9代目キャリイ(1991-1999年)
この代から新規格専用のボディを採用したキャリイ。ベースグレードはシールドビームの丸型ヘッドライト、それ以上のグレードは横に長い角型のハロゲンヘッドライトを採用。マイナーチェンジ後のモデルはフロントのコーナーランプをクリアからオレンジに交換した程度で、小変更に留まった。
エンジンは先代の最終型に引き続き、F6A型を搭載。モデル末期の1997年にはSOHCターボエンジン車が追加されたが、販売台数はそこまで多くなく、中古車市場にはあまり出回っていない。またこの代から、3速オートマチック車も設定された。ホイールのPCDは長らく114.3だったが、1995年のマイナーチェンジで100に変更。ワゴンRなど他のモデルも順次PCD100に変更され、軽自動車のスタンダードとなっている。
変わり種のモデルと言えば、エブリイと同時期に販売されたキャリイクラシック。当時はヴィヴィオビストロなどレトロ仕様の軽自動車がブームとなり、その流れに乗って開発した1台である。クロームメッキのエプロンが付いたカラードバンパーや大型のクロームメッキグリル、メッキのベゼルが付いた丸型のライトでクラシカルな雰囲気を演出していた。
10代目キャリイ(1999-2013年)
再び軽自動車の規格が改定された直後、1999年1月に登場した10代目キャリイ(DA52T)は、ひと回り大きなセミキャブオーバータイプのボディとなった。先代と比べると全長プラス100mm、全幅プラス80mm大きくなっているが、燃費などに影響が出ないように軽量化に工夫した設計となる。荷台幅も1410mmに広がり、実用性が向上した。
新開発のSOHC6バルブターボエンジンを搭載したモデルも加わり、より扱いやすくなった(2000年に廃止)。しかしキャビンが大きくなったことで荷台長が短くなり、同年11月にキャビンを短縮して荷台長を稼いだ大型荷台仕様車が設定された。
2001年の一部改良では、エンジンがF6A型からオールアルミDOHCのK6A型に変更され、型式はDA62Tに。軽トラックでは初となるグリーン税制の対象となった。最小回転半径は4.1mから3.8mに縮小されて取り回しが良くなった。
2002年5月のマイナーチェンジでは型式がDA63Tに。キャビンを大幅に変更して全体的に角張ったデザインとなり、ビジュアルはフルモデルチェンジに近いがあくまでも10代目のマイナーチェンジという扱い。荷台も新設計され、当時の軽トラでは最長となる荷台フロア長2030mmを実現。
2005年には農家などのニーズに応え、小回りが効くようにホイールベースを短くしたモデルを追加(DA65T)。フロントのホイール位置が後方にずれたことで足元の空間に余裕ができ、乗降性も向上した。
11代目キャリイ(2013年-)
2013年9月、14年振りにフルモデルチェンジを行った11代目キャリイは、一部改良を重ねながら現在も販売を続けている。全モデルがショートホイールベースとなり、キャビン内の空間を広くしながらも当時のクラストップである荷台フロア長2030mmを実現。荷台床面地上高も650mmに抑え荷物の積み降ろしをラクにするなど、快適性と実用性を高次元で両立させている。
外観は透明度が高いマルチリフレクター式のヘッドライト全車に採用。後に軽トラックでは初のディスチャージヘッドランプ(HID)を装着したモデルが追加された。
エンジンはすでに他のスズキ車に採用されていたR06A型を、キャリイで初めて搭載。軽量化と燃費の向上を両立させた。トランスミッションは当初5速MTと3速ATの2タイプを用意していたが、MTとATの良さを兼ね備えたAGS(オートギアシフト)搭載車を2014年8月に追加。選択肢が広がった。
11代目のトピックとしては、2018年5月にキャビンを後方に拡大した「スーパーキャリイ」が登場したこと。ダイハツ・ハイゼットにも大型キャビン仕様の「ジャンボ」が設定されて大好評だったことから、満を持してのデビューとなった。運転席のリクライニング角度とシートスライド量はジャンボよりも余裕があり、全車ハイルーフ仕様のため頭上のクリアランスも十分。普段使いも快適なモデルとなっている。
最近ではデュアルカメラブレーキサポートの採用など安全装備も充実させ、時代のニーズに合わせて着々と進化を続けるキャリイ。これから先もその名が継承されていくことは間違いないだろう。