いまライトユーザー層からも熱い視線が注がれる
1984年11月に発売されたランドクルーザー70は、先代の40に連なるヘビーデューティ系のモデル。数ある「ランクル」の中でも本流のど真ん中を行く正統派で、日常ユースも配慮された60や80とはまた違う、タフで無骨なムードを持つ。
ランクル70はとても息の長いモデルだ。国内では2004年7月まで20年間にわたって販売され、生産終了後も2014年には発売30周年を記念して1年間限定で復活。発売初月に3600台以上を受注するというヒットを飛ばした。なお、オーストラリアや中東地域といった海外では、この70が今でも新車で販売されている。※本記事では便宜的に2004年までのモデルを「旧70」、30周年記念モデルを「再販70」と呼称する
よってランクル70といっても、大きく分けると2種類ある。いずれも人気は衰え知らずで、それどころかさらに盛り上がってきた感すらある。ガチなランクルファンからは反感を買いそうだが、昨今のアウトドアブームの影響もあり「角張った昔のランクルに乗ってアウトドアを楽しみたい」というライトユーザーの支持がジワジワ増えているからだ。
そこで今回は、ビギナーが初めてランクル70を買うなら旧70と再販70のどっちを選ぶべきなのか? それぞれのメリット・デメリットは? といったことを調査。クロカン四駆&アウトドアに強いカスタムショップ・C.D.Pシズオカの小倉代表に詳しく話を聞いた。小倉さんは100系→200系と乗り継いだ後、再販70に乗り換えたという経歴を持つ。
丸目でクラシカルな旧70と角目で今っぽい再販70
まずは旧70と再販70の違いから。それぞれ設定されているボディタイプが異なる。消防車両や海外向けにはロングやスーパーロングなどもあるが、国内で一般向けに販売されたものは以下の通り。
【旧70系 1984年~2004年】※()内は型式
・2ドアショート(70/71)
・2ドアミドル(73/74)
・4ドアセミロング(76/77)【再販70 2014年~2015年】
・4ドアセミロング(76)
・ダブルキャブピックアップ(79)
いずれも旧70はディーゼル、再販70はガソリン(ハイオク)仕様というのが大きな違い。またサスペンションはいずれも前後リジッドアクスル式になるが、スプリングについては、旧70の前期(~1999年)は前後ともリーフ。旧70の後期と再販70はフロントがコイルでリアがリーフという組み合わせになっている。
「ルックスも異なります。旧70のフロントマスクは、四角い枠の中に丸目のヘッドライトとグリルが収まるコンパクトなデザイン。フロントバンパーやフロントフェンダーの形状は40ランクルの流れを汲んでおり、いかにも昔の四駆らしい無骨な雰囲気があります」と小倉さん。
「一方で再販70はヘッドライトが角目の横長タイプ。エンジンサイズの関係でコーナーいっぱいまで広げられており、ワイド感が出ています。それに伴ってグリルも力強く大型化され、クラシカルな旧70に比べると今っぽい印象になりました。顔だけ見るとまるで別のクルマです」。
その他、再販70は旧70には装備されていなかったABSが付き、SRSエアバッグも標準装備になる。また旧70には5速マニュアル/4速オートマがあったが、再販70は5速マニュアルのみ、といった違いもある。
一つ注意点を挙げておくと、再販70は2014年/2015年式になるが、同年代の国産車のように安全装備は充実していない。上記のABSとエアバッグがせいぜいで、トラクションコントロールや横滑り防止装置はないし、当然自動ブレーキも搭載されていない。
ちなみにランクル70の派生モデルとして、「ライト系」と呼ばれるランクル70ワゴン(1984年~1990年)と、その後継の70プラド(1990年~1996年)がある。ランクル70はすべて貨物車登録(1または4ナンバー)なのに対し、70ワゴン/70プラドは基本的に乗用登録(3ナンバー)となる。
サスペンションは日常使いを考慮して前後コイルスプリング式となり、エンジンもガソリン/ディーゼルの両方を設定。ボディは2ドアショート(71)と4ドアセミロング(78)が用意された。70ワゴンはかなりレアなので探すのも難しいが、70プラドは大ヒットしたので中古車流通量も比較的多く、人気も高い。
ランクル70の中古車価格は決して安くないが…
さて気になる中古車相場だ。ここ数ヶ月はコロナの影響でやや下がり気味ながら、大きな値崩れは起こしていない。
「旧70後期(1999年~)の4ドアセミロングで250万円~300万円、再販70の4ドアセミロングで300万円~350万円あたり。両車の差は50万円ほどで、年式から考えるとその差はかなり小さい。15年落ち以下のクルマと、5~6年落ちのクルマが50万円くらいしか変わらないということですからね」と小倉さん。
参考までにそれぞれの新車価格を紹介すると、旧70後期・4ドアセミロングは約260万円~325万円、再販70の4ドアセミロングは360万円。驚異的なことに現在の中古車相場と同価格帯だ。いかにランクル70が人気なのかよく分かる。
いずれにせよ、旧70も再販70も予算が100万円、200万円レベルでは難しい。「キャンプ場で目立てるから欲しい」と思っても、そうやすやすと買えるクルマではないのだ。
しかしランクル70は耐久性の高さがウリ。オーストラリアの砂漠で数十年酷使されても音を上げないタフネスっぷりこそ真骨頂である。普通の中古車であれば「走行10万kmオーバーはやめておこう」となっても、ランクルなら「10万km? ちょうど慣らしが終わったところか」というのがファンの間では常識(!?)なのだとか。
