初見参の奥伊吹モーターパークは異例の無観客開催
モータースポーツの世界にも暗い影を落とし続けている新型コロナウイルス。プロドリフトのシーンも例外ではなく、トップカテゴリーの「D1GP」も2020シーズンの開幕が遅れに遅れて、ついに7月24日、滋賀県・奥伊吹モーターパークにて無観客で開催された。
従来は、初日が練習走行と公式予選、翌日に単走ファイナル&追走トーナメントとなるのがパターンだが、スケジュールが二転三転したため、前日の23日はD1GPの登竜門となる「D1ライツ」が併催。これによりD1GPも1DAYで練習走行、公式予選、単走決勝、追走トーナメント強行という超過密スケジュール。
しかもD1ライツ関係者と会場内が密にならないよう、ライツの決勝が終わり、搬出が片付いてから前日夜間のピット設営。深夜まで作業しているチームもいたほどだ。それでも、いよいよ開幕するという高揚感に会場は包まれていた。
3台ものGRスープラがD1にエントリー
今でもシルビアとツアラーVが幅を利かすドリフトの世界だが、今年のD1GPには3台の新生スープラがエントリーしてきたので紹介しよう。
Team TOYO TIRES DRIFT-1
昨年から引き続き参戦は、3UZのV8エンジン+ツインターボで1000psを発生する、川畑真人(Team TOYO TIRES DRIFT-1)。
ペダル位置やシート位置も本人の希望に合わせて「リロケート」済み。たとえ1000psでも、まだまだマージンを取ったパワーに抑えているというから驚きだ。
FAT FIVE RACING
同じく昨年からスープラを投入している齋藤太吾(FAT FIVE RACING)は、2JZベースにHKSがチューンアップしたマシン。 残る1台も齋藤太吾のチームから参戦の松山北斗。
以上の3台、いずれもエンジンは90スープラのものではないが、もはや800~1000psが当たり前になっているハイパワー時代のプロドリフトの世界においては、耐久性に優れたトヨタの2JZを中心に、GT-RのV6や、さらにゆとりのあるV8でなくては勝てないというのが正直なところ。
そしてもう一つがドリフトに不可欠なコントロール性。昨年は名手・川畑や齋藤でも90スープラの挙動に苦戦するところが見られたが、それぞれセッティングも煮詰まって、万全に近づいてきたようだ。
スープラ3台揃ってベスト16へと進出
奥伊吹の特設コースは、スキー場の駐車場を使っているだけに、それほど広いものではない。
おまけに公式予選序盤から降り出した雨で、コースはウエット。こうなるとドライ時よりもスピードレンジが10km/h以上下がり、ハイパワーの優位性が出にくくなる。まるでスケートリンクの上を走っているようなもので、ドライバーの技術もさることながら、マシン自体のコントロール性能が問われるところ。
そんな中、スープラは3台とも予選を通過(川畑7位、松山8位、齋藤15位)し、追走トーナメントへ。その頃にはさらに雨も激しくなり、コース内に水たまりができる極悪コンディション。
松山はパワー差を生かせずベスト16敗退、齋藤もミスがあって同じくベスト16まで。残る1台の川畑号は、横井昌志(NANKANG TIRE DRIFT TEAM D-MAX)、TOYOTIREチームメイトの藤野秀之という、近年のシリーズチャンピオン経験者を次々と撃破。
ついに迎えた決勝は、暴れん坊の日比野哲也(SAILUN TIRE SUNRISE)が相手だが、川畑らしい完璧なマシンコントロールを見せ、見事に初戦を優勝で飾り、実にスープラとしても初のD1GP優勝を成し遂げた。
今後エビスや筑波、オートポリスなど、パワーを存分に発揮できる広いコースでは、ますます新型スープラの躍進を見ることができそうだ!