コスワースエンジンを搭載した本気マシンを開発
このグループA対策のシエラが、1986年にリリースされた「シエラRSコスワース」だ。
コスワース製2リッター4バルブDOHCにターボチャージャーを装着したパワフルなエンジンを持ち、車体各部も生産車の段階からレース対策を施すグループAベースモデルとして作られ、1987年のWTC(世界ツーリングカーチャンピオンシップ)に投入された。
ヨーロッパでのツーリングカー選手権は、長らくヨーロッパ選手権が最高峰で、世界選手権のタイトルが冠せられることはなかったのだが、FIAは1987年にヨーロッパの主要サーキット戦に、オーストラリア、ニュージーランド、日本(富士インターTEC)を加えたツーリングカー世界選手権を規定した。これまでのETCも併存したが、主要メンバーはWTCに移行し、実質的にETCの拡大発展版と解釈できるシリーズとなっていた。
フォードはこのWTCにシエラRSコスワースを投入。実際の車両開発、レース運営を担当したのはスイスのエッゲンバーガーで、すでにボルボ240TC(1985年)の成功によりその手腕、実力は高く評価されていた。
シエラRSコスワースも同様に成功しつつあったが、同年の第6戦、チェコスロバキアのブルノ戦から進化型のシエラRS500に車両を変更。RS500はエアロ対策(市販車からの改造不可)を重点的に行った車両でより戦闘力が高められ、デビュー戦となったブルノでは、いきなり優勝を飾る華々しい登場だった。