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「D.A.D」「DUB」「ツイン日の丸」! カスタムカーの窓に見かけるステッカーは一体何もの?

人気ステッカーのネタ元を探る!

 信号待ちをしている時、あるいは渋滞気味でゆっくり走っている時、ふと前のクルマに貼ってあるステッカーに目が留まったことはないだろうか。それはブランドやショップのロゴだったり、キャラクターやマークだったり、何かのメッセージだったり、バリエーションはいろいろだ。なかには「コレ、前にも見たなぁ」「最近よく見掛けるなぁ」と感じるモノもあることだろう。

 そんなクルマ好きには当たり前の各種ステッカーだけど、クルマのことに詳しくないドライバーには、どんなメーカーが作っているのか、なぜそれを貼っている人が多いのか、その実体はあまり知られていなかったりする。ということで、今回は街で見かけることの多い(多かった)定番のステッカーたちをピックアップ。できる限りの詳細を調べてお伝えします。

北海道の深夜ローカル番組名【水曜どうでしょう】

 貼っている車種はいろいろ、カスタムの有無も問わず、そしてどんな地域でもよく見掛けたステッカーといえば「水曜どうでしょう」が筆頭か。知っている人も多いと思うが、これは北海道の深夜ローカル番組(1996〜2002年放送)の名前。北海道出身の俳優・大泉洋が全国区で有名になる前から出演し人気を博していた番組で、再放送版が全国放送されると各地でファンが急増した。

 このステッカーを貼っているクルマが多く見られた期間は、2005〜2010年ぐらいのだろうか。地方によって違いもあるだろうし、きっと北海道ではもっと早くから貼っている人もいただろう。水曜どうでしょうは旅番組なので、ファンにもドライブ好きも多かったのか、高速道路のサービスエリアや道の駅などでよく見掛けた記憶がある。

 なお水曜どうでしょうステッカー(正確にはロゴカッティングシート)は番組公式のグッズで、現在も北海道テレビのオンラインショップで買える。サイズは約16×16cmだ。レギュラー放送を終えて20年近く経っているが、不定期で新作も放映しており、コンテンツは継続中。今年5月もオンデマンド配信キャンペーンが行なわれたばかりで、巣ごもり中に視聴した人も多かったと思われる。ステッカーを貼るクルマが今後再び増えてくるかも…?

関東界隈でよく見る“日の丸マーク”【ファンキーフライデー】

 また埼玉周辺で多く見られるのが日の丸マークのステッカーだ。日の丸と聞くとやや身構えてしまいそうだが、心配ご無用。こちらはFMラジオ79.5MHzのNACK5(ナックファイブ)で放送されている「ファンキーフライデー」(毎週金曜・9時〜18時)という番組のオリジナルグッズだ。

 ただ、これは番組に投稿して放送で読まれた人だけに贈られる非売品。1993年の放送開始時からパーソナリティを務める小林克也さんのサイン入りで、誰でも手軽にゲットできるものではない(メルカリで売られていたけど…)。

 そんな事情もあり、ボディに直接貼るのではなく、ダッシュボードの上など車外から見える位置に置いたり貼ったりする人も多い。そしてステッカーを持つドライバー同士が出会った際は、ファンキーポーズ(親指を立てる)で意思疎通を図るのだとか。残念ながらその現場を目撃したことはないが、埼玉周辺をグルグル走っていればそのうち見られるかもしれない。

アメ車カスタムで有名だった【DUB】

 ギラリと輝く大口径ホイールを履いたアメ車のカスタムカー。ボディにはアーティスティックなペイントが入っていたり、メッキのグリルやバンパーが付いているかもしれない。かつてそんなクルマによく貼られていたのが、「DUB(ダブ)」のステッカーだ。このロゴはアメリカの「DUB MAGAZINE(ダブマガジン)」に由来する。

 DUB MAGAZINEは2000年に創刊されたカスタムカルチャー雑誌。最近はあまり耳にしなくなったが、カスタマイズのジャンルのひとつに「ラグジー(ラグジュアリー)」というものがある。大口径ホイール、凝りに凝ったカスタムペイント、ゴージャスなインテリア、派手に作り込まれたオーディオなど。

 DUB MAGAZINEはそうしたクルマやそのオーナーたち(ミュージシャンやスポーツ選手など有名人も多数)を次々と紹介して人気を博した、ラグジー雑誌の草分けだ。「DUB」はヒップホップ系のスラングで、数字の「20」という意味があるそう。この雑誌で取り上げられるようなクルマは、20インチかそれ以上のホイールを履いているから「DUB MAGAZINE」というタイトルになったらしい。今でこそ20インチは特別なサイズではなくなったが、創刊時は現在の22インチ以上の感覚だったかも知れない。

 日本でも2000年代に「ラグジー系」が盛り上がった時期があり、そのお手本たるDUB MAGAZINEを意識してカスタムを楽しんだり、憧れた人がDUBステッカーを貼っていたと思われる。だが正直、筆者はその辺の事情をあまりよく知らない。そこでラグ系に詳しい編集者に電話で話を聞いてみた。

