最高光度と広く照らし出す2つがポイント
クルマにとっては欠かせない装備のひとつのである灯火類。夜間走行時の安全性や快適性はヘッドライトやフォグランプの性能にかかっていると言っても過言ではないだろう。そんなライトの最先端をリードしているのがレーシングカーやラリーカーなどが用いるモータースポーツ用のライト類だ。
そこで今回はラリーや耐久レース、オフロードレースへのライト供給を数多く行っているIPFの広報担当である市川さんにモータースポーツに用いられるライト事情についてうかがった。 モータースポーツを支える灯火類に求められる性能は大きく分けて2つ。
ひとつは最高光度を重視して、遠くを明るく照らし出す能力。これは「カンデラ」と呼ばれる数値で表現される。サーキットやラリーなどでは速度域が高く、はるか前方の安全を確認するために、強力な光で遠く前方を照らし出す必要があるのだ。
そして、もうひとつはクルマの周辺を広く照らし出す能力だ。岩場のセクションを低速でクリアするのが目的のロッククローリングでは車両周辺の様子を明らかにするライトが、ラリーでも路肩を広く照らし出すライトが必要になるのだ。
モータースポーツと言ってもそれぞれの用途に合わせたスペックが要求されるので、それに合わせた開発がなされている。
強力な光で遠く前方を照らし出す
では、ひとつ目の明るさについて詳しく紹介していこう。明るさを表す単位にカンデラ(cd)という数値がある。
IPFはLEDのライトバーシリーズ(600シリーズや600Sシリーズ)を持ちレーシングマシーンでも実際に用いられている。例えば600シリーズの10インチモデルを見ると18万カンデラのスペックを持っている。車検時に必要とされるのが1万2000~1万5000カンデラであることから考えるとその強烈な明るさが判断できるだろう。遠くを明るく照らし出すには最高光度を高める技術が大切なのだ。
今年のニュルブルクリンク24時間耐久レースに出場予定だったSTIのWRXには同社の600Sシリーズが搭載され、夜間の高速走行をサポートすることになっていたことからも性能の高さがうかがい知れる。
またラリーの世界でも明るさをサポートする補助ランプは欠かせない。
同社の985RS/985RDといったラリー用のレーシングランプにも注目してみた。荒野を疾走するラリーカーは数々の障害物があるため少しでも遠くを照らしたいという欲求がある。そこで開発されたのがこのモデルだ。985RSはスポット配光で14万7000カンデラのスペックを誇り遠くまでを照らし出す。
一方の985RDはドライビング配光で3万5000カンデラだが広く周辺を照らし出す性能を重視した設計となっている。走りのシーンやドライバーの好みでスポットとドライビングを使い分けることができる設定なのだ。
路肩を広く照らし出すライト
モータースポーツ向けのライトに求められる2つめの性能である広い範囲を照らし出す能力に対してもさまざまな開発が行われている。その特徴的なモデルが600シリーズ CUBE ワーキングランプと呼ばれるモデルだ。光の拡散性を高めて、広い範囲を明るく照らし出すのが得意なランプだ。
ロッククローリングの走行時には車両の4隅に取り付けて車体周辺をまんべんなく照らし出し、岩とタイヤ/車体との位置関係を明るく照らし出し走行をサポートする。
そんなモータースポーツ向けのライト類に近年変化が見られるという。それがLED化だ。従来、同等の明るさであれば軽量に作ることができるHIDやハロゲンを使ったランプが有利とされていた。しかし近年はLEDの軽量化が進み、重量増にシビアなレーシングカーにもLEDを用いるケースが増えてきているという。デザイン的にはランプポッドを備え複数のランプをビルトインしたラリーカーもカッコいいが、小振りなLEDバーも新鮮。レーシングマシンのフェイスまわりのデザインも徐々に様変わりしつつある。
レーシングカーのヘッドライトが黄色い理由は視認性にあり
レースシーンでのライトでもうひとつ気になる疑問であるイエローバルブの優位性についての聞いてみた。古くから雨や霧などの条件ではイエロー光が有利とされている。実際に光の透過率が異なるためホワイト光が水や霧に反射してしまうのに対して、イエロー光は透過性が高いため、路面の凹凸などを映し出しやすいのだ。雪国のベテランドライバーがイエロー光を好む傾向が強いのは視認性の高さを体感的に知っているからだろう。
ところで、レースシーンでもホワイト光とイエロー光が使い分けられている。その代表的なものがスーパーGTだ。マシンによってホワイト光とイエロー光のヘッドライトがあるのをご存じだろうか。こちらはレギュレーションでGT500=ホワイト光、GT300=イエロー光と決められているのだ。レース観戦時にはヘッドライトの色でクラスを判断することができることも憶えておくと良いだろう。
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