寒冷地仕様には場所を限らない普遍的メリットも
クルマのカタログの最後のページは装備表となっており、その中には寒冷地仕様というオプションがあることが多い。寒冷地仕様はその名の通り、冬場の気温がマイナス10度以下になることが珍しくない寒冷地での使用に対応した仕様で、装備なども加えられたものである。
冬場の厳しい状況をクリアできる手助けオプションではあるが、性能を向上させている項目は寒冷地ではなくてもメリットがあることも。
ヒーター系パワーアップで余裕がある寒冷地仕様
寒冷地仕様の内容を具体的に挙げていくと、まずいちばん違うのは、冷却水の濃度アップである。
エンジンを冷やす冷却水にはLLC(ロングライフクーラント、不凍液)がミックスされており、標準仕様の濃度30%だとマイナス15度程度で凍結することになる。これが原因で最悪は、缶ビールを冷凍庫で凍らせたようにふくらみラジエーターが破裂する恐れがある。
そのため寒冷地仕様ではLLCの濃度を50%まで濃くし、マイナス35度程度まで凍結しないようになっている。
その他にもいろいろあるが、おおまかに向上させているものが、ヒーターの性能、セルモーターの性能、バッテリーの容量アップ、などだ。
また追加されている装備としては、冬期の屋外駐車後などで素早く視界を確保するためなどにも役立つ、ドアミラーのヒーター、フロントガラスの熱線、ウィンドウウォッシャーの容量アップ、雪に対応したワイパーモーターのパワーアップといったあたりが代表的なところだ。
さらにクルマによっては寒冷地仕様になると、道路に巻かれる融雪剤、凍結防止剤のボディへの影響を減らす防錆の強化、オルタネーター(発電機)の容量アップ、シーリングのゴム部品の強化などが施されていることもある。
寒冷地仕様の価格はクルマによってかなり差があり、1万円から4万円といったところだ。
寒冷地でなくても利用価値のあるオプションも
寒冷地仕様は雪国などで必要であることはもちろんだが、昨今の関東地方のように「冬場強烈に冷え込むことが珍しくない」という地域なら、役立つ点も多い。冷却水の濃度アップは不要にせよ、ドアミラーのヒーター、フロントガラスの熱線のような装備が加わるだけでも、湿った曇りなども取りやすくもなり、視界も開け有難い。
また夏の炎天下であっても寒冷地仕様車を使用しても問題はない。バッテリーの容量がパワーアップされている寒冷地仕様であれば、エアコンの電力消費負担も助けてくれる、寒い地方での暖房が効くようにアンダーパネルなどでの気密性の高さが備わっているわけで、裏を返せば車内冷気を保持するメリットでもある。
リヤシートへのヒーターを誘導するダクトもあれば夏にも効力を発揮することになる。融雪剤からボディを守る防錆の強化処置などがなされていれば、海辺の潮風などの影響がある地域でのクルマ使用には効果的だろう。
新車を買うのなら一応寒冷地仕様で加わる装備内容があるかを確認してみたい。特にトヨタはWebに詳しく掲載されてもいる。寒冷地仕様の内容に対して、その差額がリーズナブルに感じるなら、寒冷地に住んでいない人であっても選ぶ価値はあるだろう。