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ここまで復活が待望されるクルマはない! 男も女も熱狂させた「歴代シルビア」伝説

いまだ復活の思いがささやかれ続けるクルマ

 日本のクルマの中でも、ファンたちからの再登場が望まれるという声が止まないブランドがある。生産終了後すでに20年近くが経とうとしている日産のシルビアだ。栄枯盛衰は世の常ではあるものの、なぜにこれほどまでに好かれてきたのか。シルビアの足跡を振り返ってみよう。

ー美しき女神の誕生ー 
初代CSP311(1965年-1968年)

 ギリシャ神話の女神「シルビア」の名を冠した初代CSP311は、1964年9月の第11回東京モーターショーにプロトタイプとして出展され注目を集め、翌’65年4月に市販された。

 宝石をカットしたような優美なデザインはクリスプルックと呼ばれ、ドイツ人デザイナーのゲルツ氏がデザインを担当、継ぎ目のないボディは職人の手作業によるハンドメイドで、ウッドステアリングや本革仕様の内装など、贅を尽くした国産初の2シータースペシャリティクーペとして誕生した。

 このモデルはフェアレディ1600と姉妹車で、Xメンバーのラダー付フレームと、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにリジッドリーフのサスペンションを採用し、ミッションはポルシェタイプフルシンクロの4MT。エンジンはR型1595cc直列4気筒OHVにSUツインキャブを組み合わせ、最高出力90ps/6000rpm、最大トルク13.5kgm/4000rpmを発揮した。

 日産渾身の高級モデルだったが、あまりにも高価だったため3年間で生産されたのは554台だった

◆全長3985mm
◆全幅1510mm
◆全高1275mm
◆ホイールベース2280mm
◆車両重量980kg

ー時代を越えて女神降臨再びー
2代目S10(1975年-1979年)

 初代モデルから経つこと数年、スペシャリティカー路線を踏襲し、車名を「ニュー・シルビア」として登場したS10。初代との繋がりはほとんどなく、2シーターから5人乗りに、高級スペシャリティカーから一般的なクーペに変更されたが、奥行きのあるグリルが特徴のフロントマスクや、ウェッジシェイプを取り入れたボディラインが斬新な、ピラーレスハードトップの新世代スペシャリティスポーツに生まれ変わった。

 内装は高級布張りシートや4連メーターを採用しスポーティ感を演出。サスペンションはフロントがストラット、リアはリジッドリーフを踏襲し5MTを採用した。搭載するL18型1770cc直列4気筒OHCは最高出力105ps/6000rpm、最大トルク15.0kgm/3600rpmを発揮。1976年のマイナーチェンジで排ガス規制に対応するL18Eに換装されるなど、安全性や公害対策を重視した造りだった。

LS(1975年)
◆全長4135mm
◆全幅1600mm
◆全高1300mm
◆ホイールベース2340mm
◆車両重量990kg

ーツインカムを得てスポーツ路線にー
3代目S110(1979年-1983年)

 1979年にモデルチェンジされたS110は、角形4灯ヘッドライトを採用し若者向けのスポーティで直線的なデザインに生まれ変わった。

 ボディはピラーレスハードトップのクーペと、半年後に追加された3ドアファストバックの2種で、姉妹車のガゼールも登場している。

 トップモデルは1952ccシングルカムのZ20型を搭載し120ps/5600rpm、のちにZ18ETのターボモデルも追加されている。サスペンションはフロントにストラット、リアが4リンク+コイルになった。そして1982年に、R30スカイラインRSから譲り受けた150psを発揮するFJ20型DOHCを搭載して追加された「RS」でスポーツ色を強く打ち出した。

