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「形から入る」のが正解! サーキット初心者こそ本格的なレーシングギアを選ぶべき理由

レーシングスーツでパリっと決めて カッコから入るのも恥ずかしくナイのだ

 サーキットを走るにあたっては、あれやこれやとたくさんの準備が必要になる。まず欠かせないのは、クルマの事前チェック。最低限、エンジンオイルは適量が入っているか、汚れ具合は問題ないか、タイヤの減り具合に空気圧、ブレーキパッドやフルードの残量などはしっかりと走行前に確認しておきたい。

 クルマのセットアップや準備以外にも重要なのが、ヘルメットやグローブといったレーシングギアをそろえておくこと。クルマのことに気を取られているとついつい軽く考えてしまいがちだが、モータースポーツを楽しむには、レーシングギアに関する知識を得ておくことも、とても大事なのだ。

本来は初心者こそちゃんとしたものを選ぶべし

 モータースポーツをいまから始めようとするヒトにとって悩みのタネは、ヘルメットやレーシングスーツ、グローブ、シューズなどの“レーシングギア”なのではないだろうか? 何をどんな風に選べばいいかさっぱり……という人も多いだろう。規則が関係してくるので、経験者でも難しいのは事実。

 初心者のうちは「自分は始めたばかりだから、四輪競技専用の高価なものは不釣り合いだ」「遅いくせにカッコ(格好)だけだと言われたくない」などと思ってしまうのは、誰もが経験すること。

 年に1回や2回サーキットに行くレベルであれば、レーシングドライバーと同じレベルの装備をそろえるにはやはり無理があるし、そこにお金をかけるぐらいなら、クルマをパワーアップさせたりすぐにタイムアップするほうに投資したくなって当然と言えば当然。まったく否定もしないし、それも一理ある。

 ではサーキットを走るのにヘルメットやレーシングスーツ、グローブがなぜ必要なのか? それは事故やクラッシュが起きたときに、ドライバーをケガから守るためだ。自分が原因ではなくとも、他車が起こした事故に巻き込まれることもある。

 一般道でもバイク(二輪)はヘルメットが必要なのはご存知のとおり。転倒したときにもヘルメットを被っていれば、頭部をケガから守り、致命傷を負うリスクも減少する。自動車(四輪)レースでもそれは同じ。指先や肌のむき出しも良くないのは当たり前。

 しかし、二輪と四輪の大きな違いは、車両火災による危険性である。

 四輪のレースは事故で車体が激しくクラッシュした場合、ドライバーが車内に閉じ込められてしまうことも少なくはないし、さらにそこに“火がつく”かもしれないのだ。モータースポーツ黎明期に、レース中のドライバーが命を落としたり重症を負った大きな原因のひとつは“火災”だと言われている。

 ここで考えてほしい。初心者と上級者であれば、どちらがサーキットで事故る確率が高いか? 答えは言うまでもない。だから、本来は初心者こそちゃんとしたものを選ぶべきなのだ。レーシングギアに理解がある人ほど、「初心者のくせにカッコつけやがって」などと言う人は皆無。カッコから入るのも恥ずかしいことじゃないし、モータースポーツではむしろ200%褒められるべき。

 ちゃんとしたものとは、世界基準をクリアしFIA/JAFが公認したヘルメット、耐火炎のレーシングスーツやグローブといった装備品(レーシングギア)のこと。これらは四輪レースだけのためにつくられていて、ノーメックスなどの防炎性(難燃性)素材が使われていることが特徴。

 国内でもJAFの公式レースでは、FIA公認の四輪競技用ヘルメット、耐火炎レーシングスーツ・アンダーウエア・バラクラバ(フェイスマスク)・ソックス・シューズ・グローブの着用が必要で、加えてFHRシステム(頭頸部保護装置)を装備することが義務付けられている。
※FIA=国際自動車連盟のこと。世界各国の自動車団体(日本ならJAF)によって構成される国際的機関。

レーシングギアを正しく装備すればタイムも上がる

 まずは、四輪レース用の“ちゃんとしたもの”とはどんなものなのかを説明させてもらったが、耐火炎であることのほかにも、スポーツドライビングに相応しい設計や仕立てになっていることも知っておけば、レーシングギアへの理解がさらに深まるだろう。

 その名のとおりモータースポーツとは、陸上競技やサッカーと同じように“スポーツ”のひとつ。人間工学に基づいて、ハンドルやペダル操作が力まず正確におこなえるように設計されていることも見逃せない。プーマやアディダスといったスポーツブランドがレーシングギアにも参入しているのは納得がいくところ。

 たとえばレーシングスーツはフルバケットシートに座った状態でラクな姿勢になるように縫製されているし、レーシンググローブはステアリングを力を入れずとも握れたり、レーシングシューズは歩くことが前提ではなくペダル操作がしやすいような設計になっているのだ。

 ゆえに、トレーナーや作業グローブ、ランニングシューズでドライビングするよりも、断然にハンドルやペダル操作に優れていて、集中力や体力的な持続性もアップする。サーキットはコンマ何秒の世界。これらが積み重なることで大きな差になることもある。レーシングギアを正しく着用すれば、タイムアップにつながることは何ら不思議ではない。ライバルとの勝負を考えても、レーシングギアが軽視できないポイントはそんなところにもある。