 「DUBステッカー? あぁ、よく見たよね〜。クォーターガラスに貼っている人も多かったかな。だけどラグジー系のクルマだけじゃなく、普通のミニバンや軽自動車にも貼ってたりとか、ノリで使う人も多かったんじゃないかな。むしろ本気でアメ車をカスタムしている人たちは貼ってなかった気がする(笑)」。

 「DUBマガジンも今はWEB主体になってあまり見なくなったなぁ。あと昔よく見掛けたステッカーといえばプレイボーイ。パチモノっぽいデザインもいっぱいあって面白かったよね。それとAPPIのステッカーも多かった。東北にあるスキー場なんだけど、それを貼るのがステータスでさぁ、ゴニョゴニョ…(話が脱線してきたので略)」と、少々昔話に付き合うことになった。

四駆のクルマに多かった?【酒POWER】

 古くからのジムニーファンならきっとみんな知っている。たとえジムニーに興味がなくても「見たことある!」という人も多いに違いない。それがこの「酒POWER」ステッカーだ。初見の人は驚き戸惑うだろう。まさか酒(アルコール)でエンジンを動かしているのか、あるいは一風変わった日本酒ブランドのステッカーなのか。酒とクルマ、混ぜてはいけない予感がする2つの要素を果敢にミックスした、不思議な勢いを感じるこのステッカーは一体なんなのだろう? と。

 ネタ元というか製作元は、ジムニー専門店の老舗として知られる神奈川県のAPIO(アピオ)。なぜ酒POWERなのかを知るには、アピオ社長・河野サンのブログに書かれた以下の文章を読むのが手っ取り早い。なお、文中に出てくる「尾上氏」はアピオ創設者であり現会長の尾上茂サンのことだ。

「1984年7月のある日、尾上氏の友人で、アメリカではちょっと凄腕のオフロードレーサー、ヘンリー・シンプソン氏が日本へやってきた。尾上氏率いるノリノリ軍団による熱烈大歓迎パーティが連日連夜開催されたのである。宴もたけなわのある夜、シンプソン氏が尾上氏に尋ねてみた。あんたのマシンはどうしてそんなにパワーがでるのか? そこで尾上氏は、そいつはな、この酒のせいだ!と。そこで納得したシンプソン氏はすかさず、おおミスターサケパワーと叫んだのあった。これが栄光の“酒パワー”ブランドの事の起こりであり、これ以降世界中の『4駆飲み』に愛されているのである。警告!飲酒運転は日本の法律で禁止されています」。

 ということで、日本酒が大好きな尾上会長が勢いで作ったステッカーだったのである。気になったので当時のことを尾上さんに聞いてみた。

 「シンプソンが『You are Mr.SAKE POWER!』と騒いでいたのはよく覚えてます(笑)。彼自身はあまり酒は飲まないタイプだったんですけどね。その場にはデザインをやっている仲間もいて、面白いからステッカーにしようということになった。色や形はサントリーウイスキーのキャラをヒントにしました。『酒』は漢字ですが、この文字は海外でもアルコール類のことだって知られているみたいで、きちんとジョークとして通じるんですよ」と尾上さん。

「オーストラリアとか海外のレースに出かけていくと、エントリー車両になぜか輸出した覚えのない酒POWERステッカーが貼られているんです。どうやらハワイで勝手に作っている業者がいたみたいで、みんな偽物とは知らずに貼っている。面倒なので放っておいてますけどね(笑)」。

ドレスアップユーザーの心を掴んだ【D.A.D】

 リアガラスに貼られたインパクト大のロゴマーク「D.A.D」。貼っている車種はさまざまだが、特にミニバンやワゴン、軽自動車が目立ち、ローダウン系のカスタマイズをしたクルマもよく見られる。やはり若者のクルマ保有率が関係しているのか、都市部から少し離れたエリアのクルマに多く貼ってある印象だ。

 「D.A.D」とは、カーアクセサリーメーカー「ギャルソン」のメインブランドだ。ドレスアップ用品全般を手がけているが、特にインテリア系のラインナップが豊富。ルームミラー、ステアリングカバー、フレグランス、テーブル類あたりはかなりチカラが入っており、ドレスアップ業界では知らぬ者はいないレベルの人気を誇る。東京オートサロンや大阪オートメッセといったカーショーでは、全身クリスタル仕様のベンツを出展していることもあって、それでD.A.Dを知っているという人も多いかも知れない。

 ちなみにD.A.Dはファンの間では「デー・アー・デー」と発音されることもあったり、「ディー・エー・ディー」だったり、なかには「ダッド」と呼んでいる人もいる。正式にはどれが正解なのだろうか? ギャルソン事業部・広報開発課に聞いてみた。

 「アルファベットを1文字ずつ普通に読んで『ディー・エー・ディー』です。以前は確かにドイツ語の発音で『デー・アー・デー』と呼ばれることも多かったのですが、現在はお客様が混乱しないよう、もっとも一般的な読み方を公式見解にしています。D.A.Dは弊社代表の名前を入れてネーミングしています」。

 ブランドの設立は2002年12月。それより前は「ギャルソン」がブランド名の役割を果たしており、ステッカーも「GARSON」のロゴがメインだった。しかしD.A.Dが浸透するにつれ、そちらが前面に押し出されるようになり、ステッカーやエンブレム、その他の各商品につけられるタグやロゴもD.A.Dに変わっていった。

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