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いま「マイルドデコ」がキテる! 脱ギラギラ系の「トラック野郎」の愛車が熱かった

デコトラにもシンプルあり! 細かい架装で玄人の心を刺激する「咲心丸(さらまる)」

 ごくごく一般の人にとって「デコトラ」と聞いて真っ先に思い浮かぶ姿といえば、恐らく映画「トラック野郎」(東映)の「一番星号」だろう。華やかな電飾やボディに描かれたペイントなど、パッと見てすぐにそれと判る、お馴染みのスタイルだ。

 ただそんな古き良き架装トラックが、必ずしも万人に受け入れられなかったりするご時世。いわゆる「企業コンプライアンス」の意識が強くなったことで、納入業者や輸送業者にもそれが求められる。それ故あくまでも仕事車である以上、愛車を派手に飾る事は難しくなっているのが現状だ。

 とはいえ「デコトラ」の文化がなくなった訳ではない。アートトラックに興味のない人はそれと判らないような、玄人好みのイジりで愛車を彩る人は今なお多く存在するという。今回はそんなシンプルテイストの、でもこだわりが凝縮された1台をクローズアップしていく。

充実した細部架装で魅了! ハイセンスアート車見参!

 紹介するのは4軸低床のウイングをベースとした「咲心丸(さらまる)」。ちなみにデコトラの世界では、愛車にショーネームを付ける文化が一般的。先に紹介した「一番星号」も同様の理由で名付けられた。

 話を「咲心丸」に戻そう。「一番星号」のそれと比べると、パッと見はかなりシンプル。デコトラに造詣の深い人でなければ地味に見えてしまうかもしれない。しかし、その実、凄まじいほどの造り込みで、唯一無二の存在感を獲得している。

 ベース車は三菱ふそうの大型トラック「スーパーグレート」。2017年春にモデルチェンジされたが「咲心丸」はモデルチェンジ前がベースになっている。

 ノーマルの車両と比べると、ベースの面影がなくなるようなコテコテのカスタマイズではない、というのがすぐにお分かりだろう。

 派手なトラックで仕事ができないと嘆く声が至るところで聞かれるが、なにも無理をして大きな飾りを取り付けなくてもいい。乗り手のセンスと造り手の技術力さえあれば、素人を刺激せずに玄人を唸らせるような、見事なデコトラを築き上げることができる。この咲心丸は、それを証明する一台なのである。 100ミリ前方に出して迫力感を稼いだフロントバンパーは、ダイヤ型の叩き出しを施したオリジナルのリップスポイラーに要注目。丸パイプも美しく曲げられている。他にも角を丸くしたナンバー枠や、ウロコステンレスのマッドガードも印象的。センターキャップや寝台パネルなどの充実したメッキパーツにより、高級感と並々ならぬ美しさを獲得。ラメが噴かれたゴールドのカラーリングも刺激的。 キャブパートは、上段グリルを美しくスムージング。フロントバンパーにはオリジナルのリップを装着しており、ステップにはLEDを内蔵した星抜きをアレンジ。現代における定番的な手法とオリジナリティを組み合わせたような、目を見張る仕上がりを見せている。上下ボカシのフロントガラスや、フロントパネルを彩るバスマークアンドンも大きな効果を上げている。

 角型2段のサイドバンパーが低重心さを演出する腰下部分では、密度の高さと充実した電飾アイテムにご注目。アドブルーのタンクやバッテリーケース、工具箱、スペアタイヤカバーやリアフェンダー間のクリアランスでさえも、夜になると美しい灯を点すのである。「昼と夜で雰囲気の差が出るように」という、Fさんの想いが見事に反映された作風となっている。

ウロコステンレスが光り輝く 腰下部分にも独自の魅力が満載

 ゴールドとシルバーのコントラストと美しいボディメイクで、抜群のプロポーションを披露している「咲心丸」。ウロコステンレスで仕上げた観音扉にはアンドンを埋め込み、チェリーテールを10発アレンジしたリアアンダーなどでリアセクションも抜かりなくアートアップ。ロードクリアランスの少ない低床4軸という制限のあるベースでありながら、とても中身の濃い飾り付けが展開されている。

 化粧板のセンターには作業台のような雰囲気を醸し出す、ダイヤ型の叩き出しを施したウロコステンレスの飾りをセット。これは間接照明となっており、周囲を照らすという意外性満点のアイテムとなっている。

 リアフェンダーの後部には左右をつなぐダイヤ抜きのセンターカバーを装着し、スペアタイヤのカバー部はニックを抜いて光らせるなど、とことんこだわり尽くした一台。見た目以上の仕上がりを誇っていることが、同車における最大のアピールポイントなのである。

 角型2段のサイドバンパーと密度の高い腰下部分が重厚感を演出する。ウロコと鏡面で製作されたリアフェンダーや、星マーカーを取り付けた後輪2軸間のワンオフカバーも堪らないほど魅力的である。 マフラーのエンドパイプは、ウロコ仕様。出口部分のステーは角パイプにダイヤ抜きのフラットバーを組み合わせた、まるでミラーステーのようなデザインで仕上げられている。要注目のアイテムだ。

「なるべく、誰もやっていないようなことをしようと。架装屋さんの社長と相談しながら、ここまでやってきました。これからも細かいところに手を加えていこうと思っています」。数々の名車を築き上げてきた匠が営む名工房と、アートに心血を注ぐFさんのタッグで仕上げられてきた咲心丸の、次なる一手にも大いに期待したい。

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