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「シーマ」も「クラウン」も凄いけどやっぱり最強は「初代セルシオ」! 価格高騰の予兆もあるいま買うべき中古の見分け方とは

北米で生まれ、そして日本へ。トヨタの歴史を変えた高級セダンに乗ろう

 80~90年代に人気を博した高級セダンと言えば、「シーマ現象」という言葉も生まれた日産・シーマ(初代・Y31系)、

 そして電子制御エアサスペンションなど数多くのハイテク装備が導入されたトヨタ・クラウン(8代目・130系)。

 これらは中古車市場でもタマ数が多く、今でもファンが多いクルマだけに相場が年々上昇している当時セダン界のツートップ。

 どちらもバブリーさを感じられる魅力的なクルマであることは間違いないが、「ちょっと違うセダンに乗りたいなぁ」という人にオススメしたい1台がある。それが1989年にデビューしたトヨタ・セルシオ(初代・10系)。長い歴史を持つトヨタの伝統的セダンだったクラウンのさらに上を行く、最高級ドライバーズセダンとして華々しく登場した。 同時期に販売されていたクラウン(後期型)は最上級のロイヤルサルーンG(マルチビジョン装着車)で465万円に対し、セルシオはトップグレードのC仕様・Fパッケージで620万円となかなかの高価格。しかし当時のバブル景気が後押しして、販売台数は多かった。

 またシーマやクラウンと同じく、高級車をイカツくドレスアップする「VIPセダン」のベースとしても注目を集め、90年代後半になると中古車を買ってイジる若者も多く見受けられた。

 初代シーマや8代目クラウンのように昭和をまたいでいないが、デビューから30年以上が経った初代セルシオはネオクラシックカーの素質を十分持っている。中古車はシーマやクラウンほどではないが少しずつ相場が上がっており、興味を持っている人は早めに手に入れるのが吉。今回は初代セルシオの特徴や中古車市場の動向、買う際にチェックするべきポイントを紹介する。

A・B・C・C-Fパッケージの4グレードを展開

 もともとセルシオは日本ではなく、トヨタが北米を拠点に設立したプレミアムカーブランド「レクサス」での専売を想定していたクルマである(2005年から日本でもレクサスディーラーを展開)。車名もセルシオではなく「LS」で、レクサスのフラッグシップモデルという位置付け。そのスタンスは現在のレクサスでも変わっていない。

 1989年に発売を開始したLS400は、静粛性や品質を徹底的に追求。市販化の域に達するまで、何と450台の試作車が作られた。アメリカやドイツの高級セダンにも引けを取らぬ作りは高く評価され、北米市場で大ヒット。

 日本にはクラウンが存在するため国内で販売する予定はなかったが、バブル効果でますます高級車のニーズが高まり、細部の仕様を日本向けに変更した上で同年10月からセルシオの名で販売をスタート。グリルには現在でも使われている楕円型のトヨタマークを初めて採用。これからトヨタの未来を背負って行くモデルとしての期待も込められていたのだろう。

 エクステリアは重厚感あふれる角張ったスタイリングが特徴で、バンパーに内蔵された横長のウインカーや面積を広く取ったテールランプなど、独自の意匠が与えられた。海外市場をターゲットとしたクルマは奇抜なデザインが多い中、セルシオは日本でもすんなり受け入れられた。

 そのため1992年にマイナーチェンジを行った後期型は外装の大きな変化はなく、グリルの意匠変更やトランクの「TOYOTA」エンブレムの省略、ホイールのデザイン変更&インチアップなど細部で違いを出している。

 グレードはベーシックなA仕様、スポーティに味付けしたB仕様、そして装備を充実させたC仕様を設定。C仕様には後席の快適性を向上させたFパッケージも用意された。

 足まわりはC仕様のみ電子制御エアサスペンションを採用。A&B仕様はコイルサスペンションだが、後者はショックアブソーバーの減衰力を路面状況に応じて瞬時に切り替える新開発のピエゾTEMSを搭載。ちなみにB仕様はスポーツグレードらしく、ダクト入りの小振りなフロントスポイラーを標準装備。C仕様もオプションで装着できた。

 エンジンは1種類のみで、8代目クラウンの後期型から導入されたV8・4000ccの1UZ-FE型を搭載。静粛性の高さに定評があった。これに電子制御式の新型4速オートマチックを組み合わせ、滑らかな走りを実現した。

 内装はパネルに最高級のウォールナットを使用。操作スイッチは指のフィット感や操作音にまでこだわった。またクリアで視認性が高い自発光式のオプティトロンメーターを、国産車で初めて採用した。Fパッケージはリアシートにバイブレーション機能やヒーターを内蔵して、後席の快適性を高めている。

 1994年に2代目へバトンタッチするまで、およそ5年間で約20万台という好セールスを記録した初代セルシオ。その後は3代目まで生産されたが、日本国内でレクサスディーラーの立ち上げに伴いLSが実質的な後継モデルとなり、セルシオの名は消滅した。 

電動機能が多いセルシオは、各部の動作確認を忘れずに

 中古車の市場を見ると初代シーマや8代目クラウンと比べると、タマ数は少ない。今は年輩が新車で購入して最近まで乗っていたと思われる個体がメインとなり、ワンオーナーや低走行車が多く出回っている。相場は40~160万円と開きがあり(筆者調べ)、同年代のシーマやクラウンよりは手頃な価格で推移している。

 一番人気は装備が充実しているC仕様で、オプションの本革シートやサンルーフが付いていたら値段が一気に跳ね上がる。ボディカラーはホワイトパールマイカトーニングG、いわゆるパールツートンが好まれている。パールと同じく人気が高いブラックの設定もあったが、流通量は多くない。カタログのイメージカラーであるダークグリーンM.I.OトーニングGは市場で多く出回っているが、パールと比べたら人気度が低いため割安で買える可能性が高い。

 初代セルシオはお金をかけて開発されたクルマだけに完成度は非常に高く、同年代のセダンと比べるとしっかりとしている。しかし製造年を考えると、電装系を中心に不具合が起こってもおかしくない。現車を見る時はシートのスライド機能やパワーウインドウ、ステアリングのチルト&テレスコピック機能など車内のスイッチ類を操作して問題なく作動するかを確認しておきたい。

 視認性が良いオプティトロンメーターも、個体によっては液晶のドット抜けや点灯不良などのトラブルが見受けられる。メーターは運転していると常に視界に入る部分だけに、キレイに点灯していないとテンションが下がるので確認しておこう。

 エンジンに関してはラジエターのホースをはじめ、ゴム類が劣化しているケースも多い。これらは乗る前にひと通り交換しておいた方が安心。パワステポンプからのオイル漏れも良くあるトラブルのひとつなので、チェックしておきたい。そしてC仕様に関しては、エアサスの状態も確認したいところ。 車高が前後均等ではなかったり、左右に傾いている個体はエアバッグなどが劣化している可能性がある。故障のリスクを避けるなら、コイルスプリングのA&B仕様を選んだ方が安心だ。いずれにしても、長く乗るなら各部のメンテナンスは必須と言える。

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