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ホンモノのF1エンジンを後席の間に搭載! プロストもドライブした史上最強ミニバン「エスパスF1」の衝撃

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TEXT: 遠藤イヅル  PHOTO: Renault、日産、FCA、三菱、遠藤イヅル

実はプジョーから生まれていたかもしれない!?

 エスパスF1はウィリアムズの協力で製作が進んだが、2代目エスパス自体もルノー製ではなく、「マトラ(フランスの自動車メーカー)」で開発・製造したクルマだった。そのためエスパス10周年は、ルノーとマトラの協業10周年祝いでもあったのだ。

 ルノーと組む前のマトラはPSAプジョー・シトロエン傘下におり、同グループの「タルボ」のクルマを作っていた。その中でマトラは、エスパスの源流となるモデル「P18」というミニバンの試作車を開発。タルボの親会社・プジョーに製造の打診を行った。しかしプジョーは諸事情からP18を受け入れることがなかったため、マトラはルノーに話を持ち込むことにした。

 1960年代から「ルノー4」や「ルノー16」といった、多目的車に使えるクルマを数多く生み出してきたルノーらしく、3列シートのピープルムーバー・P18に興味を示した。

 そして、このプロジェクトのみならずマトラごと、自社勢力に引き入れたのである。晴れてルノーグループ入りしたマトラは「ルノー18」という中型セダンのフロントサスペンションなどを流用して、エスパスの開発を進めることになった。そのため、初代エスパスのカタチはP18に極めて近く、モノコックボディ+FRP外板という設計思想も、そのまま引き継がれた。

 その後エスパスは、好評のまま1997年に3代目を迎えたが、すでにFRPで少量生産というスタイルでは需要に追いつかないほど、エスパスは売れるようになっていた。そこで4代目と現行型の5代目は、ルノーがエスパスの製造を担当している。なお、ミニバンと高級大型クーペを組み合わせた変わり種ルノーの「アヴァンタイム」も、マトラ製だったことを覚えておきたい。

 ところで、ルノー傘下に収まる直前のマトラは、「タルボ・マトラ・ムレーナ」というミッドシップスポーツカーを作っていた。だがルノーがマトラを手に入れると、自社のスポーツカー「アルピーヌ」と競合してしまう。

 そのため、ムレーナの製造は1983年で終了している。その後PSAはエスパスの成功を受け、ミニバンの「プジョー 806/シトロエン エヴァシオン」を開発するが、その登場は1994年まで待たねばならなかった。そのほか、マトラはかつてフランスの威信をかけてサーキットで戦っていた……など、マトラにまつわる話は尽きない。また別の機会でお送りしたいと思う。

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