ホワイトレター入門希望者に知っておいてもらいたいこと
サイドウォールから浮かび上がるような白いロゴ──世の中のクルマの99パーセント以上は普通の真っ黒なタイヤを装着しているだけに、存在感が際立つホワイトレター。以前からオフロード系やスポーツ系タイヤの一部にホワイトレターが設定されてたが、ここ最近はそのラインナップが増えつつある。
「ジムニーやジムニーシエラ、デリカD:5、RAV4などのコンパクト&ミドル系SUVや、ハイエース向けのタイヤでホワイトレターをよく見るようになりました」とタイヤに強いカスタムショップ・エススタイルの菅原さん。
目立ち度抜群のロゴはリフトアップなど足まわりにこだわったクルマと相性がいいし、クロカン四駆、アウトドア、USテイストといった雰囲気を手軽に出せるのもポイント。ノーマル車に履かせるだけでもお洒落に見える。
そんな魅力的なホワイトレタータイヤだが、あの白さはキープできるのか? もし汚れたらどうやって落としたらいいのか? 購入前に気になっている人も多いだろう。そこで、あまり知られていない汚れの原因やケア方法、ホワイトレターに関するトリビアなど、Q&A方式で初心者にも分かりやすく説明します。
【Q.01】「白い塗料は洗車したら剥がれたりしないの?」
「たまに誤解している人がいますけど、あれは塗料ではなくゴムの色。だから洗ったくらいでは剥がれるものではありません」と菅原さん。タイヤのゴムといえば黒色が普通だが、実をいうと100年くらい前のタイヤは白かった(もしくは飴色)。
「今のタイヤは強度や耐久性を高めるため、カーボンを添加しているから黒いのであって、それが入らないと消しゴムみたいに白いんです。ホワイトレターの部分はいわば『ゴムの素の色』です」と菅原さん。
その素の色のゴムをサイドウォール部分に張り付けて作るのがホワイトレタータイヤ。張り付けるといってもきちんと一体化しているし、ある程度の厚みもあるので、普通に使っている分にはまず剥がれたりしない。ゴム+塗装だとヒビ割れが心配だが、そうしたリスクも低い。
【Q.02】「ホワイトじゃなくてブルーなんだけど何コレ?」
ホワイトレタータイヤを注文して、いざ届いてみたら…あれ、文字が青い? それは不良品でもなんでもなく、ホワイトレター保護のためのコーティング。洗えば落ちるので心配ない。
「普通のタイヤは真っ黒なのであまり気になりませんが、ホワイトレターの場合は流通時に擦れたりして、ロゴ部分にキズや汚れが付くこともある。それを防ぐための保護材です」。
水洗いでサッと簡単に落とせるのが普通だが、中には少々ガンコなモノもある。特に海外製のタイヤは、製造されてから日本に入ってきて実際に装着されるまで時間が掛かったりするため、落ちにくいことがあるという。
「簡易的なコーティングではありますが、時間が経つほど落ちにくくなる。水洗いでダメなら洗車用の洗剤か、台所の中性洗剤でもいいので、それらを使ってブラシで擦れば落ちるはずです。パーツクリーナーなどを噴きかけるのも効果的ですが、タイヤの油分を必要以上に落としてしまうのであまりオススメはしません」。
【Q.03】「だんだん茶色っぽくなってきたんだけど…なぜ?」
最初は真っ白でキレイだったホワイトレターも、長く使っているうちに色がくすみ、徐々に茶色っぽく変色してくる。こうなると一気に古臭く見えてしまうのがホワイトレターのデメリットかも知れない。
「茶色くなるのはタイヤの内側から染み出てくる油分が主な原因です。この油分はヒビ割れなどを防ぐ劣化防止剤(老化防止剤ともいう)で、タイヤには不可欠な存在。どんなタイヤにも配合されています。だから普通の黒いタイヤも茶色っぽくなってくるのですが、それがホワイトレターだと目立ってしまうわけです」。
それ以外にも、悪天時や未舗装路を走れば当然汚れるし、路面から巻き上げる泥や油、ブレーキダストなども白さを失わせる原因となる。
「タイヤは地面と最も近く、常に雨風にさらされているパーツ。走行中は熱も持ちますし、非常に過酷な環境下で使われています。キレイさを保つのはなかなか大変です」。
【Q.04】「タイヤワックスを塗っても大丈夫かな?」
ホワイトレターの汚れを防ぐ目的でタイヤワックスを使いたい、という人もいるだろう。これは問題ないのだろうか。
「水性タイプなら大丈夫。油性タイプはNGです。油性タイプの場合、前述の劣化防止剤と反応して、タイヤの内側から外側に油分が引っ張り出されてしまうんです。たとえるならタイヤワックスが『呼び水』になる形ですね。すると前にもいった通り、ホワイトレター部分が茶色くなってしまいます」。
