旧車と最新のクルマではエンジンの命に関わる数値の見方も違っている
チューニングカーに必須なアイテムと言えば追加メーター。運転席まわりにいくつものメーターが並ぶ姿はチューニングカーらしさ満点で、とくに夜のドライブでは追加メーターの照明がより雰囲気を高めてくれるのだ。
けれども追加メーターはイルミネーション系のパーツではなくて、エンジンの状態をチェックするために装着するもの。なのでメーターが示す数値の意味を知っておきたいものだ。そこで今回は装着されることの多い代表的な追加メーターを選び、そこに表示される数値の意味や基準値などを取り上げてみたい。
吸気圧計(インマニ圧計&ブースト計)
まずは吸気圧計。これにはNAエンジン用の「インマニ圧計」とターボエンジン用の「ブースト計」の2タイプがある。
使用される単位は「kPa」で、以前は正圧側を「kg/cm2」、負圧側を「mmHg」と表記していたので、チューニング界ではまだこちらの単位のほうがメジャーでもある。また、チューニングカー用の追加メーターは瞬時に数値を読み取れることも大事な性能なので、最新メーターでも100kPaを「1.0」、-500kPaを「0.5」など見え方をシンプルにしている(kg/cm2の時代にあわせているともいう)。
吸気圧計が測っているのはインマニ内の圧力で「0」が大気圧。NAエンジンは一般的にこの数値が最大値で、ラムエア効果のあるエアクリーナーボックスなどを付けた際には、0.1~0.2kPaほど正圧以上の圧が掛かることもある。そのためNA用のインマニ圧計にも正圧以上の目盛りがあったりするのだ。
対してターボやスーパーチャージャーではコンプレッサーからの圧縮空気が送り込まれるので、過給が始まるとインマニ内の圧力は大気圧以上になる。これがブースト1.5kPaなど言われるもので、内訳は大気圧1kPaに0.5kPaの圧力が余計に掛かっているということだが、細かいことを言うと排気の抜けのよさもインマニ圧に関わることがあるので、1.5kPaでも単純に0.5kPa足されているわけでないこともあるのだ。
メーターにピークホールド機能があるとブーストの最大値をメモリーできるが、ターボのセッティングとして一時的にブーストを高める「オーバーシュート」というものがあって、ピークホールド機能ではこれを記録してしまう。でも、確認したいのは通常のブーストだと思うので、その際はピークホールド機能に頼らず、3速以上のギヤでトルクバンドに入れつつアクセルを踏み込んだ状態のブーストを目視でチェックか車載ビデオで録画するようにしたい。
さて、これら吸気圧計だが、正圧域の数値に比べて負圧域は話題に登らない傾向でもある。だけど負圧とはピストンの下降によってエンジンが自分の力で空気を吸い込む力なので、ここの数値はエンジンの健康状態を表すものでもある。
だからもし、負圧が少ない状態だとするとピストンクリアランスが広がっていたり、バルブの密閉性が落ちているなどエンジンの異常が起きていることも予想できる。それだけに中古のターボ車を購入するときなど、ブースト計の負圧領域は状態を見極めるひとつのポイントにもなるのだ。
ちなみにNAもターボもアイドリング時の負圧はだいたい0.6kPa~くらいで安定するのが正常の状態。もし、ここから離れた数値のときは整備工場やチューニングショップで圧縮圧力テストなど、負圧が出ない原因を探る点検を行うといいだろう。
ただ、最近出てきたバルブトロニック機構を持つエンジンは、機構的に負圧が発生しないので、吸気圧計を付けた場合アイドリング時に指針は0あたりを指すがこれは正常だ。こうした負圧が出ないエンジンはブレーキのマスターバックとインマニがホースで繋がっていないことや、マスターバック用の負圧ポンプを持っているのでそこで見分けることができる。
水温計
水温計もポピュラーな追加メーターのひとつ。
水温計のセンサーはラジエターのアッパーホースをカットして間にアタッチメントを介して取り付けするが、ここでのポイントはセンサー部分が常時、冷却水に浸かっているような向きで取り付けること。
と言うのもアタッチメントよってはホースに付けた際、センサー部がアタッチメントよりもホース側に突き出ないなどセンサー部分が水面から離れてしまうこともある。すると水流の状態によっては水温を正確に測れないことがあるのだ。
そんなことから水温計のセンサーを付けるときは、センサーの長さに合うアタッチメントを使うか、ホースに対して横向きや下側から刺さるようにするといい。
