伝統のショーファーカーも今やカスタムベースに!?
トヨタ・センチュリーといえば、皇室、政治家、大企業の経営者といった要人御用達。オーナー自らがハンドルを握ることはなく、その役割は専属の運転手が担う「お出迎え用」のクルマである。現行のG60型は2018年6月に登場した三代目。エンジンやプラットフォームは先代のレクサスLS600hLをベースにしたとはいえ、今や国産車で唯一という貴重なショーファーカーだ。
本来ならカスタムベースに選ばれるクルマではない。先々代のG40型、先代のG50型ではカスタマイズを楽しむオーナーもごく一部いたが、それは中古市場に比較的安価で出回るようになってからの話。G60型はまず新車価格からして約2000万円と飛び抜けているし、中古車もまだ非常に数が少なく、相場は1700万円前後。そんなクルマを買ってイジろうなんて考える人はどれだけいるだろうか。
しかし世界的な視点で考えるなら、ロールスロイス・ファントムやメルセデス・マイバッハなどでチューニング、モディファイを楽しむ人たちは想像以上に多い。もともとがオーダーメイドで作られるようなクルマだから、その延長線としてさらに手を加えるのも自然なこと、と言えるかもしれない。
もちろんセンチュリーは国産専用車ということもあり、海外のラグジュアリーカーたちと単純に比較はできない。だがこのG60型の登場からわずか2年足らずで、3ブランドからカスタマイズ車両が発表された。伝統的なショーファーカーでありながら、カスタムベースとしても楽しめる…。センチュリーは今後、そんな存在になっていくのかも知れない。
【GRMN】世界に1台? 2台?のGRMN仕様
その方向性はある意味、トヨタ自らが示している。2018年、東京モーターフェス2018のPRに、豊田章男社長がワンオフGRMN仕様のG60センチュリーで乗り付けたのは記憶に新しい。販売開始からまだ3ヶ月ほどの出来事で、マスコミ各社は度肝を抜かれたものだ。その後、2019年、2020年と続けて箱根駅伝の大会本部車としても活躍したので、知っている人も多いのではないか。
「センチュリーGRMN」のボディカラーは、純正には設定のないパールホワイト。下まわりのメッキガーニッシュはブラックアウトされ、アクセントの赤いラインが走る。ホイールはBBSの鍛造1ピースで、メッシュスポークからは「GR」ロゴ入りのブレーキキャリパーが存在を主張。ハニカムメッシュのフロントグリル&バンパーロアグリルはまるでスポーツカーのよう。ショーファーカーとは思えぬ装いだ。
さらに昨年の東京オートサロン2019では黒バージョンも登場。このGRMNセンチュリーは白と黒の2台が存在することが判明した。そして普段は、豊田社長をはじめトヨタの上層部が社用車として使っているらしい。白は品川ナンバー(東京)、黒は豊田ナンバー(愛知)なので、運が良ければそれぞれの地域で見られるかも?