オープンカントリーR/Tには2種類の異なるタイヤが存在
それでも耐久性、耐カットバースト性能に不安はないのだろうか? 競技ではひと度パンクを起こせば10分や15分は簡単にロスしてしまう。これはトップを争うチームには致命傷となりうる…。だが、テストに帯同していたトーヨータイヤの技術者が我々にこうタネ明かしをしてくれた。
「オープンカントリーR/Tには2種類の異なるタイヤが有ります。サイズによって色付けしているのですが。ひとつはパッセンジャーカー(乗用車)用で、もうひとつは北米でライトトラック(LT)と呼ばれているクルマをターゲットにしたものです。日本であればジープやランドクルーザー、ハイラックスなどラダーフレームを備えた重量級の本格4WDを思い浮かべていただければいいでしょう」。
「LTタイヤは空気圧を高めにすることで負荷が大きくても耐えることのできる製品ですが、違いはそれだけではありません。R/TのLTバージョンでは土台となる構造や材質をオープンカントリーM/Tとほとんど同じにしているんです。ですから剛性や耐久性、耐カットバースト性もM/Tとほぼ同じ。コンパウンドもグラベルや石で欠けにくいM/T用とほぼ同じもの使っており、大きく違うのはトレッドのパターンだけ。このR/Tを私は “ベイビーM/T” と呼んでいます」。
「そして溝の占める割合がM/Tより少ない分、路面に接地する面積は大きく、硬い路面でドライバーが感じる接地感はより優れたものになります。やはり餅は餅屋。マッドタイヤは泥がちな環境でこそ活きるタイヤですから、雨期のヌタヌタ路面が最適解。ドライであればR/Tで活路を見いだす戦略は理に適っていると言えるでしょう」。
テストタイヤは日本未発売のサイズ
同じくテストに立ち会った同社のマーケティング担当者もこう続ける。「競技は2トン以上のクルマが120kmとか150kmの全速力で突っ走り、深い穴や段差でもブレーキを踏まずに駆け抜けていくような世界です。そうなるとやはり耐久性や耐外傷性が大切となり、LTが必要とされてきます。TEAM JAOS のマシンが最終的にどのタイヤサイズを履くにせよ、我々は日本未発売の北米展開サイズも駆使しつつ、実戦でより頑丈なLTタイヤを履けるようサポートして行こうと考えています」。
言われてみればこの日、テストで使われたタイヤサイズはどちらもライトトラック用の「LT265/70R17」。M/Tは国内販売済みのサイズだが、R/Tは日本未発売のサイズで北米から取り寄せたものだった。
とはいえ、見学している我々にとってこのテストはとてもわかりやすく、そして興味深い結果だった。「オープンカントリーR/T、侮り難し」というのが正直な感想で、ファッションタイヤという色眼鏡で見ていた私も反省することしきり。おかげさまで、M/Tよりグリップ力や操安性に優れたR/Tが、スタイルだけでなく扱いやすさで人気を博してきたであろうことに気付くことができたわけである。