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GRスープラ軍団に一矢を報い、開幕戦のリベンジを果たしたNSX【SUPER GT第2戦富士】

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了,GTアソシエーション

次回の第3戦鈴鹿で、その真価が問われるGRスープラ

 開幕戦でトップ5を独占と、とびっきり派手なデビューを演じたGRスープラは、今回の第2戦でも2~4位、そして6,7位と安定した強さを見せている。特に2~4位の3台はそれぞれ30㎏、22㎏、42㎏のウェイトを搭載しての成績だけに、その基本のパフォーマンスの高いことが改めて証明された格好だ。

 レースに携わっているエンジニアは、もちろん彼らの知識と経験からウェイトとタイムの関係を事細かく分析しているだろうが、エンジニアリングに関しては門外漢のジャーナリストとしては、10㎏で約0.1秒。そして50㎏を超えたところで係数が上がる、つまり影響がより顕著になる、ということを経験則として理解している。

トムスの36スープラはウエイト搭載でも速かった

 そう考えるなら、36号車は優勝した17号車よりもレースタイムが速くなり、ベストラップも“ウェイト補正”を掛けてみれば、2台のNSX(8号車と17号車)には後れを取ったものの、それに近いレベルの速さで走ったことになる。そしてトップスピードの差にも驚かされる。富士スピードウェイでは、長いストレートエンドの手前にスピードガンが設置されているから、ウェイトはあまり関係ない、ということかもしれないがGRスープラ勢では何台もが300㎞/h超えを果たしているのに対してNSXは300㎞/hの大台には一歩届いていないのだ。

 因みにGT-Rは290㎞/h足らずといったところだったが、このあたりにも現状でのパフォーマンスの優劣が見て取れる。それでは、今後もGRスープラの天下が続くのかといえば、そう判断するのは早計だろう。

 開幕戦と今回は富士スピードウェイが舞台だったが、次回は鈴鹿サーキットが舞台となっている。富士は超高速コースで鈴鹿はテクニカルはハイスピードコース、と評する向きもあるが、実は現在の富士は、低速から高速まで、速度域が最も広いサーキットの一つ。だからクルマのセットも予想するほど簡単ではないのだが、鈴鹿は最高速が富士よりは低く、また低速コーナーから中高速コーナーまでバラエティに富んでいるからこれまたセットアップが難しい。

初戦に優勝しているNo.37 KeePer TOM'S GR Supra

 さらにブレーキングとコーナリング、そしてコーナーからの立ち上がり加速。そのすべてにおいてウェイトがボディブローのように効いてくるはずだ。何よりもトムスの2台(36号車=60㎏、37号車59㎏)はハンディウェイトが50㎏を超え、燃料リストリクターが絞られる領域になってくる。こうした厳しい条件で充分なパフォーマンスを発揮できるかどうか、つまり次の鈴鹿ではGRスープラ勢は真価が問われることになる。

GT500は文字通り、市販車のカウルを被せた純レーシングカー

 最後になったが、GT500の競技車両(規則)についても少し紹介しておこう。現在、SUPER GTのGT500クラスには国内3メーカー、トヨタのGRスープラと日産のGT-R、そしてホンダのNSXという屈指のスポーツカーが参戦している。ただし3車種ともに、市販車のシルエット(似たシルエット)をしているが、カウルを外してみればカーボンファイバーで成形された専用のモノコックを持ったレース専用マシンであることが分かる。つまり羊の皮を被った狼ならぬ、市販車のカウルを被せた純レーシングカーなのだ。

カーボンファイバーで成形された専用のモノコックが見える

 しかも近年、ドイツを中心に欧州を転戦しているドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)とレギュレーションの共通化を図った結果、今シーズンは“クラス1”と呼ばれる規定に、ほぼ準拠したマシンで戦われることになり、3メーカーがそろって新型車輌を投入している。つまり、より正確に言うならGRスープラだけでなくGT-RもNSXも、今年新型がデビューしたというわけだ。

今年からの規則でエンジンをフロントに搭載したNSX

 ちなみに、NSXは市販モデルのミッドシップ後輪駆動(MR)からエンジンをフロントに搭載するFRにコンバートされているのはよく知られたところだ。そしてモノコックもサスペンションも、共通部品として3車が同じパーツを使っているから、3車の違いはカウルとエンジンのみ。よりスポーツカールックなGRスープラやNSXに対して2ドアクーペのボディ形状を持つGT-Rが不利と言われる所以でもある。

ボディ形状の影響が囁かれるGT-R

 モノコックとサスペンションが同じなら、シャシー性能としても似たようなものとなるはずだが、セッティングの範囲内でクルマの性格もガラリと変わるようで、そこはエンジニアの腕の見せ所。これにタイヤの開発競争が加わるから話はより複雑化するのだが、最後の最後、ドライバーがパッケージ(クルマとタイヤ)に合わせたドライビングで、いかにそのパッケージが本来持っているパフォーマンスを引き出すのか、という勝負が繰り広げられているのだ。また若手ドライバーの活躍も要注目。ということで2週間後の鈴鹿が待ち遠しい。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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