「基本的に10万kmオーバーもまったく問題ありません。そもそもランクル70で10万km以下はめったにありませんしね。たとえ30万km~40km走っていたとしても、定期的に適切なメンテナンスを受けているタマであれば、まだまだ全然乗れると思います」。
広くて使い勝手のいい4ドアセミロングが狙い目
さてどっちのランクル70を狙うか。ディーゼルがいいなら必然的に旧70になるし、ガソリン車が欲しければ再販70しかない。あとは顔の好みや年式の新しさ/古さ、そしてボディタイプで候補を絞っていく感じになる。
ファミリーで使ったり車中泊を考えているなら、4ドアセミロングがおすすめ。今どきのミニバンなどに比べると決して居住スペースは広くないが、後席に人を乗せた上で荷物もしっかり積める。ランクル70の中では最も中古車流通量が多く、旧70からも再販70からも選べるのがメリット。
2ドアショート/ミドルもそこそこタマ数はあるが、室内が狭いので4~5人で出かけるには向かない。特にショートの後席はオマケ程度と考えた方がよく、折り畳んで使うのが基本。1~2人でアウトドアを楽しむ用途ならいいだろう。
ダブルキャブピックアップは、ピックアップ好きには堪らないスタイリングが魅力だ。しかしホイールベースが3180ミリと非常に長く、取り回しは悪い。
最小回転半径は驚異の7.2メートル。4トントラック並みだ。正直、ビギナーにはおすすめできない。
頑丈なランクルとはいえ旧70はトラブル例もあり
旧70と再販70では年式にかなり開きがある。最低でも10年、最長では30年違う。旧70を選ぶ際に一番心配になるのは「古いけどホントに大丈夫?」というところだろう。
「旧70は当たり外れが大きい。パッと見はキレイなのに中身はボロボロということもあります。興味本位で買ったはいいけど、トラブルが多発してどうにもならない、と当社に駆け込んで来るお客様もけっこう多いんです」と小倉さん。
なお、これまでC.D.Pシズオカに持ち込まれた旧70のトラブル実例は以下の通り。
◆ラジエター不良でオーバーヒート。シリンダー交換になった
◆フロアが錆び、座席がめり込むように下がってしまった
◆燃料タンクのマウントが劣化し、タンクが落下した
◆突然クラッチが切れなくなった
◆ショックアブソーバーの下半分が腐り落ちていた
こういったクルマでは修理費用がかなり掛かる。1つ部品を交換すればOKというものは稀で、たいていは周辺やその他も含めてレストアのように大規模な補修が必要になるからだ。
「きちんと乗れるようになるには、車両代以上のお金が掛かるのも珍しくない。安い中古車がダメというわけではありませんが、たとえば200万円で買って修理に150万円掛かった場合、最初から程度のいい300万円のタマを買ったほうが良かった、ということもあります」。
それでも直ったならまだいい方だ。旧70は販売終了から15年以上が経過しており、純正部品に欠品が出始めている。再販70用があるじゃないかと思うかもだが、前まわりやエンジン関係など、旧70と再販70で違う部分のパーツは共用できない。そうした場合は中古部品や他車種用部品、アフターの汎用品などで何とか対応できれば……という感じになる。
「しかしどうにもならないモノもあり、たとえばサンルーフのゴムパッキンなんかは新品が手に入らず、中古品なども使えない。ココが劣化して雨漏りするようになると、根本的には直せません。最終的には無理矢理コーキングして、サンルーフを開けられないようにするしかないです」。
ということで、旧70を選ぶなら慎重になる必要がある。じっくり検討するのはもちろん、信頼できる店で買うというのも重要だ。一般的な販売店よりも、四駆系に詳しい店の方が何かと心強い。評判や実績などもチェックし、購入後も長く付き合っていけそうなところを探そう。
総合的に考えるとビギナーには再販70がおすすめ
こうした古いクルマ特有のトラブルも、昔ながらのランクル乗りなら「まあ仕方ないよね」くらいの感覚で向き合えるかもしれない。だが、今どきのクルマしか乗ったことのない人にとっては、いろんな意味で刺激的だろう。それを新鮮な気持ちで楽しめるか、それともウンザリしてしまうのか。
「ランクルでキャンプに行ってみたい、くらいの感覚で買うなら、間違いなく再販70の方がいいでしょう。年式が新しいから当たり外れが小さく、経年劣化によるトラブルもまだ少ない。初期投資は少し嵩みますが、購入後に追加でお金が掛かるリスクは低いので、トータルでは旧70より安く済むことが多いです」。
エンジンがガソリンなのも小倉さん的には高ポイントだとか。
「車中泊する時に、ディーゼルでエンジンを掛けたままだとうるさいんです(笑)。この辺は個人差あると思いますけど、自分としてはガソリンエンジンじゃないと無理でした。あとはパワーについても、再販70の4リッターV型6気筒は不足なし。2速発進も余裕なディーゼルのトルクも確かに魅力ではありますが、それが生きるのは主にオフロード。日常使いメインならガソリンで十分でしょう」。
ということで、結論は再販70に軍配。ただリスクを承知の上で楽しめるという人なら、旧70を選ぶのもアリだろう。うまくいいタマを買うことができれば、末永く付き合える1台になる。
【取材協力】
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