荷物をガンガン積めてコスパも最強なアウトドアツール
スズキ・エブリイ、ダイハツ・ハイゼットカーゴといった、いわゆる軽ワンボックスバン。仕事クルマとしての性能は改めて説明するまでもないが、その広いラゲッジスペースや耐久性に優れたボディは、ビジネスのみならず「遊びクルマ」にも向いている。感覚的にはハイエースのスモールバージョンといったところか。
特にキャンパーたちからの支持率が高い。ここ最近はコロナの影響で難しかったりするが、軽バンならソロはもちろん、家族や仲間たちと一緒にもキャンプを楽しめる。軽自動車ではN-BOXやタントなどのスーパーハイト系も確かに広い。だが4人フル乗車になるとほとんど荷物は積めないのに対し、エブリイやハイゼットカーゴならそれでも90センチ前後の荷室長、1000L以上の容量を確保できる。
維持費が安いのも魅力。軽貨物(自家用)の自動車税は5000円と、乗用軽自動車の半分以下。それもハイエースバンのような毎年車検ではなく2年に1度だ。燃費もそこまで悪くはなく、エブリイのJC08モード燃費は15.4~19.6km/L、ハイゼットカーゴは16.0~18.8km/L。ミッションや駆動方式にもよるが、実燃費は平均14~15km/hくらいになるだろう。
軽貨物だから快適装備は控えめながら、グレードによっては自動ブレーキが付くなど安全装備も充実している。価格は最廉価で95~96万円、最上級でも150万円強と、今どきの乗用軽自動車たちに比べると割安。そして飾り気がなく無骨な見た目も、ちょっと手を加えるだけでお洒落に見えたりする。軽バンでもキャンプ場映えするカスタマイズが可能なのだ。
という感じで、スペックを見ると魅力的な軽バンだが、本当にキャンプでは「使える」のだろうか? 今回はその辺を調査すべく、実際に軽バンをカスタムしてキャンプを楽しんでいる2人のユーザーに話を聞いた。彼らのキャンプライフをその愛車と共に紹介していこう。
週2でソロキャンを楽しむ車高短キャンパー
24年式のDA64Vエブリイをキャンプ用兼仕事用として使っているMさん。ここしばらくはコロナと長梅雨の影響でご無沙汰気味だが、以前は週2ペースで軽バンキャンプを楽しんでいたという。
「思い立ったら即キャンプへ。夕方からでもふと行きたくなったら出かけます。基本はソロで、家族と一緒に行ったのは数回くらいしかない。場所も設備の整ったオートキャンプ場ではなく、トイレしかないようなところに行きます。他のキャンパーたちが少なく開放感がありますし、今だと密にならないのもいいですね」。
エブリイをキャンプに使う理由は、やはり維持費の安さと使い勝手の良さが決め手。もともと軽自動車が好きで、これまでワゴンRや軽トラをカスタムして楽しんできたという経緯もある。このエブリイは「なるべくお金を掛けない」がコンセプトで、ドレスアップ的な要素はほとんどナシ。むしろ商用車独特のチープさを逆手に取り、レトロっぽい雰囲気に見せている。
そんなスタリングの中で、車高だけは妙に低い。キャンプに使うなら、きっとローダウンはしない方がいい。不整地に弱くなるからだ。反対にリフトアップならば理にかなっているといえるが、一体なぜ落としているのか。
「単純にローダウンが好きなんです(笑)。近ごろリフトアップが流行っているのは知っていますけど、自分はどうしてもあのスタイルを受け入れられない。デコボコ道だと腹下を擦ったりしますが、まあ承知の上でやってますから。他人に迷惑を掛けない範囲で車高短キャンパーを楽しんでます」。
ホームセンターの材料でルーフラックを自作
ソロキャンには十分以上の積載スペースを誇るエブリイ。そこにルーフラックを装着してさらに積載量アップ。ベースキャリアは市販品を使うが、ラック部分はスチールと木材を組み合わせたオリジナル品だ。素朴なデザインがこのエブリイによく似合っている。
