トヨタとともに成長した中嶋一貴が、18年にはトヨタとともに初優勝
関谷と荒の2人に続いて、日本人ドライバーとして3番目にル・マンを制したのが中嶋一貴だ。
レースデビューして以来、トヨタ系ドライバーとして戦い続け、全日本F3からユーロF3、GP2を経てF1GPまで上り詰めた後、日本に戻ってFN/SFやSUPER GTを戦う傍ら、2012年からトヨタのワークスドライバーとしてル・マンに参戦。参戦7年目の2018年に見事総合優勝を飾っているが、これはチームのTGRにとってはもちろん、マニュファクチャラーのトヨタにとっても悲願の初優勝。
翌19年には2連覇を果たし順風満帆のようにも映るが、実は優勝を果たす2年前、悪夢のような出来事があった。この年デビューしたトヨタTS050 Hybridは快調に周回を重ね、ポルシェと激しいトップ争いを繰り返す展開となった。そしてレース終盤にトップに立った5号車では、最後のスティントを中嶋が担当した。そして残り3分、2番手のポルシェに1分半もの大差をつけ、トヨタにとって悲願だったル・マン制覇もこれで達成が確定したかに思われたタイミングで、中嶋から悲痛な知らせが届く。
「I have No Power! NO POWER!!」。ターボ関係のトラブルだったがコントロールラインを横切ったところでストップした中嶋の5号車の脇を、2番手につけていたポルシェが通過していく。そして何とか再スタートを切った5号車だったが全くスピードが乗らず、ファイナルラップを規定タイム以内に回り終えることができずに非完走の扱いとなり、順位もつかず選手権ポイントも与えられなかったのだ。
そんな経緯があったからこそ、18年の優勝はトヨタだけでなく中嶋にとっても感慨ひとしおだったに違いない。そんな中嶋とTGR、そしてトヨタTS050 Hybridは今週末、ル・マン24時間の3連覇に向けスタートを切ることになっている。