もともとはレーシングコンストラクターだった
オリジナルのミニを見るとなんでも「ミニクーパーだ!」という人がけっこういるように、クーパーの認知度はかなり高い。BMWのミニでもクーパーは高性能版の証として付けられ、人気を博している。
では、クーパーとはなにか? と問われるとどうだろうか。名前であることはわかるのだが、それ以上のことはあまり知らないのではないだろうか。クーパーとは正確にはジョン・ニュートン・クーパーで、ジョン・クーパーと呼ばれることが多い。
イタリア車でのアバルト的な存在で、ノーマルのミニを独自のチューニングで高性能化して人気を博し、やがてグレードのひとつになっていったのは同じだ。ただアバルトが、そのノウハウを武器に名声を高めていったのに対して、クーパーはミニを手がける前から、クーパーカーカンパニーというレーシングカーを手掛ける企業を設立し、父親とともに活躍。
F1では常勝チームで、ジャック・ブラバムやスターリン・モスなどそうそうたる伝説的なドライバーがこぞってステアリングを握っていた。また、アメリカではインディ500にも参戦する予定で、テストまで行っている。
技術的な特徴としては、フォーミュラ形状の車両にミッドシップを採用したことにあった。ちなみにホンダがF1に参戦するにあたって、クーパーのマシンを参考にしている。
ただ1960年近くになると、戦後直後から続いたF1の流れも変わってきたことから、次第に伸び悩んだのも事実。その代わり力を入れ始めたのが、ミニをベースにしたチューニングモデルでの市販車への参入となる。レース活動と市販車へのフィードバックという点では、確かにアバルトと似ているところはある。
ジョン・クーパーはもともと、ミニを生み出したアレック・イシゴニスと古くからの知り合いで、発売してすぐにチューニングを施し、大幅なポテンシャルアップに成功。ただ、イシゴニスはミニのラインアップに加えることには消極的で、最終的にはメーカーであるモーリスと手を結ぶことで、ミニ・クーパーは誕生した。1961年のことだった。
モータースポーツでもポテンシャルの高さを発揮
そのチューニング内容はかなり本格的で、エンジンはクランクまで変更してロングストローク化。ピストンなどにも手は入れられ、キャブレターや吸気系も当然のことながらチューニングされていた。そのほか、足まわりやミッションもノーマルとは違うものだった。大幅なポテンシャルアップを実現していたが、ロングストローク化からもわかるように、カリカリのチューンというよりも、扱いやすさや乗りやすさを高
めるものではあった。
ただ、モータースポーツでもそのポテンシャルの高さは注目が集まり、とくにラリーでは大活躍を見せた。その代表的なものがモンテカルロラリーで、ポルシェ911などの強豪を抑えて総合優勝に輝き、3連覇という偉業を成し遂げている。ただ、車両的には当初、997ccだったのが、パワー不足が露呈したため、1275ccまで高められている。それがクーパーSで、排気量をアップしたことで、数々の国際舞台で活躍した。
クーパー、クーパーSというのは、現在のミニのシリーズにも使われているので、馴染みがあるところだ。その後、イギリスの自動車産業の紆余曲折に翻弄されたが、ミニの権利がBMWに移ってからも、相談役を務めていた。