レース好きなら知っておきたいタイヤ用語
レースの世界は日進月歩。そのためレース中継の解説を聞いていると、聞き慣れない新しいレース用語を耳にすることも……。何となくはわかるが、いまひとつはっきりしない今どきのレース用語のうち、とくにややこしいタイヤに関するレース用語を紹介。
今シーズンはコロナ禍の影響で主なレースの開幕戦が遅れしまったが、7月に入りF1も開幕。国内でもスーパーGT(無観客)もはじまった。これからのシーズン本番に向けて、いまのうちに専門用語への理解を深めて、レースの観戦・応援を楽しもう。
1)ウェア
タイヤの摩耗のこと示す言葉で「タイヤウェア」ともいう。市販車のタイヤにもついている、摩耗限度を知らせスリップサインのことを『ウェア・インジケーター』とも呼んでいる。
2)オプションタイヤ/プライムタイヤ
レースで使用するタイヤのうち、よりソフトなタイヤをオプションタイヤという。反対にハード側のタイヤはプライムタイヤ。ソフト・ミディアム・ハードといった分け方もある。
3)ゲージ/シン・ゲージ
タイヤトレッド面にあるラバーの厚みのことで、2018年シーズンからF1では、従来よりもトレッド厚を0.4mm薄くした”シン・ゲージ”(thinner gauge)タイヤを投入。これは、ラバーの厚みを薄くすることでラバー内部の発熱を抑制し、ブリスターの発生しづらくするのが目的だった。
4)グレイニング
グレイニングとはタイヤの表面が毛羽立つことを意味する。タイヤに熱が入る前にハードな走りをすると発生しやすい。タイヤが適正な作動温度領域に入っていないということは、それだけラバーの粘着性が弱くクルマがスライドしやすくなるため、トレッド表面にグレイニングが発生する。
グレイニングが起こるとタイヤの表面が荒れるので接地性が悪くなるので、グリップが大幅にダウンし、ラップタイムも落ちてしまう。
5)サーマルグラデーション
熱によるタイヤの性能劣化のことで、いわゆる「熱だれ」のことを意味する。タイヤの熱の入れ方をドライビングによってコントロールすることは、「サーマルコントロール」と呼ばれる。
6)作動温度領域
タイヤが本来の性能を発揮する表面温度の範囲のこと。2019年のF1の場合、5種類あるドライタイヤの作動温度領域は、C1が110~140度、C2が110~135度、C3が105~135度、C4が90~120度、C5が85~115度となっていた。コンパウンドはC1が一番ハードでC5が一番ソフトなので、ソフトタイヤほど作動温度領域が低く、ハードになるにつれ作動温度領域が上がっていく。
7)スクラブ
スクラブとは新品タイヤのナラシのことで、タイヤの皮むきともいう。スクラブを終えたタイヤは、グレイニングが起きにくかったり、天気が下り坂のときなどでも温まりやすかったり、タイヤの安定感が出しやすくなるが、そのために新品タイヤを数周走らせることになるので、一長一短でもある。
8)デグラデーション
簡単にいうとタイヤの摩耗による性能低下のこと。タイヤは周回するごとにその性能が低下していく。そのため、「このサーキットの1周あたりの“デグ”は、コンマ2秒」といった具合に使われる。
9)ブリスター
タイヤの温度が上昇しすぎて、表面に気泡ができること。タイヤ内部が熱で沸騰してしまうのが原因。ブリスターができるとグリップ力が落ちて、タイムも当然落ちてしまう。
10)マーブル
コース脇に散らばるタイヤカスのこと。レース周回が増すごとに増えていくので、レース後半にオーバーテイクなどでレコードラインを外すと、マーブルがタイヤの表面にたくさん付着し剥がれるまで、一時的にグリップがダウンする。そのため、追い抜きをかけるクルマも抜かれるクルマもマーブルを拾わないように気を遣う。
余談だが、日本でF1が開催されている鈴鹿サーキットとツインリンクもてぎで販売されている人気のお土産「タイヤカスさきいか」は、このマーブルを模した黒いさきいか=食品だ。
11)ワーキングレンジ
タイヤの作動温度領域のこと。レース用タイヤはこのワーキングレンジが狭いので、適正な温度領域を5℃でもはずれると、期待したグリップが得られなくなるので、路面温度や気温の変化には神経を使う。
タイヤに関する用語だけでも結構な数があり、ややこしく思えるかもしれない。逆にいえば、それだけタイヤがレースの勝敗を左右するということでもあるので、タイヤに詳しくなることで、ちょっとマニアックなレース観戦を楽しんでほしい。