「急な踏み換え」が問題なら 「ワンペダルで操作」すれば解決?
EVやHV、PHEVの普及により徐々に注目されつつある「ワンペダル」操作。アクセルワークで加/減速や停車をおこなうものだが、果たしてこのシステムは高齢者で最近目立つ「アクセルとブレーキの踏み間違い」問題の解決にはなるのか。その構造とアクセル(ブレーキ)ワークのやり方と合わせて紹介する。
「ワンペダル操作」の構造とは?
高齢者によるペダル踏み間違いや、踏み損ないなどによる交通事故が注目を集めている。ただ高齢であっても、通常であればそのような間違いはめったに起こさないのではないか。しかし、突発の事態で慌てると、高齢になればなるほど関節の動く範囲が制約を受けたり、筋力が衰えたりすることにより、頭で考えたとおりに手足が動かせていないことが起こりかねない。そこで、第一には正しい運転姿勢がとれているかが重要だ。
次に、クルマがそうした間違いを起こさないような機能を備えてくれると、より安心して運転できる。その一つが、ワンペダルによる加減速の操作だ。これはモーター駆動のクルマで実用化されており、電気自動車(EV)はもちろんのこと、ハイブリッド車(HV)でも日産自動車が採用するシリーズ式ハイブリッドシステムといって、エンジンは発電のためだけに使い、走行はモーターのみで行う場合に利用できる。
モーターは電気を流せば駆動力を出し、動力を与えれば発電機として機能する。一つの機構で、駆動と発電の両方をこなせるのがモーターの特徴だ。
これを利用したのがワンペダル操作である。アクセルペダルを踏みこめば発進・加速し、アクセルペダルを戻せば減速・停止できる。減速の様子は、たとえばエンジンブレーキのような感触だ。そしてアクセルペダルの戻し加減に応じて、減速の度合いが強まるように制御されている。
なぜ、モーターが発電機として働くときに減速力が働くのか。その仕組みは、発電の際に磁力の影響で抵抗が働く。要は、回りにくくなる。その抵抗が、クルマの速度を落とすことに役立つ。これを、回生(回生)という。
「減速方法」をマスターすればワンペダルだって苦にならない
発電した電気は、車載のリチウムイオンバッテリーに充電される。
エンジン車の運転に慣れた人は、アクセルペダルをパッと素早く戻してしまいがち。それだと、回生が強く効きすぎて減速が強まってしまう。そこで、止まりたいところへ向かいながら距離を目測し、ゆっくりアクセルペダルを戻す練習をする必要がある。しかしこれも、意識しながら5~10分も運転すれば身に着く。左足ブレーキの記事で、高齢になったら新しい操作をするより慣れた捜査をしたほうがいいと述べたが、左右の足の使い方を変えるのではなく、右足のアクセル操作の戻し方だけを習得する話なので、それほど難しくはない。
こうして、アクセルペダルの操作だけで発進・加速から一定速度で走ったあと、減速・停止するまで、アクセルペダルだけでクルマを走らせられるようになる。日産によれば、この操作を身に着けることでアクセルとブレーキのペダル踏み替えを7割ほど減らすことができるという。慣れた人なら、9割まで減らせられるとの声もある。
もし、急減速が必要な緊急時は、アクセルペダルをパッと素早く戻すだけで(アクセルペダルから右足を離すだけで)強い回生により急減速できる。そこからブレーキペダルへ踏み替えるまでの1秒前後の時間に速度をわずかだが落とすことができる。ここで、少し気持ちも落ち着けるのではないか。
一般的にペダル踏み替えの時間は、0.7~1秒といわれている。たとえ1秒かかったとして、時速30kmで走っているときには8.4m近く先へ進んでしまう。ここで、回生により多少なりでも減速できれば、衝突を回避できるかもしれない。
ペダル踏み替えの機会を減らすことは、踏み間違いの可能性を減らせられるし、モーター駆動により回生を活かせれば、衝突の危険も減らせられるかもしれない。高齢者になるほど、ワンペダル操作のできる電動車を運転することが、安全につながるといえる。そのためにも、ワンペダル操作のできる安価な電動車、たとえば軽自動車のEVが早く売り出されることが重要だ。なおかつEVなら、燃料代(電気代)はガソリンより安上がりでもある。