【FD3S型】
軽快なスポーツカー像から大人の選択にも耐えるしっかりとした内容のスポーツカーに転身したRX-7は、1991年に第3世代のFD3S型に発展する際、FC3S型が備えるスポーツカーエッセンスを、より凝縮、昇華させる方向で車両作りが行なわれていた。
登場時期は、まさにバブル経済のピーク期。性格はまったく異なるものの、性能的には日産スカイラインGT-R/フェアレディZ、トヨタ・スープラ、三菱GTOと同等、すなわち日本最高レベルの動力性能を備えていたが、RX-7が最もスポーティかつスパルタンで、「ピュアスポーツ」という表現を採る自動車専門誌が相次いだ。
FD3S型をひと言で表現すれば、FC3S型が備えた各項目のスポーツ性をすべて高めたモデルで、その走り味、ハンドリングは先鋭的、攻撃的とも言えるほど研ぎ澄まされたものになっていた。搭載される13B型ターボエンジンは、デビュー時に255ps、最終的には280psと日本車最強の仕様になり、路面の状態をダイレトクトに伝え、操作に対して即座に反応を示すシャープなハンドリング性能は、言ってみれば、公道を走るレーシングカーのような車両性格だった。
スポーツカーとしての要求性能、あるいは車両としての熟成度は、明らかにFC3S型を上回る内容だったが、車両価格はさらに上昇。内容的には紛れもないスポーツカーだったが、価格面からは高級車に区分される車両となっていた。
FC3S型からの進化点はサスペンション。前後ともダブルウィッシュボーン方式に改められ、支持剛性の引き上げ、対地キャンバー変化を抑えるなど、より路面追従性を高めることで旋回性能の向上を図っていた。
基本的には、FC3S型で確立されたスポーツカーとしての性能を土台に、エンジン/シャシーメカニズムを刷新し、動力特性、運動特性にとどまらず走りの質を高めたことで、ロータリーエンジンの特長を最大限引き出す車両、言い換えればRX-7らしさを見事に具現化したモデルだった。
いつの時代も軽量コンパクト、高出力性を持つロータリーエンジンの特長を最大限生かすモデルとして、スポーツカーRX-7の果たした役割は大きい。