「復刻版」ではなく現代の技術で作った「最新版」
その3号機、作る上でのテーマは『今の技術で作ったら、どんなモノに仕上げられるのか』。当時の漫画や雑誌に掲載された、いわば「35年前の復刻版」を作ってノスタルジーの誘惑を狙いたくなるが、雨さんにそんな考えは一切なかったという。
「当時との明確な違いがタイヤ。パフォーマンスが全然違うので、だからこそ同じスタイルにはできない」。
そこで第一に考えたのが、性能を最大限に引き出すための足まわりやフレーム作り。ボディはピックアップトラックの構造に近いラダーフレーム構造を採用。床まわりも補強することで室内にロールケージを組まずに済んだ。
「雨サンには、ロールケージを入れた方が早く仕上がりますよ、とはもちろん伝えました。でも“それはやりたくない”ってなり、結果こうなったんです」(前出渡辺さん)。
エンジンルームは、13Bペリフェラルポート仕様の(NA)エンジンを搭載するスペースを確保するため、約200ミリ程度前へ延長。逆にエンジンを後方に追いやるとバルクヘッドの大幅な切削加工が必須になり、加工自体も大変。ナンバー取得(車検)も考えていたため、前側を延長して構造変更申請する方が遥かにスムーズと判断した。
屈強なボディにスペースも確保できた結果、普段であればレースに用いられる2ローター・ペリフェラルポート仕様のエンジンを搭載。さらに左右で約30センチのワイドフェンダーにはルーバーも入れて安定した走りを実現する。
他にもフロントグリルやテールランプはストック。ボンネットはオリジナルのダクトを延長してマーカーはLEDを採用。流用パーツも冴えており、サイドミラーはコペン用。台座はFD3S用をワンオフで仕上げる。ボディカラーは初代NA6ロードスターのマリーナブルーにどこか似ている、クラシックブルーにオールペン。サイドステップはGTカーにインスピレーションを受けたオリジナルとなる。
リヤバンパーはフェンダーまで大胆に開放しているが、ここも拘り。「ロータリーの場合はエキゾーストの熱が激しいので、それを抜いてあげる工夫が必要」と、オーバーハングがないためにワンオフで工夫を凝らしている。
デジタルメーター1つで管理するのも現代風
インテリアのメーター類はイタリア・AIM製デジタルメーター。「スピードメーターやタコメーターなどは元のが使えなくなってしまうので、だったらコレでまとめちゃえばいい!」とエンジンマネージメントはフルコンで一括管理。
通信しながら回転数や水温を拾うことが可能、それがボタン一つで操作でき、追加メーターなども不要と、美的センスもあるスッキリした室内空間を演出する。シートはコンパクト車両のために専用設計されたブリッド・ゾディアのフルバケットシートを装着している。
「昔のよりかなりカッコよくできていると思います。前のは結構テキトーに作ってましたから(笑)」とは雨宮さん。それが本当なのか謙遜なのか。いつもの優しそうな笑顔と共に話してくれた。