機能性だけでなく、見てわかる技術も重要視
レースドライバーからも、クルマ好きの一般ユーザーからも高い支持を受ける『ボルクレーシング』。その人気は日本国内にとどまらず、世界中に多くのファンを持つ。その根幹を支えるのは、長年のレース経験から得た知識と技術を結集した品質の高さであることは間違いないが、それだけではない。ボルクレーシングにしか出せない機能美や、繊細なディテール。他では味わえない特別感を堪能させてくれるのもまた、このブランドの魅力である。
REDOTでリムにアクセントを
アルミホイールを作る技術は日々進化し、ここ数年で品質はかなり向上した。
「特にこの10数年間で、コンピュータ解析はもの凄く進化しました。当時は職人の勘でやっていたようなことを、データによって導き出せるようになった。同時に金型も格段に進化してきています。でも、塗装に関してはどうだろうか。キレイには塗れるけど、それ以上の進化がない。それがずっと不満だったんですよ」とボルクレーシングの山口サン。
色味はどれも似たり寄ったりでなかなか特長を出しづらく、それなら何かアクセントを付けようと思ってもステッカーぐらいしか手立てはない。ロゴ刻印は平面的で無個性な物が多い。これをどうにか出来ないだろうか。レイズの挑戦は続く。
新作モデルのTE037 6061や、TE372B、ZE40TA ll は、2020年限定バージョンとしてREDOT(アールイードット)モデルをリリースした。REDOTとはレイズが独自に開発した塗装技術のことで、ステッカーには出せない質感の高さをアピール出来るのが特長。先のモデルで言うと、リムに走っているマシニング+カラーリングで構成されるシルバー×レッドのラインがそれだ。
ラインを入れる技術もさることながら、そのデザインも斬新だ。TE037 6061の場合、3つのラインを描くが、それぞれに長さが違う。パッと見た時の意外性と同時に、走行時によりエモーショナルな動きになるように考えられたデザインなのだ。
ZE40 TA ll は、シルバー×レッドの矢印とシルバー単色の矢印が対になった意匠。「技術的にはどんどん難易度を上げています。工場からしたら辛いかもしれないけれど(笑)、やっぱり美しい物を作りたいし、お客サンに『すげ〜!』と言ってもらえる物を提供したいですからね」。
立体的な文字を曲面で表現する高技術
リムやスポークに刻まれるロゴも、レイズオリジナルの特許技術によるもの。アドバンスド・マシニング・テクノロジー、通称A.M.T.は、繊細なデザインを三次元の曲面状でも再現出来る切削技術。これもレイズならではの特許技術だ。
ブランドロゴやクレジットを立体感のある文字で彫り込むことで、見る角度、光の当たり具合により表情と輝きが変化する。誇り高きブランドロゴに一段とステイタス性を持たせた、ファンには嬉しい技巧である。
クリアを使った色の見せ方にも技あり
今年の新作では、ベースカラーにも特長がある。たとえばTE37 6061では、ダークブルークリアをラインナップ。5コート・5ベイクで、黒を塗装した後一度クリアで押さえてから、その上にブルーコートを塗った手の込んだ塗装法で仕上げている。
「青色を感じさせるという意味では無く、黒をいかに際立たせるか。下の黒が透ける青を加えることで、紺碧というか、深い色合いになるんです」。光の当たり方によって、同じホイールのスポークでも絶妙に色味が違って見える。塗れたような艶やかなブラックから、時折ブルーが輝き、ハッと目が止まる。
TE37 KCRでは、マットレッドを採用
「普通の赤にマットをかけると、工事現場の工具のような、高級感とは無縁の色になる。そこでキャンディレッドを塗って、そこにマットクリアをかける。『何でキャンディで光らせたのに、わざわざマットやねん』って思うでしょう(笑)。ところが実際にやってみるとカッコイイ。大人の赤が出来たんですね」。
そんな試みが出来るのは、やはり塗装も全て自社でやっているレイズの強みである。
「たとえばiPhoneのガンメタみたいな色は作れないのかとか、マット感も出しすぎると粗野になるから、5分艶ぐらいのマット感を目指そうとか、そういうことを社内で出来るので、何度もチップを作って確認しながら出来る。ブルークリアにしても、このホイールに塗っても色が活きないとかっていうのもあって、あれも3、4本別デザインで試しているんですね。そうした表に出していないサンプルは山ほどある。色々試していくうちに、奇蹟の集まりのようにして、ピタッと全てがはまる完成形が出来るんです」。
これまで性能面の高さで語られることが多かったボルクレーシングであるが、近年今まで以上に「見える技術」も重要視して、ドレスアップ要素もグレードアップを図る。走り好きはもちろんのこと、ショーカーのように見せたいカスタムユーザーにとっても、やっぱり見逃せないブランドであることは間違いない。