「ベースはL字とフラットの鉄材を組み合わせ、屋根の幅ぴったりに設計。ベースキャリアにボルトでがっちり固定しています。囲いは鉄骨で作り、床面は杉の板張りに。腐らないようニスで防水処理も施しました」。
材料はすべてホームセンターで安くゲット。タープとして使っているのもホムセンで売られているブルーシート(青色ではないが)だ。オリジナルのロゴをカッティングシートにして貼り付け、ブランド品ぽく見せている。ナイス工夫。
何かと便利なカートもアストロプロダクツ製ながら、本体をクルマのボディと同色に、ホイールも分解して愛車と同じ色に塗装。さり気なくオリジナルのロゴもあしらうなど芸が細かい。
作業は基本DIY。溶接機も持っており、スチールの棒をくっつけてテーブルの足などを作れる腕はあるが、ルーフラックの溶接は強度や安全性も考慮してプロに依頼。「仕事で背の高い物を積んだりするので、荷室にベッドキットや棚は置けない。だからルーフラックは重宝してます」。
普段のキャンプ用の荷物はこんな感じです
ソロキャンプ時の主な荷物は、タープ・テント・テーブル・寝袋・大型のクーラーボックス・焚き火台・薪・ダッチオーブンや鍋などの調理器具・食器類・照明器具など。
「車中泊の時はフロアにマットを敷いて寝袋に入ります。以前、家族4人(大人2人、高校生、小学生)で車中泊に挑戦してみましたが、何とか寝られましたよ。ちょっと狭かったですけどね」。
行きつけのキャンプ場は灯りが乏しいということで、照明器具は多めに持っていくそう。「ランタン3つに、LEDライトもいくつか。日が落ちると本当に真っ暗になるので、照明が足りないと料理もできない。食事も暗いと味気ないし、SNS映えする写真も撮りにくい(笑)。照明は大事です」。
味もSNS映えも抜群。料理はお洒落がモットー
キャンプの楽しみといえば外で味わう食事。たとえカップラーメンでもいつもよりグッと美味しく感じるものだが、Mさんはきちんと料理を作る。それが実にお洒落なのだ。
「一番得意なのはローストビーフかな。1時間半くらい掛けてダッチオーブンで作ります。泊まりの場合は、着いたらまずビールを開けて、ずっと飲みながら料理している感じです」。
他にも鮭の炊き込みご飯やパエリア、ローストチキンなどもよく手掛け、写真を撮ってSNSにアップするのも習慣になっている。ご覧の通り、いずれもプロ顔負けのクオリティだが、実はMさんは飲食店の経営者。「店でもダッチオーブンを使ったキャンプ料理みたいなメニューをいくつか用意しています」。
Mさんのお店はいつも行くキャンプ場から数分の距離。仕事を終えてそのままエブリイでソロキャンプ、ということもよくあるそう。「もう生活サイクルの一部ですね。家族にも理解してもらっています」。
車高短のプレオから遊べるサンバーバンに乗り換え
愛車は29年式のスバル・サンバーバン(ダイハツ・ハイゼットカーゴのOEM車)。今年はコロナの影響でほとんど行けてないが、普段はのんびり軽バンキャンプを楽しんでいるというIさん。
「キャンプは子供の頃に行ったきりでしたが、アニメの影響もあって2~3年前からまた始めました。もともと釣りは好きでやっていたので、そこにキャンプが加わったという感じです。家族と行くことは少ないかな、妻は虫が苦手なので…。逆に息子は虫大好きなので、連れてけ~という感じですけど」。
ちなみに前愛車はスバル・プレオで、ほとんどストロークすらしない車高短仕様だった。それでも果敢にアウトドアにチャレンジしていたが、「やっぱり入れない場所も多く、不便だったので」サンバーバンに乗り換えたという。
得意のDIY技は刷毛を使ったオールペン