また劣化防止剤が必要以上に引き出されることで、タイヤの劣化が早まるリスクも出てくる。その辺を踏まえると、ホワイトレタータイヤには油性タイヤワックスを使わない方が賢明だろう。
「といっても水性タイプはあっという間に落ちます。2~3日でリセットされるくらいの感覚なので、長期的な効果は期待できません」。
【Q.05】「汚れたホワイトレターをまた真っ白に戻すには?」
「外部からの汚れ、または内部からの劣化防止剤で茶色く染まってしまっても、その汚れを落とすことは可能です」と菅原さん。やり方はいろいろあるが、デメリットもあるので併せて知っておきたい。
1.水洗い
水を掛けながらブラシでゴシゴシするだけでもある程度汚れは落とせる。洗車を手洗いでやっている人は、ホイールだけでなくタイヤも意識して洗ってみよう。マメにやれば汚れが沈着しにくくなるのでキレイさを保てる。泥だらけの道を走った後などは、早めに洗い流しておくといい。
2.パーツクリーナーなどケミカル剤を使う
汚れの原因はだいたい油。それを分解して落とせるパーツクリーナー(シリコンオフ)は有効なアイテムだ。デメリットはズバリ「落ちすぎること」。ヒビ割れなど劣化を防ぐために必要な油分まで落としてしまう。1度や2度くらいでどうなるものでもないが、繰り返し使うと確実にタイヤの寿命を縮める。
「私たちはデモカーの撮影前など、リスク覚悟でもっと強力なエンジンクリーナーを使います。漂白効果は素晴らしいですが、真似しないで下さい(笑)」。
3.メラミンスポンジで擦る
台所でも大活躍な激落ちくん等のあのスポンジ。これでホワイトレター部分を擦るのも効果的なのだという。「表面を少し削り取る感じです。根気よくゴシゴシやるとかなりキレイになりますよ」。クレンザーなど研磨剤入り洗剤も同様に有効だが、これは必要な油分まで一緒に落としてしまう。メラミンスポンジの方がタイヤには優しい。
【Q.06】「どのサイズがホワイトレターなのかよく分からない…」
1つのタイヤ銘柄で、全サイズがホワイトレター仕様のケースはあまりない。多くの場合、ブラックレターとホワイトレターが入り交じっている。例えばトーヨータイヤのオープンカントリーR/Tの場合、215/65R16はホワイトレターだけど、215/70R16はブラックレター、といった具合。
「ホワイトレターか否かは各メーカーのWEBサイトのサイズ表を見れば確認できますが、その表記がメーカーによってマチマチなのでちょっと分かりにくいんですよね」と菅原さん。
よくあるパターンとしては、表の欄に「◆」「□」といったマークが付いたサイズはホワイトレターというもの。この場合、表の一番下に「※◆印の商品は片側ホワイトレターです」というような注釈が入る。
もしくは「OWL(=アウトラインホワイトレター)」「RWL(=レイズドホワイトレター)」という表記があるサイズもホワイトレターだ。似たような表記で「RBL(=レイズドブラックレター)」は違うのでご注意を。
そのほかホワイトレターに関するアレコレ
◆基本的にホワイトレターは片面のみ
メーカー名やブランド名のロゴはたいていタイヤの両面に刻印されているが、ホワイトレターになっているのは片面のみ。反対側はブラックレター仕様が普通だ。そのため、タイヤの内側が減って来たから左右を組み替えて使う、というローテーションはできない(やっても機能的に問題はないが外側ブラックレター/内側ホワイトレターになる)。
◆外して保管する場合は「積み方」に注意
スタッドレスに履き替えるなど、一時的に保管する際もちょっと注意。タイヤを横にして積み重ねた際、ホワイトレター部分が黒い部分に密着していると、劣化防止剤が浸透して茶色く変色していまう。タイヤとタイヤの間に段ボールを噛ませるなどひと工夫しよう。
◆自作でホワイトレター化も可能
ホワイトレターの設定がないタイヤの場合、白いマーカーなどでDIYホワイトレター化するのもアリ。ただし本物ほど長持ちはしないので、その点は覚悟しておこう。「はみ出したり塗りムラがあると安っぽく見えるのでご注意を。個人的にはポスカが塗りやすく、色も乗りやすいのでオススメ。長持ちはしませんけどね」。
最近はあらかじめアルファベットになっているステッカーを貼り付けてホワイトレター化するというアイテムも登場。写真はエクシズルラインの「DIYタイヤレタリングキット」。任意の位置に貼り付けて専用の接着剤で貼り付けるだけとお手軽。
【取材協力】
エススタイル
◆広島県広島市西区中広町3-19-26
◆tel.082-548-9602
◆営業時間:10時~19時
◆定休日:イベント参加日シャコタンからリフトアップまでさまざまなカスタムを手掛けるプロショップ。代表の菅原さんは元タイヤメーカー社員で、タイヤ&ホイール全般に豊富な知識を持つ。