マーチやサニー、パルサーから派生した「デザイン優先」の名作たち
パイクカー(pike car)という言葉を、聞いたり、見たりした覚えのある方はいるだろうか? もちろん、自動車のカテゴリーを分ける正式な言葉ではない。日本車の歴史を振り返るとこのパイクカー、1980年代に日産がマーチをベースに企画したデザイン優先(というよりデザインのみ!)の車両、「Be-1」がその発端となっていた。
今回その「Be-1」をはじめ、マーチやパルサーバン、サニーからのれん分けした日産のパイクカー5台にクローズアップ。どれもいま見ても古さを感じない、むしろいまだからこそ出して欲しいと思える個性的なデザインばかりだ。
1)Be-1(1987−1988)
Be-1は、1960年代に一世を風靡した英BMCのミニクーパーを彷彿とさせる(コピーした?)デザインで登場した車両で、当時、語弊はあるが「おもしろみ」に欠けるデザインの車両が大半を占めていた日本車のなかで、ミニを満喫させるデザインのクルマを日産という自動車メーカーが手掛けたことが大きな話題となった。
このBe-1に対し、パイクカーという言葉が使われるようになったのだが、パイクという単語そのものは「槍」「槍のような先鋭なもの」という意味で、突出した存在、個性的なクルマ、ということを表していた。とは言うものの、なにか、ピンとくるような、こないような表現で、既存車のデザインコンセプトをパクッた「フェイク」カー的な意味として受け取る人も多かった。 さて、このパイクカーだが、日本でその先鞭をつけ、継続的に路線を展開したのが日産だった。その第一弾がミニをイメージしたようなBe-1で、1985年の東京モーターショーでお披露目したが、舞台が舞台なだけに世の中に対する告知効果は十分以上だった。1987年に1万台限定で発売したが、あっという間に予約は埋まり、市場では予約権に対してプレミアム価格が付けられ、投資対象として騒がれた車両としても話題を集めていた。
2)パオ(1989−1991)
このBe-1が発売された1987年、日産パイクカー路線第二弾として、やはりマーチベースの「パオ」が登場する。ボディパネルを50年代、60年代のノスタルジックオフロードカー風に仕上げ、荒涼としたサファリ砂漠をキャラバンする車両の雰囲気を与えて登場。
デザインの完成度は、爆発的な人気を呼んだBe-1より高く、3か月の期間限定予約による販売だったにもかかわらず、予約件数は5万件を超え、納車が完了するまで1年半を要する予想以上の大ヒット作となった。