カスタマイズにも力を入れており、何と全塗装も自分でこなす。それも一般的なスプレーガンではなく、刷毛やローラーで塗っているというから面白い。以前はスカイブルーの「海仕様」だったが、現在はアイボリーの「山仕様」に塗り替えた。
ボンネットの錆はエイジング塗装ではなく本物。サンダーでガリガリ削り、1週間ほど外に放置して錆びさせた後、マットクリア塗装で仕上げてある。
アウトドア系のイジりでは定番のキャリア&ルーフボックスも採用。ボックスのフタはボディ同色のアイボリー、下部はグリーンで塗り分け。「コールマンのテントっぽい色味にしてみました」。
車高はノーマル。以前はリフトアップスプリングで30ミリほど上げていたが、「不整地を走る時に伸び側のストロークが足りなくなるので純正に戻しました」。タイヤは165/60R15のオープンカントリーRTを履かせ、最低地上高を約2センチアップ。タイヤが当たりにくいようインナーは加工済みで、石がゴロゴロした河原も走れるそうだ。
最新のカスタムポイントはサイドラインとリアラダー&スコップ。
「ルーフボックスにアクセスするためと、山っぽさを演出するのが狙い。ラダーはシャシーブラックで塗ってあえて無骨に見せています」。
まわりの景色を見ながらのんびり走りたくなる
サンバーバンのいい点は、広くて荷物をたくさん積めるのはもちろんだが、一番は「景色を楽しみながら走れるところ」だという。
「運転席とフロントガラスが近いので、それだけ外を身近に感じられる。アイポイントも高いから運転しやすく、景色のいいところをゆっくり走りたくなるんですよね。以前乗っていたプレオは跳ねまくっていたので、それどころではなかったです(笑)」。
ターボ車なので走りも快適、と思いきや、峠道はけっこうキツイそう。「車重が重いせいか、同じKFターボでもムーヴなどに比べると加速が鈍い。あとこれはMTなんですが、1~2速がローギアードなので街乗りではギアチェンが忙しいです」。
それでも軽自動車としては破格の積載能力を持ち、パートタイム4WDは悪路にも強い。キャンプユースでそれほど不満はない。
「これからキャンプ用に軽ワンボックスバンを買うとしたら、四駆の方がいいです。普通の軽自動車と違ってFRベースなので(※N-VANはFFベース)、荷室に重い物でも積んでいない限りトラクションの掛かりが甘い。二駆でぬかるんだ道を走るとスタックしやすいです」。
荷室のオリジナル棚は予算6000円で自作
荷物を積みやすくするため、純正オプションのラックを装着。小物入れ兼ロッドホルダー、さらに吊り下げ式のスピーカーマウントとして活用している。
また荷室用に棚を自作。2×4材で室内幅に合わせた枠を作り、2センチ厚のMDFの棚板と合体。足は建築現場で仮固定などに使われる突っ張り棒を活用している。
「足の長さを微調整できるのがいいところです。それでも若干安定が悪いので、天井からも家庭用の突っ張り棒を装着。上下から挟むように固定しています。あまり突っ張りすぎると屋根がベコッとなるので注意が必要ですが(笑)。市販のベッドキットは数万円しますけど、この棚は総額6000円くらいで作れました」。
キャンプ時の主な荷物は、テント・コット・マット・テーブル・焚き火台・クーラーボックス・調理器具・釣り竿など。「基本的に外で寝たい派なので、ほとんど車中泊はしません。テントで寝る時のスタイルは、コットの上に銀マットを敷いて寝袋に入ります。寒い時期でも底冷えせず安眠できます」。
食事は鉄板でステーキやホルモンを焼くなど、サッと食べられる系が好み。お酒も「ほろよい1本で酔っ払うので(笑)」あまり飲まないが、その分コーヒーは豆から挽いて淹れ、くつろぎながら飲むのが楽しみなのだとか。