また、アッパーホースにはある程度の長さがあるが、センサーを付ける場合はできる範囲で「エンジン側に寄せた位置」にするのがベターだ。理由は簡単、ECUに情報を送る純正水温センサーがエンジンヘッド部に付いているので、そこに近い温度が見たいからである。
水温は何度が適正か?という話だけど、その前に知っておいて欲しいのが冷却水はエンジンを「ただ冷やす」のでなくて、エンジン温度(燃焼室まわりの温度)を燃焼効率のいい状態に保つという役割のものだということ。つまり「保温」をするものなのだ。そのためエンジンごとに適正な水温があって、とくに最近の輸入車では希薄燃焼を行うため、水路内の圧力を高めることで高水温をキープするような作りにしているものもある。
エンジンごとに適正水温が違うので何度が危ないとか適正かとひと言では言いにくいが、ここでポイントになるのがサーモスタットの設定温度だ。サーモスタットが開く水温の温度域がおそらくエンジンを設計するときに想定した水温とも読める。
そしてその水温は導風板やエアロの取り付け、ラジエター交換など行って効果を見るときの基準値となるので、サーモスタットの動作温度を知ることは大いに意味があることである。
とはいえカタログ等にそんな情報は載っていないので、販売店のサービス部門や自動車メーカーの相談窓口で調べてもらうようになる。ただし、1980年~2000年代のチューニングカーは「ローテンプサーモ」が流行った時代でもあるので外してみないと何が付いているかわからないものでもある。また、今どきのクルマでもサーキットを走っていたクルマはローテンプサーモがは行っていることもあるからメンテナンスを兼ねてサーモスタットの種類を確認するのもいいだろう。
ちなみに86&BRZのFA20は90度くらいが純正サーモスタットの開弁温度。そこにチューニング版の1.3kPaラジエターキャップを付けていたとすると、キャップで加圧しているぶん沸点が上がるため、水温約120度くらいが沸点になる。そういうことだとすると水温計では90度から110度の範囲に収まっているかをチェックすることになる。ただ、過給器を付けていたりECUチューンしている場合は、エンジンの効率も変わっているので適正水温もノーマル状態とは違うこともあるのでそういうクルマはショップにアドバイスをもらおう。
油圧計
油圧計はエンジンに組み込まれているオイルポンプによってオイル通路に押し出されるオイルの圧力を見るもの。センサーはオイルブロックに装着するのが一般的だ。
オイルポンプはクランクシャフトの回転を利用して圧を作るのでアイドリング時は1~2kPaだが、エンジン回転に応じて高まり、水温や油温が適正の状態での高回転時で4~6kPaあたりまで上がるのが正常。
ただし、0Wなど粘度が低いオイルを使っていると粘度が低いぶん圧送しやすいので油圧は低くなる傾向だがこれは異常ではない。また、エンジンの組み付け状態によっても油圧は変わるものでもあるが、とにかく油圧が高ければカムシャフトのオイル供給パイプなど、ポンプが遠いところにもキチンとオイルが送れるので、フリクションロスを考えずエンジン保護の観点から言うと油圧の数字は高いほうがいい。
油圧は同じ程度の粘度指数であってもオイルによって変わるものなのがちょっとややこしいところで、例えば値段の高いAオイルでは5kPa掛かったのに、安価なBオイルに換えたら4kPaしか上がらないと言うこともある。でも、粘度指数がほぼ同じでであればそんな差が出るとは想像しにくいから、ドライバーは気にせず走るだろう。そのときたまたまエンジンの負荷が高くなったり、コーナーの横Gによってオイルの片寄りなどが起きてしまったら、油圧が上がらないオイルではエンジンにダメージを受けることもあるだろう。
では、どうしてこんなことなるのかというと、これはオイルの性能差。エンジンオイルはベースオイルの質、入っている添加剤の種類や量によって性能が違ってくるが、一般的に高性能オイルと呼ばれるオイルは高油温時でも油圧が保持できるように作られている傾向。
それに対して低価格オイルは常用の温度域で使うのが前提なので、油温が高めになると油圧がタレてくるものもあるのだ。そんなことからスポーツ走行をするときは油温が上がっても油圧がタレない高性能オイルを使うのが正解であり、エンジンを壊さないようにするためにも油圧の状況をチェックできる油圧計は付けておきたいところだ。