トヨタを代表するミドルセダンのスポーツグレード
昨年(2019年12月)に惜しまれつつも消滅してしまったトヨタ・マークX。その前身にはマークII、チェイサー、クレスタという3兄弟のモデルがあり、1980年代から1990年代まではトヨタを代表するミドルクラスのセダンとして多くのユーザーに支持されてきた。
1992年発売のJZX90系以降のモデルには、スポーツグレードの「ツアラー」シリーズを設定。なかでも2.5Lの直列6気筒ターボエンジンを搭載するツアラーVは、「パワーのあるターボエンジン」「マニュアルミッションでFR」「クセのないセダンフォルム」などの素性が当時からドリフトユーザーに重宝され、中古車市場では今なお高値を維持している。そんなツアラーVの系譜について、初の「ツアラーV」設定モデルとなったJZX90型から「マークII」を名乗る最終モデルのJZX110型までを見ていこう。
【JZX90系ツアラーV】1992年10月〜1996年9月
バブルの足音とともにハイソカー人気が高まり、5代目のGX70系が「白のマークII」と呼ばれ爆発的な人気を集めた。豪華な内装やソファーのようなシートを採用するなど高級感を前面に押し出し、ゆったりと走る高級車というイメージだったが、そんな中にもグランドツアラー的なグレードが存在した。1985年10月誕生、ツインカムの1G-Gに2基のターボを組み合わせた「2.0GTツインターボ」だ。
その後継のJZX81型では280psを発揮する2.5Lツインターボを搭載し、スポーツセダンとして走りに振ったグレードを強調する。
この流れを汲んで、1992年に登場した90系に新たに設定されたグレードが「ツアラー」シリーズだ。なかでもツアラーVは280psのツインターボ仕様で、ターボ専用のシリンダーヘッドを持つ1JZ-GTEを引き続き搭載。足まわりも強化されたスポーツグレードだった。
5MTにはトルセンLSDを標準装着するなど、トップパフォーマンスを誇るモデルで、BMW M5をライバルとして掲げていたという。80系まではエンブレム以外は差異のない外観だったが、ツアラー系ではブラックメッキのグリルやリアスポイラー、専用デザインの16インチアルミホイールと前後異サイズのタイヤを装着し、外観も走りに特化したモデルだと判るように明確に差別化されていた。
【JZX100系ツアラーV】1996年9月〜2001年6月
高評価だった90系ツアラーVの走りに磨きをかけて、さらに進化したのが1996年9月に発売された100系だ。
ラグジュアリーなグランデ系、スポーツセダンのツアラー系と性格分けが進み、ツアラーVは低速トルクに振ったシングルターボと全域可変バルブタイミング機構VVT-iを組み合わせ、最大トルクをJZX90の37.0kgm/4800rpmから38.5kgm/2400rpmと、低回転域での太いトルク特性とターボラグの少ないリニアなセッティングで扱いやすくなった。
また、メインスロットルと別にアクチュエータ式のサブスロットルをもつ2弁式の電子制御スロットルを採用することで、運転状況に応じたきめ細かい制御を可能にした。専用スポーツサスペンションはもちろん、5MTのトルセンLSD採用と、走りへのこだわりは歴代でもっとも高く、現在でも人気のモデルとなっている。
とくにチェイサーは外装もスポーティに振られ、丸目4灯の精悍なフロントマスクが存在感をアピール。90系ではマークIIに人気が集まったが、100系ではチェイサーとマークIIが二分することとなった。