【ランサー・エボリューション8】CT9A | 2003年1月発表
2000年に発覚したリコール隠しに端を発し、ダイムラークライスラー傘下となった三菱は、その再建策の一環として、デザインアイデンティティの統一によるブランドイメージ向上を図っていた。その戦略を主導していたのは、2001年にダイムラークライスラーよりデザイン部門のトップとして招聘されたフランス人デザイナー、オリビエ・ブーレイ氏だ。
かつてスバル・レガシィ(2代目)やマイバッハのデザインも手掛けた彼が提唱したのは、アッパーグリルの中央を富士山型とするフロントマスクだが、これがベース車のランサー・セディアと同様、ランエボ8にも採用されることとなった。
これによる空力および冷却面での不利を補うべく、フロントバンパー中央部の開口部面積を10%拡大したほか、左右下部の開口部をダクト形状に変更。アンダーカバーもダウンフォースを増大させつつトランスミッションとトランスファー、ブレーキに冷却風を導く形状に改めている。さらにリヤスポイラーの水平翼と垂直翼をCFRP(炭素繊維強化樹脂)製とした。
メカニズム面では、GSRとRSの17インチタイヤ仕様に標準装備された6速MTが大きなトピック。4G63型エンジンは過給圧のアップにより最大トルクが40.0kgm/3500rpmの大台に乗った。また、デファレンシャル機構をベベルギヤ式から遊星ギヤ式に変更された「スーパーAYC」が新たに採用され、後輪左右のトルク移動量が従来の約2倍にアップしている。
この世代より北米にも輸出されることになったため、メーターパネルが270km/hスケールに共通化。燃料タンクがGSRで7L大きい55L、RSで2L大きい50Lに拡大された。
【ランサー・エボリューション8 MR】CT9A | 2004年2月発表
ランエボ8の一部改良版と言うべきこのMRだが、その変更点は少なくない。
外装ではアルミ製ルーフパネルを採用したほか、ルーフ後端に縦渦を発生させ空気抵抗を低減しつつリヤウィングのダウンフォースを増大させる「ボルテックスジェネレーター」をディーラーオプション設定した。
メカニズム面では、ターボチャージャーのタービンノズル径を拡大し、カムシャフトのプロファイルを変更するなど、4G63型エンジンを細部にわたり改良することで、最大トルクを0.8kgmアップ(→40.8kgm/3500rpm)。
スーパーAYCのクラッチケースをスチール製からアルミ製に変更するとともにクラッチディスクの肉厚を見直すことで約0.8kg軽量化したほか、デファレンシャルのハイポイドギアを高強度鋼に変更して、疲労強度を約1.2倍に高めている。
同時にACD+AYC+スポーツABSの制御を改め、高ミュー路でスポーツABS作動時にもACD+スーパーAYCの制御を通常通り持続させることで、ターンイン時の回頭性とトレース性を向上させた。ビルシュタイン製単筒式ダンパーの採用も、このモデルからとなる。