クルマの持ち味を生かし、シンプルにイジるのが今のトレンド
日産のフラッグシップセダンとして君臨するシーマ。数度のモデルチェンジを経て、現在は5代目となるY51系が販売されている。
歴代モデルを見てみると、今でも非常に高い人気を誇るのが初代・Y31系。「シーマ現象」という言葉まで生み出した大ヒット作であり、販売終了から30年近くが経った現在でも伝説的存在として、ネオクラシックカー好きを中心にファンが多い。だから中古車市場での人気も高く、値段がますます高騰している。
クルマの希少性を考えるとノーマルで乗るのも粋だが、高級セダンをカスタマイズする「VIPセダン」のベースとしても一世を風靡した。だから手を加えて他と違いを出したり、自分らしい個性を主張するのも良いだろう。
しかし最近のカスタマイズは、極力ベース車の良さを崩さない「シンプル」なイジり方がトレンドとなっている。過激さを全面に押し出していた90年代のVIPセダンのように、ド派手な色でオールペンしたり竹ヤリのようにハネ上がったマフラーを装着するようなイジり方は減少方向。
最近のシーマのカスタマイズを見ても街中をストレスなく颯爽と走れて、なおかつ年輩の人も気兼ねなく乗れるカスタマイズを施したクルマが多い。その中でいかに自分らしさをアピールするかがカギとなる。
今回はそういう方向性で手を加えたY31系シーマをご紹介したいと思う。カスタマイズの参考になれば幸いだ。
長年の夢だった真紅のシーマで作る、インパル・731Sスタイル
ドレスアップパーツメーカー「Kブレイク」の代表を勤める大林さんは、90年代にいちユーザーとして活躍。当時乗っていたのは14系マジェスタ。セダン雑誌の表紙を飾り、イベントでは立派なトロフィーを獲得するなど、その筋では有名な存在だった。
そんな大林さんだが、実は当初マジェスタではなく、Y31系シーマを購入するつもりだった。雑誌で見たフルエアロのシーマにひと目惚れし、赤にオールペンして乗ると決意。当時は現行型だったため、ディーラーに行って見積もりを取ってもらったほどである。
しかしその時に親が同じシーマに乗っていたこともあって反対され、一旦諦めてマジェスタを買ったという過去がある。
その後メーカーを立ち上げて成功を収めた大林さんは、縁があって極上のY31系シーマを手に入れることができた。その後ボディをシンカシャレッドパールでオールペンして、念願の「赤いシーマに乗る」という夢を実現。
エアロは絶版のインパル・731S。シーマの高級感を崩すことなく重心を低く見せるデザインが人気を博し、今やネットオークションでは高値で取引されている。さらにジャンクションプロデュースの731S専用リップスポイラー、3本足のセントラル20製リアウイングを装着して、VIPセダンの創生期に流行ったスタイルを再現。あの頃を知っている人なら涙モノのスタイルである。
ホイールはシンプルなスポークデザインのOZ・フッツーラ。足まわりは自社の車高調でさり気なくローダウン。斜めに角度を付けたバラムンディ製のマフラーも当時の人気アイテムだ。
ちなみに模型メーカーの青島文化教材社から、このシーマを再現した1/24スケールのプラモデル「大林仕様」が発売されたこともある。