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ハイテク武装で「峠」でも最強! 速さのみを追求した戦闘機「ランエボ1〜3」の衝撃

ランサー・エボリューション1〜3の第1世代を振り返る

 三菱のブランドから連想されるのは、古参のファンなら「ラリー」「4WD」「RV」、最近のファンなら「4WD」「RV」「EV(電気自動車)」といったところだろう。そのうち「ラリー」と「4WD」のイメージを定着させ、そして技術的ノウハウの形成に大きく貢献したのは、1992年から2016年まで24年間販売され、WRC(世界ラリー選手権)などのモータースポーツでも活躍した「ランサー・エボリューション」シリーズであることは間違いない。 そんなランサー・エボリューション、通称「ランエボ」の歴史を、今回は第一世代のCD9A/CE9A型、初代から2、3まで振り返ってみよう。

【ランサー・エボリューション】CD9A/1992年9月発表

 トップカテゴリーがグループAに移行した後のWRCに参戦していた三菱ワークスチームは、それまで使用していたギャランVR-4が1992年5月の世代交代で大型化されること受け、ある提案をする。

 それは「ギャランより軽量コンパクトな1991年10月発売の4代目ランサー1.8GSRをベースに、ギャランVR-4のエンジンと5速MT、フルタイム4WDを移植したモデルの開発」というものだった。これが市販車開発チームに受け入れられ、誕生したのが、グループAホモロゲーション取得に必要な2500台限定発売の初代「ランサーエボリューション」だ。

 エンジンはギャランVR-4の4G63型2.0L直列4気筒DOHCターボをさらにチューニング。ピストンやコンロッド、ピストンリングなどを変更してフリクションを低減したうえ、圧縮比を従来の7.8:1から8.5:1へとアップして低中速トルクを増強しつつ、最高出力を従来より10ps高い250ps/6000rpm、最大トルクも同0.5kgm高い31.5kgmへと高めている。

 このエンジン性能アップに合わせ、インタークーラーの大容量化や空冷式エンジンオイルクーラー追加のほか、フロントバンパーの開口部拡大やアルミ製ボンネット上への大型エアアウトレット&インレット追加によって冷却性能を強化。大型リヤウイングを装着して空力性能の向上も図っている。また、スポット溶接の打点増加や補強パーツの追加フロントブレーキの容量アップも実施した。

 グレードはレカロ製シートやMOMO製本革ステアリング&シフトノブを採用し快適装備も充実させた「GSR」と、国内モータースポーツ参戦用に装備を簡略して車重をGSRより70kg軽い1170kgへと軽量化した「RS」の2種類を設定。

 限定台数の2500台はわずか3日で完売し、追加生産された2500台も完売するほどの人気を得たこのモデルは、1993年シーズンのWRCに参戦し、RACラリーで総合2位に入賞している。

【ランサー・エボリューション2】CE9A/1993年12月発表

 三菱は1993年シーズンのWRC実戦経験を通じて見えてきた弱点をいち早く解消するべく、わずか1年3ヵ月という短期間でランサーエボリューションをさらに“進化”させた「ランサーエボリューション2」を開発・発売する。

 改良点はほぼ全域にわたるが、その中でも特に重要項目とされたのは旋回性能の向上だろう。タイヤサイズを195/55R15から205/60R15へと拡大しつつ、スタビライザーやロアアームの取付位置を変更し剛性もアップ。ホイールベースを10mm長い2510mm、トレッドをフロントが15mm広い1465mm、リヤが10mm広い1470mmへと拡大した。これに伴い、サスペンションのチューニングはジオメトリーから見直されている。

 さらにステアリングギヤ比のクイック化、パワーステアリングポンプの改良、フロントエアダムエクステンションおよびリヤウイッカーの追加による揚力低減、リヤLSDの変更(ビスカス式から機械式)、ブレーキパッドの変更など、“曲がる4WD”への改善策が数多く盛り込まれた。

 エンジンも、バルブリフト量のアップ、ターボ過給圧のアップ、マフラー背圧の低減などにより、最高出力を10ps高い260ps/6000rpmに向上。5速MTは1速および2速のギヤ比を下げ、3速と4速にダブルコーンシンクロを採用したほか、クラッチディスクの材質を変更して操作性・耐久性を高めている。

 また「GSR」に装着されるレカロ製シートがセミバケットタイプに変更され、ホールド性が大幅に高められたのも、トピックのひとつに挙げられる。

 このランエボ2は競技用の「RS」を含めて5000台限定で販売され、WRCには1994年シーズンの第5戦アクロポリスより投入。翌95年シーズンの第2戦スウェディッシュで初の1-2フィニッシュを遂げた。

【ランサー・エボリューション3】CE9A/1995年1月発表

 今度はわずか13ヵ月での進化版投入となった「ランサーエボリューション3」だが、ここではフロントバンパー、フロントエアダム、サイドエアダム、リヤサイドエアダム、リヤスポイラー&リヤウィッカーなどのエアロパーツを一新。

 揚力低減やブレーキ冷却効率の改善に伴い、外観の迫力が劇的に増したことで、市販車としての魅力も大幅にアップしている。

 またエンジンもさらなる出力向上が図られ、ピストン変更による圧縮比のアップ(8.5:1→9.0:1)、ターボチャージャーの変更、マフラー排圧低減などにより、最高出力はランエボ2より10ps高い270ps/6250rpmとなった。

 このランエボ3は競技用の「RS」を含めて5000台限定で販売され、WRCには1995年シーズンのアクロポリスラリーより投入。翌96年シーズンでトミ・マキネンがドライバーズタイトルを獲得した。

 後継モデルの「ランエボ4」は1996年7月に発表されるのだが、これ以降のモデルについてはまた改めて紹介させてもらおう。

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