ランサー・エボリューション4〜6の第2世代を振り返る
1992年から2016年まで24年間販売され、三菱を代表をスポーツモデルであったランサーエボリューション、通称ランエボ。前回紹介した第1世代のCD9A/CE9A、初代から2、3に続いて、今回は第2世代のCN9A/CP9A型、4から5、6、6トミー・マキネンエディションまで、各モデルについて振り返ってみよう。
【ランサー・エボリューション4】CN9A/1996年7月発表
ベース車のランサーが1995年10月にフルモデルチェンジし6代目となったことで、ランエボもこの4から第2世代へ移行した。この世代のランサーからエボリューションの設定、ひいてはモータースポーツへの参戦を前提として開発されたことで、ベース車の時点でボディ・シャシー性能の底上げと、エンジン搭載方向の左右反転による整備性の向上が図られている。
そのうえで、エアロパーツはより大型化されつつ洗練されたデザインとなり、空気抵抗の抑制と揚力の低減、冷却効率の向上を高次元で両立。
継続採用された4G63型2.0L直4ターボエンジンはインタークーラーの大型化、吸排気系の圧損低減、ツインスクロールターボチャージャーの採用、高速カムの採用などによって、最高出力は自主規制枠いっぱいの280ps/6500rpm、最大トルクは36.0kgm/3000rpmを達成した。また、競技ベース車の「RS」には「スーパークロスレシオトランスミッション」がオプション設定され、さらに最終減速比がハイとローの2種類から選べるようになっている。
そして最大のトピックは、後輪左右の駆動力配分を電子制御することで旋回性能を高める「AYC(アクティブヨーコントロールシステム)」が、このランエボ4で初めて採用されたことだろう。
このトルクベクタリング機構の先駆者といえる画期的なメカニズムが、直接のライバルであるスバル・インプレッサWRX STIが基本的にアナログな機構で自然な走り味を堅持するのに対し、ランエボは電子制御で曲げる機構を積極的に採用するという、両車の走りの性格の違いを、以後決定づけることになった。
このランエボ4がWRCに実戦投入されたのは1997年シーズンの初戦から。トミー・マキネンが前年に続きドライバーズタイトルを獲得している。
【ランサー・エボリューション5】CP9A/1998年1月発表
ランエボ5は1997年8月にベース車がフェイスリフトを受けたことに合わせ、より迫力あるフロントマスクを得ているが、それ以上に注目を集めたのはワイドフェンダーが装着され、全幅が75mm拡大し1770mmになったことだろう。
これに伴いフロントのストラット式サスペンションはロアアームが延長されたうえで倒立式に。リヤのマルチリンク式サスペンションも各アームの取付点が変更されたことで、トレッドがそれぞれ40mm、35mm拡大。タイヤも205/50R16から225/45R17へサイズアップされた。
当然、OZ製アルミホイールのサイズも拡大され、一般向けの「GSR」にはブレンボ製ブレーキが初採用。フロントに17インチローターと4ポットキャリパー、リヤに16インチローターと2ポットキャリパーが組み合わされた。
さらにフロントにヘリカル式LSDを搭載するとともに、AYCの制御を変更。リヤスポイラーは水平翼の角度を4段階から調整可能とすることで、旋回性能と安定性を大幅に高めている。
4G63型2.0L直4ターボエンジンはランエボ4の時点で280psに達したため、ここからは信頼性向上とトルクアップ、レスポンスの向上を主眼として改良されていくことになる。このランエボ5では、ツインスクロールターボチャージャのノズル面積拡大、ピストンをランエボ4の鍛造から鋳造に戻したうえでの軽量化、ラジエーターおよびオイルクーラーの大型化などにより、最大トルクが2.0kgm大きい38.0kgmとなった。
こうしてランエボ4に続き全面的にポテンシャルアップが図られたランエボ5は、1998年シーズンの第5戦カタルーニャよりWRCに投入。トミー・マキネンが三年連続でドライバーズタイトルを、そして三菱も初のマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。