西部警察で活躍した特殊車両たち
クルマに対する記憶の中には、クルマ自体はもちろんのこと、そのCMや登場したドラマや映画、アニメなども含まれる。しかもその印象が強い場合、クルマを趣味としない人にも「あのクルマといえば○○だね」というイメージを残しているのではないだろうか。
そこでドラマ・映画・CMなどで、登場人物と並んで存在感を残したクルマたちを紹介したい。まずは、伝説の刑事ドラマ「西部警察」の活躍で今なお話題に上る「スカイラインRS」から始めよう。
初登場はスカイライン“ジャパン”がベースの「マシンX」
1979年〜1984年にかけて、3部・全236話が放送された伝説のドラマ「西部警察」。拳銃を撃ちまくる警察と、手榴弾やバズーカなどを普通に持っている犯人のバトル、派手な爆発、激しいカースタントなどの「刑事ドラマ」とは思えない強烈なアクションシーンが毎週連続し、現在でも多くのファンを惹きつけている。
どのくらい破天荒なドラマだったかというと破壊した車両は約4680台、ガソリン使用量は約1万2000L、火薬の量は約4.8t、撮影で飛ばしたヘリコプターの数は約600機、始末書45枚という数字がそれを物語る。
そして何よりも、西部警察の人気を不動のものとしたのが、劇中に出てくる警察署「西部署」の特殊車両だった。西部警察のスポンサーだった日産の市販車を用いて、当時のハイテク装備を満載。犯罪捜査に用いる「マシン」を作り上げたもので、当時は子供から大人まで熱狂した。マシンたちは名俳優が軒並み揃う出演陣並みにインパクトが強く、「西部警察」を象徴するアイコンとしてファンを虜にし続けている。
特殊車両の初登場は、パートIの45話。それまでは捜査にセダン(セドリックやグロリアが中心)を用いていた西部署に、5代目スカイライン(C210型・愛称:ジャパン)2000GTターボをベースにした「マシンX」が配備されたという設定だった。外観は黒いボディにゴールドのストライプ、足元には金色に塗られたカンパニョーロのホイールというシビれるスタイル。車内にはコンピュータとモニター、サーチライト、レーダー、特殊発信ペイント弾発射銃など52種類もの特殊装備を装着していた。
最終的には3台になった「スカイラインRS」
ドラマ放送中の1981年に、スカイラインは新型の6代目(R30型・愛称:ニューマンスカイライン)へとスイッチ。パートII第15話からはベースを「スカイラインRS」とした「マシンRS」も登場して、マシンXとともに活躍した。
スカイラインRSは、直列4気筒DOHC16バルブの「FJ20E」型エンジンを搭載した6代目スカイラインのスポーツモデル。RSのイメージカラーともいえる赤×黒に塗られたマシンRSには「情報分析車」という役割が与えられており、分析コンピューター、特殊ビデオ装置、レーダー装置、特殊無線機、信号操作装置などを車内いっぱいに装備していた。
そしてパートIIIの第16話以降は、マシンRSがなんと3台体制に! 新規に製作された「マシンRS-1」と「マシンRS-2」のベース車は、ターボで武装した「RSターボ」に進化していた。機銃や急加速装置を搭載するRS-1は走行・戦闘指揮・攻撃を担当。情報収集車の任務を持っていた。RS-2には、あらゆる無線を傍受可能な特殊無線機などを載せていた。
両車はエクステリアにも手が加えられており、エアロパーツやエンケイのメッシュホイールなどで迫力あるスタイルに。なお、すでに登場していたマシンRSは、RS-1とRS-2に寄せた外観の変更を施して「マシンRS-3」に編入し、情報分析車として引き続き使われることになる。マシンRSは3台とも役割が異なるため、微妙に外観が異なっていたのも特徴だった。
3台のフォーメーション走行を含め、劇中でのアツい走りに“スカイラインRSってカッコいい!!”と刷り込まれた人は数知れず。放送終了後36年経った今もなお、「RSといえば西部警察」というイメージが強く残っている。
フェアレディZやガゼール、サファリなども登場
そのほかにも西部警察には特殊車両が用意されていた。パートI・111話から登場し、放水シーンが記憶に残る「サファリ4WD」、マシンRSと同じくパートII・第15話から活躍したフェアレディZ(S130型)ベースの「スーパーZ」も人気が高い。
スーパーZは市販車には設定がなかった金×黒の2トーンカラーに塗装され、しかもガルウイングドアに改造。大門団長が主に運転した。また、西部署の木暮課長専用にガゼールのオープンカーも作られており、オープニングでは故・石原裕次郎氏が飛び乗るシーンを見ることができる。