 競技向けとしてラリー仕様のグループBホモロゲモデル240RSも登場。オーバーフェンダーが追加され、2340ccのFJ24を搭載し、市販され競技でも大活躍。

 レースでは1981年からスーパーシルエットに星野一義選手の駆るインパルシルビアが参戦開始するなど、モータースポーツにも力が入れられた。

RS(1982年)
◆全長4400mm
◆全幅1680mm
◆全高1310mm
◆ホイールベース2400mm
◆車両重量1100kg

ー衝撃の稲妻ー
4代目S12(1983年-1988年)

 若者向けの本格的小型スペシャリティスポーツとして生まれ変わったS12は、ウェッジシェイプの精悍なスタイルとリトラクタブルヘッドライトを採用してイメージを一新。ピラーを持つ2ドアノッチバッククーペと3ドアハッチバックを設定し、姉妹車のガゼールと同時発売された。

 エンジンはCA18の他、FJ20ETを積むスポーツモデルが設定され、ボンネットにFJ20が収まりきらなかったため、巨大なパワーバルジを追加、それが威圧的な迫力を生んだ。FJ20ETはターボにより最高出力190ps/6400rpm、最大トルク23.0kgm/4800rpmを発揮。サスペンションはフロントにストラット、リアにセミトレーリングアームを採用する。1986年のマイナーチェンジで全車CA18に統一され、ツインカムターボのCA18DETは145psを発揮した。また、この時にガゼールは廃止されている。

 レースでは1982年から星野一義選手が日本ラヂエータ、のちのカルソニック(現マレリ)で参戦していた黄色い稲妻のカラーリングのマシンが、富士GCシリーズ最後の年となる’83年からS12にチェンジ。パイプフレームやサイドラジエターを採用した本格的なスーパーシルエットに進化していた。

RS-X(1986年)
◆全長4430mm
◆全幅1660mm
◆全高1330mm
◆ホイールベース2425mm
◆車両重量1170kg

ーバブルに舞い降りた女神ー
5代目S13(1988年-1993年)

 1988年に5月に市販されたS13は、日産社内で盛り上がった’90年にシャーシ性能でトップに立つという目標の「901運動」とバブル景気が後押しして高性能でスタイリッシュなスペシャリティカーとして開発された。

 クリスタルグリルと4連プロジェクターの超薄型ヘッドライトを採用した未来感あふれるデザインは、曲面を多用した美しいクーペスタイルで、「アートフォース・シルビア」のキャッチコピーが付けられた。

 グレード名はトランプになぞらえてK’、Q’、J’とするなど、お洒落さをアピール。発売直後には東京・六本木のディスコ、二十数店を借り切って販促イベントを開催するなど、完全に若者向けにシフトしていた。

 デートカーとして女性にも人気があり、それまでスペシャリティカー市場で独走していたBA型ホンダ プレリュードの牙城を崩し、歴代トップの販売台数を誇るベストセラーカーになった。

 ライバルがFF化していく中、FRを踏襲し、ターボで武装したハイパワーエンジンを搭載、ターボ仕様のCA18DETは最高出力175ps/6400rpm、最大トルク23.0kgm/4000rpmを発揮した。サスペンションはストラットとリアにマルチリンクを採用し、日産得意の4輪操舵システムHICASIIも装備する。

 1991年1月のマイナーチェンジではSR20型に換装され、ターボ仕様のSR20DETは最高出力205ps/6000rpm、最大トルク28.0kgm/4000rpm、を発揮し、HICASIIはSUPER HICASに進化した。外観はグリルやリアスポイラーなどが変更され、ヘッドライトが6連プロジェクターになった。FR駆動による運動性の高さから、スポーツ志向のユーザーにも歓迎され、サーキット走行やドリフト競技で常連マシンとして注目を集めた。

K’(1988年)
◆全長4470mm
◆全幅1690mm
◆全高1290mm
◆ホイールベース2475mm
◆車両重量1120kg

ー長期人気を継続させた帰国子女ー 180SX

 姉妹車として1989年に追加された180SXは、海外で販売されていたリトラクタブルヘッドライトを採用するハッチバックモデル240SXの日本仕様として登場した。

 スペックはシルビア同様で、当初はCA18DET搭載のターボモデルのみ設定されるが、1991年のマイナーチェンジでSR20型に換装し、フロントバンパーが変更され、インテークを廃止した一体感あるフラットなデザインになった。

