何事も“丁寧なケア”が必要となる旧車ライフ
現代のクルマはメンテナンスフリー化が進んで、日常使いでも特段何かに気を使うことなく運転することができる。超長期的には不具合や不調が出るかもしれないが、エンジンをかけてそのまますぐに走り出そうが、雨の日に乗ろうが問題なし。駐車する時だって、場所を選んだりする必要もない。
しかし、旧車となると真逆と言っていいほど気を使ったり、丁寧に扱わなければいけなかったりする。実際の経験を踏まえて、旧車を所有するうえでの注意点をご紹介しよう。
【駐車場所】
出先では現行車と同じで良いが、自宅駐車場は気を使いたい。屋根付き、シャッター付きの屋内保管がベストだが、無理な場合は砂利だけでも避けたいところ。理由は湿気が地面から上がってくるし、こもりやすいから。
実際の例として、駐車場を舗装から砂利にした途端に下回りが錆びるようになったというのがある。砂利の駐車場しかないという場合は、雨の後は動かして車体まわりの空気が少しでも入れ替わるように換気をしたい。
【ボディカバー】
こちらも湿気がこもるからダメと言われるが、それは一理ある。ただ最近はゴアテックスなどの素材を使って、通気性を確保したボディカバーもあり、少々高価だがそれを選べは良い。ボディカバーを勧める最大の理由は、紫外線から守るため。ボディ自体は全塗装という方法もあるが、ゴム類は生産中止になっていることも多くて、できるだけ延命を図りたいからだ。また内装のインパネも同様のことが言える。
ボディカバーをしてみるとわかるが、数カ月で色はあせ、カサカサになってくる。紫外線が原因なのだが、もしカバーをしていなかったらクルマそのものがダメージを受けているかと思うとゾッとする。
【ワックスがけ】
美観のためだけではなく、塗装の保護という点でもワックスがけやコーティングは定期的に行おう。目的はもちろん水分を寄せ付けないためと、塗装そのものの劣化を防ぐため。塗装というのは簡単に言ってしまうと樹脂なので、油分の補給は重要だ。
ちなみに洗車時は、ボディを拭き上げたら周辺をひと走りすることも旧車オーナーは忘れずに実践したい。言わば自然のエアブローといった感じで、ウエスで拭き取れなかった車体の奥や隙間の水分を飛ばすことができるからだ。
【暖機運転】
今のクルマは走り始めをゆっくりとすれば良い程度で、いわゆる停車したまま「水温計の針が動き出すまで待つ」といった暖気運転は必要ない。一方、旧車の場合はしっかりと暖機する必要があるし、暖まる前に走り出そうにも、かなりガクガクする。環境に良くはないかもしれないが、絶対数は少なく、頻繁に乗るわけではないので負荷は少ないし(欧米の旧車減税制度の根拠のひとつ)、走れないのだから仕方がない。
暖機はピストンやシリンダーなどのメカの摩耗だけでなく、オイルシールやガスケットなどの馴染みにも関係することが考えられ、実際に暖機を励行してきたクルマは、オイル漏れも少ない。
【急が付く操作】
運転はやはり“優しく”が基本。バリバリのチューニング仕様も旧車では多いが、最終的には各部にストレスが溜まって、劣化はかなり早まるように思う。構造的、設計的にも未熟な部分があるのも劣化という点ではハンディだろう。
部品が潤沢にあれば、メンテ前提で攻めた走りもできるかもしれないが、ないことも多いのでやはり優しくが基本だ。足まわりのガタやミッションの入りなど、不具合が出やすいポイントは多い。
【車検・整備】
新車から数年であれば、まったく問題が出ず車検を通せるのが最近のクルマ。逆に旧車の場合は、車検は初期化のポイントとしてできる限りの整備をしたい。
冷却水の交換、ブレーキを分解してのオーバーホール、各部増し締めやグリースアップなどやることはたくさんあるし、実際に不具合が発見されることも多く、修理が必要になることも普通にある。車検の時だけでなく、12カ月点検の励行も大切だ。とにかく、点検・調整・交換が常に付きまとうのが旧車というものである。
【定期的な走行】
よく「乗らないけど、1週間に1度はエンジンをかけるようにしています」という言葉を耳にするが、やらないよりはやったほうが良い程度。“エンジンをかけるだけ”というのは、簡単に言ってしまえば、エンジン内部が動いているだけで、そのほかの部分は止まっているのと同じだ。
クルマにとっては近場で構わないので走ったほうが良く、暖機をしっかりとしてから、最低10分は走りたい。10分以下だと、バッテリーの活性化が始まらないし、ミッションやタイヤも暖まり切らない。10分間走るとしても、ブレーキをかけてみたり、シフトはあえてマメにしてみたりと、意識して各部を動かすようにするのがベストだ。