純正とオイルメーカー品のどちらが良いか」に関しては、どちらも差はないといえるだろう。

 そもそも純正オイルといっても、製造自体は石油精製会社やオイルメーカーに依頼している場合がほとんどのため、純正オイルと社外オイルについて完全に違うモノとも言い切れないのだが…。

 ただし欧州車によく使われる「純正ロングライフオイル」は自動車メーカーが独自に設定した規格で、油温が高温時のせん断安定性に「とくに優れた」(簡単にいうと粘度が低下しにくい)スペシャル品なので、このオイルと同じ効果を期待する場合は純正オイル一択になるだろう。

使い方が異なれば求める性能も異なる

 さて“純正オイルとオイルメーカー品のオイルに差はない”と言っても、すべての車両が同じようなペースで規則的に乗られるわけではない。年式や車種が同じであっても乗る人次第で走行距離も違うし、メンテナンスの頻度の違う。

 また平地に住んでいる人と坂道が多い山間部に住んでいる人では、仮に同じように法定速度を守って走っていてもエンジンに掛かる負荷は違ってくる。そして当然だがノーマルカーとチューニングカーでは車種が同じであってもエンジンの負荷は変わる。

 このように条件がそれぞれで違っているのが現状なので、エンジンオイルを選ぶ際は、規格や品質以外に「それぞれのエンジン事情にあう性質」という項目が出てくるのだ。そしてこれこそが「純正オイルと社外オイルのどちらが良いか?」というお題の核心なのではないだろうか。

まずはベースオイルのことを気にしてみよう

 では社外オイルを選ぶ場合にはどのような部分に注目すれば良いのだろうか? そのあたりについて紹介していきたい。

 エンジンオイルは原油を蒸留装置で精製する際に抽出されるベースオイルを主体としていて、採れる工程ごとに分けると大まかに「合成油」と「鉱物油」がある。このベースオイルごとにも特性や性能があって、それがオイルで言うところの素材の善し悪しである。

 高性能品であったり、モータースポーツ用途を意識しているオイルなら、素材もそれぞれの考えで吟味しているはずなのでここでの優劣はつけにくく、オイルに求めるものの考え方が違っていれば単純な横比較はあまり意味がない。

 だけどベースオイルの性質の違いはエンジンフィーリングや効果に差を感じるので、オイルにこだわる人ならオイルごとに謳われているベースオイルの特徴は気にするべき点だ。

 ただ、純正オイルではベースオイルについてまでの情報が公開されていないことが多いので、その場合は検討することはできないが、市販のオイルはそこもセールスポイントだったりするのでオイルを探すときはベースオイルについての表記を探してみよう。

 そのベースオイルの性能についてだが、これは基礎体力的なものなのでここだけでオイルの特徴を判断することはちょっと早い。オイルには銘柄ごとの「特技や個性」を出すために添加剤が使用されているのだが、ここが「それぞれのエンジン事情に合う性質」に大いに関係する部分となるのだ。

オイルごとの特性や個性は添加剤で変わる

 純正オイルも社外オイルにも数種類の添加剤が使われているが、そのレシピはオイルメーカーの研究部署(純正オイルも製造はオイルメーカーが行ない、仕様などを自動車メーカーが指定している)で各種の実験や分析を経て決められている。そして出来上がった添加剤パッケージを攪拌装置でベースオイルとしっかり混ぜたあと容器に入れて出荷されている。

 この添加剤だが、これはオイルの製造現場で作っているのではなく、別の化学薬品会社が作っている。そしてオイルメーカーはその製品を買って自社のオイルに使うのだけど、同じ用途の添加剤でもA社とB社では特性に違いがあるかもしれないし、どれくらいずつ混ぜるかということや「松・竹・梅」的な区分けがあれば仕上がったオイルの特性は違ってくるだろう。

 また一部の効果向上を狙っていれば特殊な添加剤を使用することもあるので、つまり、粘度は同じ表示のオイル(純正を含む)であっても細かい特性はそれぞれで違っているのだ。

 そして前記したように、エンジンもそれぞれでコンディションや使用状況が違っているので、これらをあわせて考えると純正、社外すべて含めて、銘柄での優劣ではなくて「エンジンごとに合うオイルがある」ということなのだ。

 だからオイルに興味を持つ人なら、お気に入りのオイルを使い続けるだけでなく、オイル交換のたびに規格や粘度は変えずに銘柄だけ変えて、自分のクルマのエンジンにあうオイルを探すのはどうだろう。

 クルマの状態や乗られ方はそれぞれなので、これをやっていけば本当に自分のクルマに合うオイルに出会えたり、使用したオイルごとの評価を楽しむことができるかもしれない。

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