復活したアバルトはサソリの紋章に恥じない過激さ
その際の関心事といえば、フィアットを長年見続けてきた人間からすると、落としどころをどうするかということ。実用車をベースにしたアバルトマジックを現代で復活させるのかは非常に興味があることだった。環境問題などを考えると、先に紹介したウーノやリトモなどのパターンも仕方がないと思っていたのだが、それも杞憂に終わったのはご存知のところ。
ひと言で言えば「サソリの紋章に恥じない過激さ」だろう。チンクエチェント、プント、そして124を見れば即座にわかることで、走りだけでなく、ディテールから放たれるオーラも含めたトータルでの過激さだ。とくにチンクエチェントベースでは、595/695といったグレード名やエッセエッセキットなど、随所にサソリのエッセンスが散りばめられているのにもワクワクさせられるもの。
たとえば、今でもメーカーがこんなクルマを作って売れるんだと驚愕した「アバルト695ビポスト」のフルスペック仕様はミッションはシンクロのないドグミッション(回転合わせが必要)やアクリルのドアウインドウなど、やっちまったな感がたっぷり。
もちろんナンバー付きで普通に公道を走ることができる(操作が大変だけど)。排気量アップも含めたメカチューンだけで、ノーマル比2〜3倍は当たり前という全盛期のアバルトを思わせる、攻めの展開にはただただ拍手。環境や資源問題優先の今、あっぱれだ。
可愛いチンクと、それをベースにしたアバルトを対比してみると、ベースは同じクルマとはまったく思えないほど。ユーザーも前者が女性も多いのに対して、アバルトは走り好きがもちろんメイン。過激にこそアバルトの魂ありというわけで、それを忠実に現代に再現できているから、アバルト人気が現代に再燃していると言っていいだろう。
まさに昔も今もアバルトはアバルトだ。さらにどういった展開を見せてくれるのか興味津々である。