カテゴリ別レーシングギア着用のルール

 レースや競技をカテゴリ別に見た場合の、レーシングギア着用のルールについて整理していこう。上述のとおり、JAFの公式レースが最も厳格に着用が義務付けされていて、レースよりも下のカテゴリーやいわゆる草レースや走行会に行けば行くほど「義務」ではなく「推奨」というルールに徐々に緩和されていくケースが多いようだ。もちろん、どのカテゴリーでもFIA公認のレーシングギアを着用するのが望ましいのは間違いない。

 レースより下のカテゴリーとなるJAF公式の国内ラリーやジムカーナ競技では、必ずしもFIA公認のレーシングギアの着用義務はなく、それらは“推奨”とされ、ヘルメット自体は必ず必要だが、JAFが公認するヘルメット、もしくはJIS規格やSNELL規格などに適合するものと定められている。

 ヘルメットも含めレーシングスーツやグローブ、シューズには、FIA公認ではないが、防炎性(難燃性)素材生地を使用しているものや、カート用などもたくさんラインナップされている。年に数回サーキットに出かけ、たまに草レースや走行会に参加するような頻度であれば、それらを着用するのがいいだろう。

 それから、草レースや走行会レベルでも着用率が上がってきているのが、FHRシステム(頭頸部保護装置)。他車や壁に接触したときなど、激しい(前面)衝突による頭部や首へのダメージを減少してくれる、ヘルメットと同じく並ぶ重要な安全装備のこと。JAFの公式レースではすでにFHRシステムの着用が2017年から義務付けられている。

 FHRシステムはHANS(ハンスとかハンズ)と呼ばれることもあり、HANS社が製造販売していることからの由来。同社の製品を例にとると、5万円前後から入手可能になっている。

レーシングギアをそろえる予算は?

 レーシングギアには、FIA公認から走行会用(カート用)までさまざまなものがあるが、モータースポーツを始めるにあたって最低限必要なものは、ヘルメットとグローブということになるだろう。いわゆるサーキット走行会では、あとは推奨で、長袖&長ズボン、スニーカーでもOKというところが多い。

 ちなみに、長袖&長ズボンというのは、肌の露出をなくすという意味での安全上の最低ラインだが、できれば上下が一体となった「ツナギ」がより好ましい。もっと言うと、肩や腰に引き手(ベルト)がついているとなおヨシ。万が一の事故の際、ドライバーを救出するときに、引き手があれば引っ張り上げることができるからだ。四輪用のレーシングスーツには肩や腰に引き手(ベルト)が必ずついている。

 さて最後に、レーシングギア別に比較的リーズナブルなモデルをピックアップし予算感を整理していくことにする。レーシングスーツやグローブについては、アルパインスターズの製品を例に挙げてみた。

<FIA公認ヘルメット>

 公式レースに出場するにはFIA公認ヘルメットの着用が必要。なかではアライが最もポピュラー。

アライ 5万6000円(GP-6S 8859)~

 最近ではイタリア製のStilo(スティーロ)も注目度がアップ。StiloはF1やWRCの海外ドライバーも多く愛用している。余談だが競技に使用できるヘルメットは製造から10年以内と定められているので、期限にも注意する必要がある。

Stilo(スティーロ)9万1500円(ST5F N)~

<走行会/カート用ヘルメット>

 サーキットの走行会などではフィルフェイスタイプ(二輪用も含む)の着用を推奨していることが多い。カートレース用ではあるが、アライGP-6シリーズの基本性能を引き継いだSK-6が人気。

アライ4万8000円(SK-6)~

<バラクラバ(フェイスマスク)>

 ヘルメットの下に着用する目出し帽(バラクラバ)。アルパインスターズ2020モデルでは、従来の黒や白だけではなく、赤や黄色など華やかなカラーが追加されている。

FIA公認 8400円(RACE V2)~/カート用 2800円(KX BALACLAVA)~

<レーシングスーツ>

 高価に思われがちなレーシングスーツだが、アルパインスターズのエントリーモデル「STRATOS」は、FIA公認の四輪レース用でも手が届きやすい価格帯になっている。

FIA公認 6万6900円(STRATOS)~/カート用 3万6000円(KMX-9 v2 SUIT)~

<レーシンググローブ>

 アルパインスターズでは内縫い、外縫い両方のタイプをラインナップ。2020モデルの「TECH-1 ZX v2」は親指&人差し指がタッチスクリーン対応でグローブをつけたままスマホが使えるようになっている。

FIA公認 1万4800円(TECH1 START)~/カート用 7200円(TECH1-K RACE)~

<レーシングシューズ>

 アルパインスターズ2020モデルの「TECH-1 Z v2」は、ソックスタイプになり、超軽量でフィット感が向上。軽量化と装着感を最優先したシューズになっている。

FIA公認 2万7800円(SP SHOES)~/カート用 1万5800円(TECH 1-K START)~

【詳しくはこちら】

■Stilo(スティーロ)
https://stilo-japan.jp

■BELL(ベル)
http://www.bellracing.jp

■アライ
https://www.arai.co.jp/jpn/pro_aut.html

■アルパインスターズ
https://www.spk-cuspa.jp/alpinestars/

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