気になるレクサスの「F」とは
BMWがスポーツモデルやスポーツグレードに「M」の一文字を使っているのは有名だが、レクサスのスポーツイメージを担うアルファベットは「F」となっている。
レクサスに「F」という文字が登場したルーツを辿ると、2005年1月。世界三大ショーのひとつ、デトロイトモーターショーにピュアスポーツモデルのコンセプトカー「LF-A」を出展したときが始まりだ。
当時、この車名は『Lexus Future Advance』に由来すると説明されていた。そして「LF-A」はニュルブルクリンク24時間耐久に参戦するなどリアルなモータースポーツも利用して開発が進められていった。
「F」は富士スピードウェイになびいていった
その後、市販車でふたたび「F」の文字を見ることになったのは2007年秋だ。LF-Aよりひと足早く5.0L V8エンジンを搭載した「IS F」がローンチされた。
このとき「F」という文字が示すのは日本のモータースポーツにおける聖地「富士スピードウェイ」であり、またトヨタの開発拠点である「東富士研究所」にも由来すると説明された。現在では「F」のルーツは富士スピードウェイの頭文字というのがレクサスの公式見解となっている。
車名の後ろに「F」が付くモデルは、IS FにつづいてGS F、RC Fと登場したが、いずれも「2UR-GSE」という同じ型式を持つV8エンジンを搭載している。
もともとはレクサスのフラッグシップであるLSのハイブリッド用エンジンをスポーツユニットに改良したもの。最新バージョンでは354kW(481PS)の最高出力を7100回転で発生、排気量を感じさせない高回転エンジンとなっているのが特徴だ。
つまり、現時点での流れからいえば「F」を名乗るには、このエンジンを積んでいる必要があるといえる。なお、「2UR-GSE」を搭載しているにもかかわらず「F」を付けないモデルもある。それがフラッグシップクーペ「LC500」だ。
そうしてレクサスにとって「F」というアルファベットは“操る楽しさ”の象徴となった。それも富士スピードウェイをはじめとしたサーキットで鍛え抜いたリアルスポーツの世界と直結したスポーツ性という風に位置づけられている。
レクサス「F」のピラミッド
レクサスの「F」を名乗るクルマは3段階のピラミッドで構成されている。
頂点となるのが車名自体に「F」を含むモデルで、究極の走りを体現した「F」の頂点といえるもの。もっとも、その条件を満たすのは、2010年から2012年にかけて500台限定で生産されたLFA(市販版ではハイフンがなくなった)の一台しかない。
2段階目となるのが「車名+F」で表記される一連のラインナップで、これらはパワートレインはじめエクステリアやインテリア、もちろんシャシーにも専用パーツを使うことで、走る喜びを際立たせたプレミアムスポーツと位置づけられる。
そして、レクサスFの入門といえるのが「Fスポーツ」だ。Fのエッセンスを継承しながら、サーキットから市街地までどこでもスポーツドライビングが楽しめる“ラグジュアリーパフォーマンス”がコンセプトだ。現実的には、サスペンションやエクステリア、インテリアなどをブラッシュアップしたスポーティグレードと捉えると、理解しやすいだろう。
2020年6月現在、レクサスの国内向けラインナップで「Fスポーツ」が設定されているのは、LS、GS、ES、IS、RC、CT、UX、RX、NXの9車種。逆に言うとラグジュアリークーペであるLCと、フラッグシップSUVのLX以外には「Fスポーツ」が用意されているというわけだ。
限られたモデルだけでなく、「Fスポーツ」があることによってレクサスの考える“ラグジュアリーパフォーマンス”を多くのユーザーが味わうことができるのだ。