 シルビアがS14にバトンタッチしてからも継続生産され、1996年のマイナーチェンジで開口部の大きなフロントエアロバンパーや大型リアスポイラーを採用し、1998年まで生産されるロングセラーモデルとなった。

 チューニングベースとしても人気で、プライベーターの間で流行っていた180SXをベースに、フロントマスクをシルビアに換装したモデルが、一部ディーラーで限定販売されるなど、異例な現象もあった。

typeX(1996年)
◆全長4540mm
◆全幅1690mm
◆全高1290mm
◆ホイールベース2475mm
◆車両重量1220kg

ー優雅なワイドボディを纏うー 
6代目S14(1993年-1999年)

 大人気を博したS13からキープコンセプトでモデルチェンジされたS14は、ボディサイズが変更され初の3ナンバーモデルとなった。

 柔らかな面で構成されたデザインは、エレガントさを増した大人のクーペを感じさせ、その美しさに目が釘付けになる「アイ・ハント・シルビア」のキャッチコピーが用いられた。

 エンジンはSR20型を搭載、ターボモデルでは最高出力220ps/6000rpm、最大トルク28.0kgm/4800rpmを発揮した。

 しかし、優美になったスタイルはスポーツ色を求める若者には、あまり受け入れられず、1996年のビッグマイナーチェンジで、吊り目ヘッドライトを採用しフロントデザインを一新、大型のエアロパーツを装着してスポーツ性を強く打ち出した。

  販売面では落ち込んだS14だったが、ロングホイールベースは高速で進入するコーナーアプローチへの安定感を高め、ワイドトレッドによる、ドリフト中のコントロール性が良好で、不評だったワイドボディ化は、ドリフト競技では再評価された。

K’(1993年)
◆全長4500mm
◆全幅1730mm
◆全高1295mm
◆ホイールベース2525mm
◆車両重量1220kg

ー有終を飾るイタリアンテイストの華ー
7代目S15(1999年-2002年)

 イタリアンテイストを取り入れた大胆なデザインのS15は、再び5ナンバーモデルとしてサイズダウンされ1999年に登場した。

 トランク上部に回り込む特徴的なリアのフェンダーラインや曲面構成の吊り目ヘッドライトなど、個性的なスタイルが人気だ。グレード名はspec.Sとターボのspec.Rに変更され、ターボモデルにはパワーアップされたSR20DETを搭載し250psを発揮、歴代初の6MTの採用やAピラーに設置される追加メーターなど、スポーツ性を強くアピールした。

 1999年にspec.Sをベースに200psにファインチューンされたオーテックバージョン、2000年に電動メタルルーフを採用したヴァリエッタを発売したが、2002年の最終限定車「Vパッケージ」を最後に平成12年排ガス規制の影響で同年8月に生産終了となり、惜しまれながらもシルビアの系譜に終止符が打たれた。

 ドリフト競技では高剛性ボディとハイパワーエンジンが人気で、空力を意識したエアロにワイドボディ化を施し一線級のマシンとして現在も国内外で大活躍している。

Spec.R(1999年)
◆全長4445mm
◆全幅1695mm
◆全高1285mm
◆ホイールベース2525mm
◆車両重量1250kg

ー次期型は?ー

 ハイブリッドエコカー全盛だった昨今だが、スポーツモデルに注目が集まるようになり、トヨタ 86やスバル BRZなどのFRスポーツが人気だ。ライバルとしてシルビアが復活するには絶好の好機かもしれない。

 現在、2Lのスポーツエンジンを持たない日産だが、VCR(可変圧縮比)エンジンを使うか、モーターアシストを取り入れるか? など考えられないわけではない。期待を込めて「技術の日産」の復活を応援したい。

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