ドリンク今昔物語
ドライバーの口内や喉を潤すとともに、脱水症状を防ぐ意味でも重要となってくるのがドリンクです。かつてはクルマがピットインしてくるのを待つ間、交代するドライバーがボトルを持ったまま待機するシーンもよく見受けられました。ピットインしたクルマのドアが開き、自分のボトルを手に持ったドライバーが降りてきて、交代するドライバーも自分のボトルを持ったまま乗り込む。そして手の届く位置(通常はシートとドアの間にホルダーが用意されている)にボトルを放り込む、というのが一般的なシーンでした。
しかし最近のレーシングカー、例えばスーパーGTのGT500クラスでは、ドライバーの手が届くシートの周辺にはボトルを収めるスペースを確保するのが難しくなっています。そのためドライバーからは手の届かない助手席側に設けるのが主流となっていて、ドライバー交代の介助の一環として、登録された規定人数内のピット作業員によって行なわれます。とてもシステマチックですよね。
タイム計測に必要な発信機も交換
昔のレースでは考えもしませんでしたが、最近のレースではタイミングモニターが充実しています。サーキットのセクターごとの区間タイムが表示されたり、前車とのタイム差が表示されたり、と至れり尽くせり。レースカテゴリーやサーキットによってはタイミングアプリも用意されていて、観戦がより深く楽しめるようになっています。
じつはレースに出走するすべてのクルマにトランスポンダー(発信機)が搭載されているのですが、ドライバー交代と同時に、このトランスポンダーもピット作業員の手で載せ替えられているのです。またスーパーGTではフロントウインドウにドライバーを識別する表示灯が装着されていますが、これを切り替えるのもピット作業員のメニューです。今シーズン(2020年)は表示システムが変わりドライバーの識別だけでなく、順位表示にも切り替えられるようになっています。ただしピット作業員のメニューは以前と同様、ドライバー識別の切替のみのようです。
臨機応変にさまざまな作業が行なわれる
ピットワークの作業メニューはほかにも考えられますが、どんなメニューにおいても臨機応変が大きなテーマです。例えばタイヤ交換。スタート前にタイヤ無交換の作戦を立てたとしても、実際のピットインではタイヤ交換できるように用意をしておきます。そして前半のスティントを走り終えたタイヤをチェックし、そのまま後半のスティントを走り切れるかどうかを瞬時に判断するのです。
スーパーGTのマシンは純レーシングカーで対処が進んでいることもあって、最長で500マイル(約804km)の距離を走行するレースでも、最中にブレーキパッドを交換するようなことはありません。一方、FIA-GT3など市販車ベースで戦われる「鈴鹿10時間耐久レース」やスーパー耐久の「富士24時間耐久レース」では、ブレーキパッドの交換もピットワークの作業メニューとなっていて、正確さと1秒を争う速さが求められています。