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車検対応品なのになぜ? 「認証プレート付き」でも通らないことがある社外マフラーの落とし穴

この記事をまとめると

■保安基準適合でも性能等確認済表示がないとダメ
■識別番号やエンジン型式を刻印したプレートが付く
■傷んでしまった場合は再発行が必要に

2010年4月以降は「性能等確認済表示」マフラーがマスト

 2010年(平成22年)4月1日以降に生産されたクルマは、加速走行騒音を防止する規制が適用されている。細かい事情はざっくり端折るが、その関係で社外マフラーに交換する場合は、「性能等確認済表示」のあるモノでないと車検に通らない。

 ようは「加速走行騒音も近接排気騒音も計測して保安基準に適合していることを確認しておきましたよ」という証明がないとダメということだ。これを「事前認証制度」という。

「性能等確認済表示」は金属製の認証プレートに刻印され、マフラーのサイレンサー部分などに溶接で貼り付けられるのが一般的(本体に直接刻印されることもあり)。プレートには「JQR」「JATA」「JARI」のいずれかの確認機関名が刻まれるほか、識別番号やエンジン型式も表示される。

 その認証プレートが付いている社外マフラー(以下、便宜的に「認証マフラー」と呼称する)は車検対応品で、付いていない社外マフラーは非対応品ということになる。2010年3月以前に生産されたクルマなら、近接排気騒音が96dB以下であれば車検OKだった(排ガス検査や最低地上高、出口等の問題がなければ)が、2010年4月以降のクルマは、まず認証マフラーでないと話にならない。

 とはいえ、認証マフラーなら100パーセント車検に通るかといえばさにあらず。確率は低いがNGになるケースもある事を、知らない人も意外と多い。その具体例を挙げていこう。

車種は適合していても……え? よく見ると適合外?

 メーカーが認証マフラーを販売するためには、事前に国土交通省が定めた確認機関で認証を受けなくてはならない。実車で騒音試験を行うのはもちろんのこと、申請書類をたくさん用意したり、品質管理体制をチェックされたり、それらに伴う各種手数料を支払ったりとかなり大変なのだが、1車種につき1つの認証では済まない。

 考えてみれば当然だ。たとえ同じ車種でも、排気量が違ったり、ハイブリッドの設定があったり、ターボとNAがあったりする。エンジンが違えば音量が変わるのも自明の理なので、認証を受けるにはそれぞれで申請する必要がある。また二駆用と四駆用でもパイプの取り回しが変わったりするので、これもまとめるのは難しい。認証は別々だ。

 ちなみに認証マフラーを適合外の車種に付けた場合、その認証は無効になり車検は通らない。それと同じ理屈で、車種は合っていても排気量や駆動方式などが認証時と違っている場合も無効だ(それ以前にきちんと付かないことが多いと思われるが)。認証はそれを受けたクルマに付けてはじめて効力を発揮するもので、マフラー単体に与えられるものではない。

 購入前には車種や年式だけでなく、「エンジンの種類」「駆動方式」「ミッション」も適合しているか入念に確認すべきだろう。各メーカーのWEBサイトで適合表が見られるはずだが、全メーカーで表記が統一されているわけではなく、ビギナーには分かりにくかったりする。安い買い物ではないので、心配な人はメーカーに直接問い合わせるといい。

いつの間にか変わっている!? 「識別記号」にも注目

 そうした「適合外」の間違いは他にもある。「自動車排出ガス規制の識別記号」を知っているだろうか。3文字のアルファベット&数字で表される記号で、型式とセットになっている。たとえば「DBA-AGH30W」なら、アタマの3文字「DBA」が識別記号だ。 社外マフラーが事前認証を受ける際、この識別記号も登録される。そして車検の際、その車両の識別記号とマフラー側で登録された識別記号が食い違っているとアウト。合っているか合っていないかは、認証プレートに刻まれている英数字と、それに紐付けられた認証情報を照会すれば分かる仕組みで、車検時にはもれなくチェックされる。

 やっかいなのが、クルマの識別記号はエンジンやマフラーの変更・改良などがなくとも変わるケースがあること。一部改良など小変更の際にひっそり変わっていたりする。

 たとえばトヨタ86は初登場時から識別記号は「DBA」だったが、2019年2月の一部改良に伴って平成30年排出ガス基準25%低減レベルを達成、「4BA」に変わった。だがエンジン自体は特に変わった様子はないので「DBA」用のマフラーも「4BA」にそのまま付くし、音量が変わることもなく、そのほかの機能面も問題ない。ちょっとクルマに詳しい人なら「4BAだけどDBA用で問題ないだろう」と付けてしまうこともあるかもしれない。

