「時代のニーズ」は変わり続ける
消えてしまった理由はなぜか。販売台数が低迷したからに他ならない。ではどうして販売台数が低迷したか。ひとことでいえば、「時代のニーズとあわなくなった」からである。
どんなクルマならブルーバードとして認められるかを見極めきれなかったこともあるし、もし硬派でスポーティなブルーバードらしいクルマを作ったとしても、セダン離れが始まっていた当時はすでに人気を得ることは難しかっただろう。ひとことでいえば、ビッグネームゆえに時代を反映したブランディングができなくなってしまったのだ。
たとえば9代目にハードトップとして用意された「ARX(アークス)」は、今にして思えば思い切った素晴らしいデザインだったが、ブルーバードとして考えれば「男の硬派な乗り物」という雰囲気が全くない。時代を先取りしすぎたこともあるし、ブルーバードという車名にはふさわしくなかった。ブルーバードを名乗らなかったら、販売台数を伸ばせたかもしれない。
また、ミニバンなどセダン以外の選択肢が増え、セダンのマーケットが縮小した。そんなマーケットの変化も大きな影響を与えた。結果として、日産ではブルーバードのほかにも「セフィーロ」や「ローレル」「セドリック」、トヨタでは「コロナ」「ビスタ」「マークⅡ」などのビッグネームが2000年前後に消えてしまったのだ。
しかし、ブルーバードの血統は途絶えてしまったわけではない。2000年に「ブルーバード・シルフィ」というコンパクトセダンが登場し、スマッシュヒットを飛ばした。
2012年登場の3代目からは「シルフィ」とブルーバードの名前が完全に消えたが、販売継続中だ。
また中国では2019年の春に新型(4世代目)が登場。現地ではセダンが好まれることもあり、日産のナンバーワン人気モデルかつ、中国における同クラスのトップセラーとして高い人気を誇る。
北米では「セントラ」という車名で、スポーティなセダンとして販売されている。
「ブルーバード」という名前は消えてしまったが、名前を変えることで過去のイメージに別れを告げ、新世代の新しい車として再発進。実質的な後継車は今なお世界各地で愛されているのだ。