 その場合どうなるかというと、車検は通ることもあるし、通らないこともある。エンジン等が変わっていなくとも識別記号が変わった場合、メーカーは再度申請を行い(再試験が必要なことも、書類だけで済むこともあるらしい)、認証情報をバージョンアップする必要がある。それをきちんと行っていれば車検OKで、やっていなければNG。これも購入前にメーカーに確認しておきたい。

合法の証・認証プレートは物理的にも大事なモノ

 車検時に必ずチェックされる認証プレート。ただ付いている/付いていないだけを見るのではなく、そこに刻まれた英数字を読み取り、認証情報と照会するところまでやる(はず)。だから縁石か何かにマフラーを引っ掛けた拍子に、表面が削れて英数字が正確に読めなくなった、という場合は車検に通らない。いうまでもないが丸ごと外れてしまってもアウト。

 そんな時のために、書類でも「性能等確認済表示」できるものが用意されて……いない。あるのはマフラーに取り付けられた認証プレートだけ(もしくは本体へ直接の刻印)なのだ。これはどんなメーカーも共通。認証プレートが読めなくなったり、失くした場合は、メーカーに再発行してもらう必要がある。

 再発行の対応はメーカー次第だろうが、参考までにブリッツでは「商品の不備が原因ではない場合は有償の修理扱い」になるという。なぜなら認証プレートは偽造を防止する意味でもマフラーにガッチリ溶接しなくてはならないからで、単品のみ再送してもらうのは不可。

 一度マフラーを車体から取り外す→ブリッツに送る→プレートを溶接して送り返してもらう、という流れになる(ユーザー登録してあるとスムーズに手続きできるそう)。手間と時間が掛かるが仕方ない。

 基本的に認証プレートは擦りにくい場所にしっかり溶接されているが、アクシデントで削れたり剥がれたりする可能性は十分ある。特にローダウンしている場合は気を付けよう。車検時に発覚してもすぐには対応できないだろうから、オイル交換時の際など、たまに認証プレートをチェックしておくといいかもしれない。

実際に音量を測ってみてうるさかったらアウト

 マフラーの消音機能は劣化していくもの。使用頻度や乗り方にもよるが、時間を経るごとに排気音はうるさくなっていく。純正マフラーだってそうだし、認証マフラーも例外ではない。

 1998年(平成10年)以降のクルマは、近接排気騒音は96dBまで(後部エンジン車は100dBまで)。2016年(平成28年)10月以降の輸入車を除く新型車は、近接排気騒音は91dBまで(後部エンジン車は95dBまで。ただし交換用マフラーは新車時の+5dBまで)という保安基準がある。

 これらの基準値をオーバーしていた場合は、もちろん車検に通らない。車検時、加速走行騒音は計測されないが、近接排気騒音はきっちり計測される。いくら認証マフラーとはいえ、無条件で車検OKとはいかないのだ。

そのほか、今も昔もこんなケースは車検に通りません

◆最低地上高が9センチ以下

 ボディの中でマフラーが一番低い「構造物」になることは珍しくない。足まわりがノーマルのクルマに認証マフラーを付けて9センチを割り込むことはまずないだろうが、ローダウンしたクルマであれば話は別。気をつけよう。

◆鋭い突起があったり、突出し過ぎている

「フロアラインからはみ出したらアウト」といった厳しい基準が平成29年に施行される予定だったが、それは廃止になった。とはいえテールエンドがバンパーから極端に飛び出していたり、鋭く尖っているのはNG。認証マフラーにマフラーカッターを付ける際は注意。

◆ばい煙、悪臭・有毒ガスの発散防止装置がついていない

 ようは触媒が付いていて、それがきちんと機能し、COやNMHCなどを規制値以下に抑えられればOK。触媒は社外品でも機能に問題がなければ車検に通るが、音量規制や事前認証制度の絡みもあって合法化の難易度は上がっている。触媒外し+認証マフラーの組み合わせは当然NG。

【取材協力】
BLITZ(ブリッツ)
◆tel.0422-60-2277
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